- 1T1C型及び1T型(最も基本的な構成)
- 2T2C型
- 2T2C型のタイミングチャート
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(きょうゆうでんたいめもり、英: ferroelectric random-access memory)とは、FeRAMとも呼ばれる、強誘電体のヒステリシス(履歴効果)に因る正負の残留分極(自発分極)をデジタルデータの1と0に対応させた不揮発性メモリのことである。なお、FRAMは同種のRAMのラムトロン・インターナショナル(現・サイプレス・セミコンダクター)による商標で、日本では富士通が同社とのライセンスによりFRAMの名称を使用していた。富士通の不揮発性メモリ事業は後に富士通セミコンダクターメモリソリューションへ移管され、2025年1月にはRAMXEED株式会社へ社名変更されている。2025年6月には同社も製品呼称を「FRAM」から一般的な「FeRAM」へと変更した。
強誘電体膜の分極反転時間は1ns以下と極めて短く、FeRAMはDRAM並みの高速動作が可能である。さらに、不揮発性メモリでありながらフラッシュメモリやEEPROMなどと比較して書き換え耐性が極めて高く(10^12〜10^14回以上)、データの書き込み(消去)時に昇圧などの高電圧を必要としないため、消費電力が非常に小さいという特長を持つ。このように、RAMの持つ「高速・高耐久」と、ROMの持つ「不揮発性」を兼ね備えた理想的なメモリとして位置づけられている。
FeRAMのセルにはキャパシターが用いられており、この意味においては、DRAMと基本的に類似したセルである。しかし、このキャパシターの極板間の材料には強誘電体が用いられているという点で、FeRAMはDRAMとは大きく異なる。
メモリセル構成としては、FeRAMには大きく分けて2種類が提案されている。具体的には、強誘電体キャパシター(C)とメモリセル選択用のMOSFET(T)を組み合わせる1T1C型(キャパシター型)と、これをベースにして2つのキャパシターを逆向きに分極させることでデータの信頼性を高めている2T2C型である。なお、1T1C型はDRAMと同じメモリセル構成でもある。
更に、この他に、ゲート絶縁膜が強誘電体から成るMFS-FET又はMFMIS-FETを用いる1T型(トランジスター型)が存在し、これは特にFFRAMと呼ばれて区別されている。
FeRAMでは、FETをオンさせただけではビット線にはデータは出力されない。何故ならば、セルであるキャパシターに電圧が印加されない状態では、セルに記憶されているデータが1であるか0であるかは強誘電体膜中に保存されているので、それを読み出すにはソースプレートを駆動してキャパシターに電圧を印加して強誘電体膜中の分極を外部に電荷量として読み出さなければならないからである(これは読み出しに静電容量が極めて大きいセルキャパシターを駆動する時間を必要とすることも意味する。)。従って、FeRAMにおいては、ワード線とビット線以外にも、ソースプレートの駆動線と特定のセルのそれを駆動するためのデコーダー回路が必要となる。
このためFeRAMでは、セルの微細化やアクセス速度の高速化は困難であった。これらの欠点を克服すべく、東芝がChainFeRAMと呼ばれる新しいメモリセル構造のFeRAMを2001年に発表している。
書き込み時にはワード線でセルである強誘電体キャパシターを選択し、ビット線とソースプレートの間に電圧を印加して強誘電体膜を分極させる。読み出し時にはパルス電圧を加えて分極反転による電流が流れたかどうかでセルに蓄えられたデータをセンスアンプで判定する。この時、分極は元の状態に依らずに電圧印加方向を向く(同方向ならば電流が流れず、反対方向ならば分極反転して電流が生じる。)ので、破壊読出しとなる。このため、読み出す時には必ず再書き込みを必要とするので、書き込み回数に読み出し回数も含まれる。
キャパシター膜が常誘電体でなく強誘電体であるので、FETにリーク電流が有ったり電源が遮断されてもキャパシターの電荷を失わない(データが消えない)。つまり、不揮発メモリであると同時にリフレッシュが不要であるため、消費電力が少ない。
1T1C型と同様にワード線に拠ってセルの強誘電体キャパシター1を選択する。書き込みは同様にソースプレートの昇圧によっが、この時に、対となっている強誘電体キャパシター2の電界効果トランジスタのビット線にも時間差を付けて昇圧する。このままではソースプレートを降圧した時点で対となっている側の強誘電体キャパシター2には負の電圧が印加されるため、書き込みを意図している強誘電体キャパシター1とは逆方向に残留分極が発生する。こうして互いに異なる向きの分極が形成されるため、「0・1」または「1・0」という組み合わせでデータを表す。
