モノロフォサウルス

モノロフォサウルスMonolophosaurus, 1つの隆起を持つ蜥蜴の意)は、現在の中華人民共和国新疆ウイグル自治区に分布した中部ジュラ系の石樹溝累層英語版で産出した、テタヌラ類に属する獣脚類恐竜の属。属名は頭骨の最上部に位置する1つの鶏冠にちなむ。全長5メートル程度の中型の獣脚類であった。

発見と命名

M. jiangi のホロタイプ標本。中国古動物館にて。

石油産業のための層序学踏査の最中、ほぼ完全な骨格が1981年に董枝明により発見された。化石は1984年まで発掘が続けられ、論文記載前の1987年にはジアンジュンミャオサウルス (Jiangjunmiaosaurus) として報道された。この属名は現在では有効ではない疑問名として扱われている。1992年に董枝明はこの化石を Monolophosaurus jiangjunmiaoi と呼称し、1993年にはウェイン・グレイ英語版Monolophosaurus dongi と呼称した。これらは学術的な記載がなかったため裸名として扱われている。

1993年から1994年には、赵喜进英語版フィリップ・J・カリー英語版がタイプ種 Monolophosaurus jiangi を記載・命名した。属名はギリシャ語の μόνος, monos(「単一の」)、λόφος あるいは λόφη, lophos/lophè(「鶏冠」)から派生したもので、鼻先に一つの鶏冠があることを指す。種小名は化石が発見された場所の付近に位置する放棄された砂漠の旅館である将军庙にちなむ。

ホロタイプ標本 IVPP 84019ジュンガル盆地の中部ジュラ系バトニアン - カロビアンにあたるWucaiwan 累層で発見された。この骨格は頭骨下顎椎骨骨盤を含み、尾の後方・肩帯・四肢は失われている。成体ないし亜成体個体のものである。タイプ標本は複数の会場で展示するために石膏で保存され、石膏に覆われた左側は泡が付着して後の研究を妨げることとなった。完全な骨格マウントのキャスト(雄型)を製作するために失われた骨要素も復元された。2010年にはスティーヴン・ブルサッテ英語版らによる2つの研究でホロタイプ標本が詳細に再記載された。

2006年にトーマス・カール英語版は、同じ層から産出した大型で薄く孔のある正中線上の鶏冠を持つ別の恐竜グアンロンが実際にはモノロフォサウルスの亜成体個体であると提唱した。一般にグアンロンはティラノサウルス上科プロケラトサウルス科の恐竜と考えられているが、カールは両標本をアロサウルス上科英語版に纏める系統解析を発表した。より保守的に、2010年にグレゴリー・ポールはグアンロンをモノロフォサウルスの種とみなして Monolophosaurus wucaii に改名し、両分類群が姉妹種である可能性もあるとした。2010年にブルサッテらはこの同定を否定し、グ���ンロンのホロタイプ標本が実際には完全に成長した成体であることを指摘した。

記載

復元図

ホロタイプ標本かつ唯一知られている個体は全長5メートルと推定されている。2010年にポールは全長5.5メートル、体重475キログラムと推定した。2016年に Molina-Pérez とララメンディは全長7.5メートル、体重710キログラムと推定した。

モノロフォサウルスは次に述べるような複数の表徴形質が確立されている。鼻先には正中線上に大型の鶏冠があり、その前方は前上顎骨で形成される。鶏冠は鼻骨涙骨の後方へ続き、前頭骨に触れる。鶏冠の最上部は上顎の縁に平行である。前上顎骨の上へ上がる枝(鶏冠をなす)は後方へ湾曲する。前上顎骨の側面に深い溝が走り、枝の始点から鼻孔の下まで続く。鼻孔の上側後方の窪みに大きさの異なる2つの含気性の開口部が存在する。眼窩の上に位置する、涙骨の後方の枝に、上向きの鋭い手斧型の突起がある。前頭骨は長方形で細長く、長さの幅の比は1.67である。

組み立てられた骨格。臀部関節の上にフード型の antitrochanter が見られる。

ホロタイプ標本の頭骨は長さ80センチメートルである。頭骨はかなり平坦であるが、頭蓋骨の長さの約4分の3を占める大きな鼻先の鶏冠が眼窩まで届いており、曖昧になっている。鼻先の前上顎骨に端を発する鶏冠は主に鼻骨で形成される。鶏冠の断面は三角形で、吻部先端に向かうほど細くなる。鶏冠の上面は尖っておらず、むしろ表面は平坦になっている。鶏冠の側面は非常に粗く、隆起した箇所が連続して存在する。鼻骨は前眼窩窓周りの窪みの上側後方の部分を形成する。この領域には含気性開口部あるいは pneumatopores が数多くあり、気嚢の憩室が骨に入っている。前部には2つの小さな孔があり、後部には2つの大きな水平楕円形の開口部がある。CTスキャンにより鼻骨の内側は含気性が高く、大きな気室が存在する。また、頬骨も含気性である。涙骨はI字型をなし、涙骨には鶏冠の垂直な後方縁を形成する上向きの枝が存在する。断面が三角形であるため、この枝は頭骨の正中線に向かって傾斜する。枝の上外側は長方形の意気上がりを形成する。眼窩の後方(後眼窩骨)には小さな角状構造が存在する。前頭骨は鶏冠の形成に寄与しない。鶏冠が後方にも及んでいて三角形と四角形を組み合わせた構造をしているという点で、モノロフォサウルスは獣脚類の中でも珍しい部類である。

