スペクトラム (日本のバンド)
スペクトラム (SPECTRUM) は、日本 のフュージョン・ブラス・ロックバンド。
1979年 から1981年 まで活動した金管楽器 (ブラス)を主題とする日本のロックバンドである。
デビューから解散までアミューズ に所属していた。メンバーの一部は、のちにBLUFF に参加している。
来歴
伊丹幸雄 のバックバンド 「ロックンロールサーカス」、次にあいざき進也 のバックバンド「ビート・オブ・パワー」と経て、キャンディーズ のバックバンドとなった「MMP(ミュージック・メイツ・プレイヤーズ)」。そのMMPから独立してトランペット 奏者の新田一郎 、兼崎順一 とサックス 奏者の中村哲 が作ったユニット「ホーン・スペクトラム」(バンド名の由来)。1978年 4月4日に後楽園球場 で行われたキャンディーズ 「ファイナルカーニバル」 の後、中村が脱退することになった際に、自分たちも何かやりたいと考えた新田と兼崎が、MMPのベーシストだった渡辺直樹 と合流し、他のメンバーを勧誘して1979年 結成。1978年5月12日から6月8日にかけてアメリカ・ロサンゼルスでデビューアルバムのレコーディング。7月22日西武球場 で行われた'80S JAM OVER JAPANが初披露となり、ライブのオープニングを飾った。8月25日にデビューシングル「トマト・イッパツ」とアルバムSPECTRUM を発売。同時に『24時間テレビ 「愛は地球を救う」 』番組内のチャリティーコンサートに出演した。
トランペット奏者の新田一郎が中心になって結成されたバンドであり、ブラスの音が鳴り響くEW&F 風なサウンドと、新田のファルセット ボーカル 、ギタリスト西慎嗣のロック系ボーカル、ベーシスト渡辺直樹 のAOR 系ボーカルの3人のボーカルが大きな特徴である。
「IN THE SPACE」がEW&Fに似すぎていたため「EW&Fもどき」「アースのモノマネ」などという批判も起きたが、実際はシカゴ やブレッカー・ブラザーズ の影響の方が大きいとみられ、特にリーダーの新田は「シカゴの1stアルバム 1曲目である『イントロダクション』を聞いて人生が変わった」とラジオ番組で発言した
1stアルバム『SPECTRUM 』や2ndシングル 「IN THE SPACE」で、当初は吹奏楽に携わる若者や洋楽ファンを中心に、次第に存在が伝播した。コンスタントなライブ活動を続けながら、2ndアルバム『OPTICAL SUNRISE 』や3rdアルバム『TIME BREAK 』を制作した。
その一方で、古代ローマの戦士を思わせる甲冑や北欧のバイキングをイメージした被りもの付きの派手なコスチュームを着用し、ギター、ベース、トランペット X 2、トロンボーンの5人が最前列に一列に並び、演奏しながら振り付けを合わせて踊るパフォーマンス のインパクトが強く、またメンバーの冗談好きもあって「色物系バンド」と誤解されることもあった。
4thシングル「SUNRISE」は、プロレスラーのスタン・ハンセン の入場曲として知られる。
1981年 7月5日新宿厚生年金会館 のコンサート「SECOND NAVIGATION」で活動停止が発表され、9月22日の武道館 ライブ 「SPECTRUM FINAL CONCERT~世紀の哀しきブラスバンドクラブ」を最後に解散した。
解散後
新田はソロ活動(兼崎がサポート)と作家活動と「ホーン・スペクトラム」としてのスタジオワークス(後に芸能プロダクション経営)、渡辺・岡本はAB'S を結成(2003年 再結成)するなど、活動の場を広げた。吉田はJVCケンウッド・ビクターエンタテインメント 青山スタジオのレコーディング・エンジニア に転身した。奥は作・編曲家として、現在に至るまでアニメーション作品を始め、多数の楽曲を発表している。
1991年 にオリジナルアルバム全6タイトルがCD 化され、メンバーのうち特に吉田が作ったリミックス 盤も発売された。
過去何度か再結成の噂が流れたが、解散後全メンバーが揃って公の場に現れたことはない。ただし、メンバーの数人が公の場で揃って登場した場面は何度もある。リーダーの新田は、プレイヤーとしての活動を停止して芸能プロダクション の経営に専念したがプロダクションは2010年に消滅した。