読み出し時も同様にワード線とソースプレートを昇圧して、ビット線のどちらの電圧の変化が大きいか(どちらに変位電流が流れるか)を測定することでデータを判定する。なお、この時に順方向の分極を持つ強誘電体キャパシター1でも電圧が変化するのは分極の微小変位によるものである。また、読み出し時に、強誘電体キャパシター2のワード線より先にソースプレートを降圧すると、負の電圧が印加されて再書き込みが行なわれ、読み出し時のデータ破壊を防げる。
FeRAMに用いられる強誘電体膜の材料には以下のような性質が要求される。
なお、インプリントや分極反転疲労及びリーク電流は強誘電体膜内部の結晶粒界や結晶欠陥に起因する。
上記の条件を満たす材料として、下記の様な、従来の半導体製造プロセスでは使用されていないセラミック材料が存在する。これらの多くの強誘電体材料では、分極が容易な軸の方向に沿った異なる2つの分極状態を利用してデータの書き込みや読み出しを行っている。言い換えれば、強誘電体結晶の多くは、結晶の対称性によってその分極状態の数は限られている。
(Pb,La)(Zr,Ti)O3
本材料系では、従前、分極ドメインのナノ構造化に拠って分極が容易な軸の方向が結晶の対称性に束縛されず極軸が自由に回転することが既に示されている。これは記録密度が従来に対して2桁増大するという可能性を示している。 そして、2014年に、その分極自由回転状態の書き込みと読み込みの実証が報告されている。
(Hf,Zr)O2(ハフニウム・ジルコニウム酸化物)などHfO2(酸化ハフニウム)系
世界で初めてFeRAMを実用化したのはレイコム・システムズ[要検証]である。それは256ビット品で非接触ICカードでの利用をターゲットとして開発された。
FeRAMは、従来広く用いられてきたEEPROMよりも、動作が高速で消費電力が低く、セルサイズも15F2と小さく、フォトマスクの追加が少なくて済むなど半導体製造プロセスとの相性も良い。このため、2006年に富士通のFRAMがソニーのFeliCaに採用されるなど、少なくとも日本においては、既に一般生活において身近に普及している。
その後、FeRAMの持つ「高速書き込み」と「高い書き換え耐性」が評価され、頻繁なデータロギングが求められるスマートメーターやFA産業機器への採用が拡大した。技術開発も進展しており、かつては1012回(1兆回)程度とされていた書き換え保証回数が1014回(100兆回)に達する製品も登場している。これにより、システム内でSRAMとバックアップ電池を組み合わせていた領域を、電池不要の単一FeRAMチップへ置き換える(バッテリーレス化)動きが進んでいる。
また、強誘電体材料の特性上、長らく微細化が難しく小容量(キロビット帯)に留まることが課題とされていたが、近年ではプロセス技術の向上により8Mビットクラスの量産化も実現している。さらにQuad SPIなどのシリアルインターフェースに対応することで54MB/秒といった高速データ転送も可能となり、大容量かつ高速なデータ処理が求められるエッジコンピューティングや高度な産業機器への適用基盤が整った。
また、長らく不揮発性メモリの課題であった高温環境下でのデータ保持(リテンション)特性も飛躍的に改善された。近年では、車載電子部品の信頼性規格「AEC-Q100」に準拠し、125℃の高温環境下において10年間のデータ保持を保証する高耐熱製品(例として、RAMXEED ULTIMATEなど)が量産されており、過酷な環境に晒される車載電装品(ADASやインフォテインメント機器など)への搭載が本格化している。
さらに、超低消費電力という特性をエナジーハーベスティング(環境発電)と組み合わせる技術も実用化されている。電池交換不要の無線センシングを実現する技術として、UHF帯RFIDの新国際規格である「ISO/IEC 18000-65」に承認・発行されたほか、スマートコンタクトレンズに代表される極小の医療・ウェアラブルデバイス向けASSPに採用されるなど、次世代のIoT・医療分野を支えるデバイスとしての応用も広がっている。
ただし、記憶容量あたりのコストや集積度の壁から、パーソナルコンピュータなどに搭載される大容量の主記憶装置(DRAMの完全な代替)としては未だに実用化の目途は立っていない。現在のところ、高速書き込み・高耐久・超低消費電力を活かした特定の産業・車載・IoT領域でのニッチトップ技術として市場を形成している。