頭骨のキャストを横からみた写真

前上顎骨は鶏冠の前部を形成する上向きの狭い枝を持つ。枝の後方は湾曲して鼻骨の外側の突出部を囲んでおり、この特徴は1994年のオリジナルの記載では確認されていなかった。枝の根元には小さな開口部が、より大型の開口部は鼻孔の直下に位置し、いずれも鼻孔の下側周りでカーブを描く明瞭な溝で繋がっている。前上顎骨歯は4本で、上顎骨歯は13本である。前眼窩窓の下側前方周りには上顎骨上に短い窪みが存在する。この領域内にさらに小さな窪みが位置し、内側で閉じ、位置からして fenestra promaxillaris あるいは単一の窪みであることから fenestra maxillaris の可能性があるとされる。

頭蓋内腔では、第V脳神経でもある三叉神経が分岐していない。口蓋骨は含気性で、 pneumatopore の存在が示されている。

下顎では、外側の下顎窓が基盤的テタヌラ類にしては遥かに小さい。ホロタイプ標本では右歯骨に18本、左歯骨に17本の歯が確認でき、このような非対称性は大型の獣脚類では珍しいことではない。孔の列が歯列の外側と下に存在し、これらは最初の4本の歯の下において相対的に大きい。後方に向かうにつれて孔は小さくなり、孔の列自体も下側へカーブする。第9歯から孔は溝に合流する。孔の第二列は下顎の縁に平行に走り、第13歯の位置で終端を迎える。歯骨の内側では第3歯の水準にあるメッケル溝英語版が2つの重なった狭いスリットに正面まで伸びる。下顎の後部は角骨と上角骨のねじれた縫合線の特徴的な結合を示し、上角骨の基底は顎の後部の縁まで届く。上角骨後方のさらに小さな穴は骨自体が厚いためオーバーハングしておらず、これは大型獣脚類には珍しい。

大きさ比較

椎骨は頸椎]9個・脊椎14個・仙椎5個からなり、尾椎の数は不明である。頸椎は含気性が高く、側面には側腔があり、内側は空洞化して大きな気室が存在する。頸椎の神経棘は側面から見ると細く、後方に向かうほど幅も細くなる。第8頸椎と第9頸椎の神経棘は杖状である。同様に、少なくとも第3脊椎までは側腔が存在する。脊椎は頑強なハイポスフェン-ハイパントラム関節英語版で繋がっている。第6脊椎以降、神経棘は急激に幅が広くなる。仙椎の神経棘は中枢神経上の骨板に癒合していない。尾の根元はわずかに下方へ向く。根元の尾椎もまたハイポスフェン-ハイパントラム関節が確認できる。

骨盤では腸骨の上部が僅かに凸状をなす。腸骨の前方の刃状構造にはフック上の突出部がある。前方刃状構造の根元の縁は溝が刻まれている。恥骨が附随する突起には2つの関節面があり、1つは下へ、もう1つは前方へ斜めに突出する。またその基底は股関節が反転子のフード型の延長部によって張り出しており、この延長部の前面はさらに下側と外側へ到達する。明確な brevis shelf(尾の筋肉の付着部となる腸骨上の骨)は存在しない。恥骨と坐骨は足のような構造を持つという点で互いに似ており、穴が開いた骨の枠を介して繋がっている。

分類

モノロフォサウルスは元々メガロサウルス類と呼ばれ、しばしばアロサウルス上科英語版であると提唱されてきた。Smith et alii (2007) でモノロフォサウルスは初めて非ネオテタヌラ型テタヌラ類とし���扱われ、これはアロサウルス上科に特有と考えられていた特徴がより広い範囲で見出されたことによる。また、Zhao et alii (2010) ではモノロフォサウルスが最も原始的なテタヌラ類の恐竜になりうることを示唆する数多くの原始的な特徴が記載された。Benson (2008, 2010) ではモノロフォサウルスはチュアンドンゴコエルルス英語版と共にメガロサウルス科スピノサウルス科よりも基盤的なメガロサウルス上科の分類群に置かれた。後に Benson et alii (2010) はチュアンドンゴコエルルスとモノロフォサウルスの分類群がメガロサウルス上科とネオテタヌラ類の外側に位置することを発見した。2012年の系統解析では、モノロフォサウルスとチュアンドンゴコエルルスは姉妹群ではないもののテタヌラ類の基盤でより派生的な外側の分類群をなすことが判明した。

デジタル復元
ワイオミング州恐竜センター英語版にて、ベルサウルスを襲うモノロフォサウルスの骨格。2属は同じ層から産出した。

以下のクラドグラムは Carrano による2012年の系統解析に基づき、モノロフォサウルスの系統関係を示す。

新獣脚類
コエロフィシス上科英語版

ディロフォサウルス

Coelophysis bauri

Coelophysis rhodesiensis

アヴェロストラ
ケラトサウルス類

エラフロサウルス

ケラトサウルス

マジュンガサウルス

マシアカサウルス

テタヌラ類

クリオロフォサウルス

シノサウルス英語版

チュアンドンゴコエルルス英語版

モノロフォサウルス

オリオニデス英語版

メガロサウルス上科英語版

アヴィテロポーダ英語版

古生態学

タイプ標本 IVPP 84019 は第10神経棘、そしておそらく第11神経棘も骨折し、互いに癒合している。標本の歯骨の1つにある一連の平行な隆起は、噛まれた痕である可能性がある。

時にはライバルに攻撃されたとはいえ、当時モノロフォサウルスは生態系の頂点の一角を占めていたとされている。主な獲物はベルサウルスのような初期の竜脚下目や、グアンロンリムサウルスのような自分よりも小型の獣脚類が挙げられる。 特にグアンロンのような小型の肉食性獣脚類にとって、自分よりも大きなモノロフォサウルスやシンラプトルは非常に手強いライバルだったと推察されている。

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