思想史

思想史(しそうし、: History of Ideas)は、思想歴史。多くの場合、思想家学者政治家民衆などが残した意見に関するテクストを扱う学問を指す。

概要

類義語として哲学史精神史インテレクチュアル・ヒストリーなどがある。また、ドイツ語圏で発展した概念史アメリカアーサー・O・ラヴジョイらが提唱した観念史などが挙げられる。

一般的に「思想史」と呼称する場合は、哲学者(哲学研究者なる呼称も見られる)が純粋な哲学に近い思想を扱う例か、歴史学者が文化史研究の一環として扱う例か、例えば政治学者が政治思想史を研究するように当該分野の研究者が扱う例が多い。あらゆる学問には、その歴史として「○○学史」があるが、その場合は「近代以降に成立した科学としての○○学の歴史」を扱うことがほとんどである。そのため、前近代の学問や科学的方法から逸脱してしまうような思想を扱う場合は、政治思想史、経済思想史、社会思想史、法思想史、教育思想史、科学思想史など、「○○思想史」と呼ぶことがある。

個別分野

分野別

地域別

日本の思想史学では、歴史学と同様に日本、東洋、西洋の三分法が一般的である。ただし、一般の用法として「東洋思想」と言えば、中国思想のみを指す場合、日本思想を含める場合、その他に陰謀論疑似科学新興宗教思想を指す場合がある。

  • 日本思想史日本思想
  • 西欧思想史西洋哲学) - 古代ではギリシアとローマ、中世ではキリスト教思想(単に「中世思想」と言った場合、多くは西洋史上の中世を指す)、近現代では英米独仏伊など各国別の研究が主として行われる。特に近代以降の哲学や法学では大陸系大陸法大陸哲学)と英米系英米法慣習法、英米哲学、分析哲学)の区分も重要である。
  • 東洋思想史東洋哲学) - 東洋では、中国とインドが重要地域とされる。
    • 中国思想史中国哲学) - 漢学の伝統を引き継ぎ、日本では極めて層の厚い分野である。
    • インド思想史インド哲学) - 主に仏教を中心として、中国思想と同様に日本では極めて層の厚い分野である。

思想史家

思想史家は、哲学史家歴史家と違いそのアプローチに特徴があり、必ずしもアカデミズムの枠に留まらない。またイギリスのレズリー・スティーヴンのような文学思想史家、アメリカのG・H・ミードのような社会思想史家も存在する。ほかに日本思想史家、政治思想史家、経済思想史家、宗教思想史家、言語思想史家などに分類され得る。法思想史のように法哲学との境界線が定めにくい分野もある。極めて方法論に自覚的な人々だと言えるのが特徴である。なお日本思想史を専攻するものは、日本思想史家と呼ぶことが多い。

思想史家一覧

脚注

注釈

出典

関連項目

参考文献

  • 子安宣邦ほか『日本思想史読本』東洋経済新報社、1979年
  • 矢崎光圀『法思想史』日本評論社、1981年

関連文献

  • 新明正道ほか編『社會思想史辭典』創元社、1950年(新版、1961年)
  • 堀經夫編『經濟思想史辭典』創元社、1951年(再版、1952年/増訂新版、1959年)
  • 廣松渉ほか編『岩波哲学・思想事典』岩波書店、1998年。ISBN 9784000800891
  • 経済学史学会編『経済思想史辞典』丸善、2000年。ISBN 4621047663
  • 桂島宣弘ほか編『日本思想史辞典』ぺりかん社、2001年。ISBN 4831509515
  • 今村仁司ほか編『岩波社会思想事典』岩波書店、2008年。ISBN 9784000803120
  • 石毛忠ほか編『日本思想史辞典』山川出版社、2009年。ISBN 9784634622104
  • 石田一良ほか編『日本思想史事典』東京堂出版、2013 年。ISBN 9784490107968
  • 社会思想史学会編『社会思想史事典』丸善出版、2019年。ISBN 9784621303412
  • 日本思想史事典編集委員会編『日本思想史事典』丸善出版、2020年。ISBN 9784621304587

外部リンク

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