トロンボーン奏者だった吉田は2006年頃からプレイヤーとしてのライブ活動を再開し、同年12月よりアマチュアミュージシャンを対象とした「"Brass Rock Spirits" Clinic for Rock & Funk Horns」という講習会を企画してスペクトラムの楽曲を実際に指導し、後進の育成にも乗り出している。さらに2007年より「Sax & Brass Magazine」にて連載も開始している。スペクトラムファンおよび元メンバーとの交流に最も熱心な存在となっている。
2006年9月22日、元メンバーの吉田、西、岡本、今野の4人がそのトリビュート・ライブにサプライズ・ゲストとして参加した(のちに元メンバーの吉田、岡本、今野が参加するブラス・ロックバンド「BLUFF 」の結成のきっかけになったとされている)。
2009年8月23日、ファンの有志が企画した「デビュー30周年記念祭」というイベントが実施された。
2010年5月9日、兼崎の還暦記念ライブが行われ、元メンバーの吉田、西、岡本、今野、渡辺が参加。スペクトラム時代のナンバーも披露した。
2013年5月28日発売の『サックス&ブラス・マガジン vol.27』(リットーミュージック )は、スペクトラム特集を組んだ。新田、兼崎、吉田の3人のインタビュー記事、使用楽器紹介、ディスコグラフィ、ホーン・アレンジ&奏法分析、セッション参加作品選などの紹介。「トマト・イッパツ」「モーション」「サンライズ」のホーン譜の解説を、スペクター3号・吉田と現在共にブラスロックバンド・“BLUFF”で活躍する松木隆裕が寄稿している。
2013年7月2日、タワーレコード 限定でオリジナルアルバム全6タイトルのリマスター盤を発売。初CD化を含むボーナストラックが新たに追加された。それに合わせて、毎年9月22日にはプロのミュージシャンによるトリビュート・ライブが都内で行われている。
2017年9月22日、元メンバーの吉田、岡本、今野が現在所属している“BLUFF”が『BLUFF plays SPECTRUM』と銘打ち、全編スペクトラムの楽曲で構成したライブを新宿BLAZEで行った。BLUFF発足時に参加していた今野多久郎も全曲参加(その後BLUFFに復帰)。また、スペシャルゲストに兼崎順一、西慎嗣を迎えて往年の楽曲の数々を演奏した。
2020年、タワーレコード限定でライブ盤を除くオリジナルアルバム全5タイトルのSACD/CDハイブリッド盤 を発売。株式会社ステレオサウンド の協力の元、オリジナルのレコーディング・エンジニアである高田英男をサウンド・スーパーバイザーに迎え、現存するオリジナル・アナログ・マスターテープから最新リマスタリング(DSDリマスタリング )がされている。
2024年、「F・L・Y」がゲームやアニメを紹介する動画のBGMに使われたことをきっかけに、アメリカをはじめ世界的に海外のサブスクやTikTok、Youtubeなどの再生回数が飛躍的に伸び、F・L・YはBillboard JAPAN“Japan Songs (US)”でトップ5にランクイン(4位)した。
2026年5月、宝塚歌劇団 宙組 公演『Diamond IMPULSE(ダイヤモンド インパルス)』の中詰で、「トマト・イッパツ」の“ワッチコン”コールとともに「MEMORY」、「SUNRISE」など数曲がメドレー形式で使用された。
2026年9月、木村拓哉 が出演するマンダム のメンズコスメブランド“GATSBY”ムービングラバーのCMに「トマト・イッパツ」が使用された。
エピソード
長らくファンの間では、4作目「SECOND NAVIGATION」についての制作会議が内容を巡って紛糾したことから解散が決まり、その方向性の違いがコンテンポラリーなポップ・ロックアルバム「SECOND NAVIGATION」と吹奏楽部を舞台にしたミュージカル・コメディ作「SPECTRUM BRASSBAND CLUB」に表れたとされていたが、2013年にリマスタリングされ再販されたアルバムのライナーノーツに掲載されたリーダー・新田のインタビューで、それが事実ではないことが明らかにされた。 新田によると、解散が決まったのは3作目「TIME BREAK」が完成した直後。当時大人気だったイエロー・マジック・オーケストラ や同じ事務所のサザンオールスターズ を引き合いに、大ヒット曲を出して売れることを事務所に要求された新田が、バンドの良さを失わずに数字が上がる方向に強引に持っていこうとする中で、メンバーからいろいろな意見や不満が出て収拾がつかなくなった。そのため事務所の判断により、新田プロデュース体制から新田を除くメンバー主導の体制に変更となり、事務所の指示で新田に変わって兼崎順一がまとめ上げたのが3作目「TIME BREAK」だったが、完成して間もなく解散が決まった。新田と所属するアミューズ の大里洋吉 会長とファンクラブ担当の3人で話し合った結果、日本武道館でのファイナルコンサートが決まったため、新田はリーダーとして解散が決まったバンドを解散までの1年間引っ張らないといけなくなった。そこで武道館コンサートまで行き着く前に崩壊してしまうことを防ぐ意味で、メンバーの気持ちをレコーディングに向かせるため、解散前に2枚のアルバムを同時に作ることにして、リズム隊が「SECOND NAVIGATION」ホーン隊が「SPECTRUM BRASSBAND CLUB」を担当したというのが一連の流れであるとした。その後、リーダーとして解散コンサートのアルバムを仕上げてマスター・テープを工場に入れるまでの全ての残務処理を終えた後、事務所で一応見ておけとスペクトラムの全活動の収支報告書を渡され「とりあえず黒だ」と言われたことを今でも記憶していて、その時が自分の解散コンサートが終わった瞬間だったと語っている。 また新田は「SPECTRUM BRASSBAND CLUB」に収録の曲「コンクールが近いよ」が新田からファンへのラスト・メッセージであり、この曲を思い出すと今でも泣けてくる。それと、わずか2年の活動だったことで、まさにこれから応援していこうという時に突然解散宣言されてしまったファンが一番可哀想だった、とも語っている。
スタジオで制作された最後のアルバムになった5作目『SPECTRUM BRASSBAND CLUB』(1981年)の企画書は、現在はテレビゲーム『桃太郎電鉄 』などを手掛けたゲームライターとしての顔が知られるさくまあきら が「綾狩一郎」名義で書いたもの。さくまは作詞の依頼を受けた際にスペクトラムをコミックバンドだと聞いていたため、ギャグ要素を盛り込んだ内容の歌詞を持ち込んだ。 メンバー全員がスタジオに詰め楽曲作成した過去4作と異なり、5作目の本作はメンバーが個別にスタジオに入り、パートごとに各トラックを録音して製作された。さくまは1982年に新田から楽曲提供を受けてレコードデビューした。
メンバー
今野は解散後、河内淳一 らとともにスタジオバンド「STR!X 」に在籍。桑田佳祐 ・原由子 のサポートメンバーとして2000年 頃まで活動した。KUWATA BAND でリーダーを務める。いかすバンド天国 のプロデューサー および審査員としても知られる。2018年にBLUFF へ再加入した。吉田、岡本もBLUFFのメンバーである。
パーカッションは、今野が加入するまではMMPのメンバーでもあった菅原由紀がサポートしていた。そのため1979年11月1日発売のシングル「イン・ザ・スペース」ではメンバーの欄には菅原由紀が表記されている。今野は同年11月13日に日本青年館 のコンサート「SPECTRUM SHOCK」で正式メンバーとなった。
ディスコグラフィー
シングル
発売日
タイトル
収録曲
作詞・作曲・編曲
備考
1st
1979年 8月25日
トマト・イッパツ
トマト・イッパツ
作詞:宮下康仁 作曲・編曲:スペクトラム
ロリータ
作詞:宮下康仁 作曲・編曲:スペクトラム
2nd
1979年 11月1日
イン・ザ・スペース
イン・ザ・スペース
作詞:宮下康仁 作曲・編曲:スペクトラム
Technics 「'80s スペースシリーズ」CMソング
アクトショー (Live Version)
作詞:宮下康仁 作曲・編曲:スペクトラム
3rd
1980年 3月5日
F・L・Y / ミーチャン Going to the Hoikuen
F・L・Y
作詞:Mabo 作曲・編曲:スペクトラム
両A面
ミーチャン Going to the Hoikuen
作曲・編曲:スペクトラム
4th
1980年 6月5日
SUNRISE
SUNRISE
作詞:山川啓介 作曲・編曲:スペクトラム
SONG
作詞:宮下康仁 作曲・編曲:スペクトラム
5th
1980年 11月21日
夜明け(アルバ)
夜明け(アルバ)
作詞:近田春夫 、スペクトラム 作曲・編曲:スペクトラム
セイコー 「ALBA」CMソング
やすらぎ (Love For You)
作曲・編曲:スペクトラム
6th
1981年 6月21日
Night Night Knight
Night Night Knight
作詞:巻上公一 作曲:渡辺直樹 編曲:スペクトラム
Paradise
作詞:スペクトラム 作曲:奥慶一 編曲:スペクトラム
7th
1991年 1月21日
In The Space (Super Remix Version)
In The Space (Super Remix Version)
作詞:宮下康仁 作曲・編曲:スペクトラム
Act-Show (Super Remix Version)
作詞:宮下康仁 作曲・編曲:スペクトラム
DVD
発売日
タイトル
収録内容
2003年3月26日
SPECTRUM LIVE AT BUDOUKAN Sep. 22, 1981「NEVER CAN SAY GOOD-BYE」
Never Can Say Good-Bye
His Native Place(故郷)
サンバ・イン・F
メモリー
His Native Place(故郷)
Longing(思慕)
サンバ・イン・F
MOTION
FIRST WAVE
おてもやん
QUESTION '81 & '82
ROCK'N'ROLL CIRCUS (挿入曲:ピンクパンサー のテーマ)
ACT SHOW
NIGHT NIGHT KNIGHT
IN THE SPACE
TOMATO IPPATSU
SUNRISE
青春とはなんなんだ!
2004年1月21日
SPECTRUM LIVE TIME BREAK LIVE AT SHIBUYA KOUKAIDOU -SPECTRUM 2004-
MOTION
IN THE SPACE
侍's
ACT SHOW
SUNRISE
夜明け(アルバ)
LYRISCHE SUITE "RESPITE OF A SOLDIER" 抒情組曲"戦士の休息"より REMINISCENCE(回想)
LOVE(愛) 〜HIS NATIVE PLACE(故郷) LONGING(思慕) CHILDREN(子供たち) GOD(神)
AN ILLUSION(幻夢) 〜The South Pacific〜(南太平洋)
AWAKENING(目覚め)
INTERVIEW-1
IN THE SPACE(PV)
INTERVIEW-2
ACTSHOW(PV)
INTERVIEW-3
トマトイッパツ(PV)
DVD + CD
1981年にVHD で発売された「TIME BREAK TOUR」のライブ映像が、DVD化され、タワーレコード 限定で発売された。
発売日
タイトル
収録内容
2016年3月30日
SPECTRUM LIVE / TIME BREAK + STUDIO LIVE 1979
【DVD】SPECTRUM LIVE / TIME BREAK
MOTION
IN THE SPACE
侍's
ACT SHOW
SUNRISE
夜明け(アルバ)
LYRISCHE SUITE "RESPITE OF A SOLDIER" 抒情組曲"戦士の休息"より REMINISCENCE(回想)
LOVE(愛) 〜HIS NATIVE PLACE(故郷) LONGING(思夢) CHILDREN(子供たち) GOD(神)
AN ILLUSION(幻夢)
AWAKENING(目覚め)
INTERVIEW-1 新田一郎 + 大伴良則
IN THE SPACE(プロモーション・ビデオ)
INTERVIEW-2 新田一郎 + 大伴良則
ACT SHOW(プロモーション・ビデオ)
INTERVIEW-3 新田一郎 + 大伴良則
トマトイッパツ(プロモーション・ビデオ)
SUNRISE
【CD】STUDIO LIVE 1979
ACT SHOW (Live) (2016 MIX)
トマトイッパツ
ロリータ
オリジナル侍'S
ACT SHOW(ロング・ヴァージョン)
脚注
注釈
↑ テクニクス のコンポーネントステレオ「SPACE-7」のCMソング。
↑ 実際に会場で使用されたのは、ケニー・ロジャース 「君に夢中」との合体版。
↑ 「燃えよ!フトリッパー」。『Dr.スランプ 』でもネタとして使われている。
↑ 実際に使用されているのは「Second Navigation」である。
↑ 1- 6: LIVE AT 渋谷公会堂〈TIME BREAK TOUR〉(1980)より
↑ 1979年月12日 ビクタースタジオにおけるライブ録音
外部リンク
(※新田・渡辺についてはそれぞれの項目参照のこと)