| NASA Infrared Telescope Facility | |
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| 座標 | 北緯19度49分35秒 西経155度28分23秒 / 北緯19.8263度 西経155.473度座標: 北緯19度49分35秒 西経155度28分23秒 / 北緯19.8263度 西経155.473度 |
| 形式 |
赤外線望遠鏡, カセグレン焦点, 天文台 |
| 口径 | 126 in (10 ft 6 in) |
| ウェブサイト |
irtfweb |
NASA赤外線望遠鏡施設(ナサせきがいせんぼうえんきょうしせつ、英語: NASA Infrared Telescope Facility、NASA IRTF)はハワイのマウナケア天文台にある、赤外線天文学の観測に特化されて設計された口径3.2m望遠鏡である。当初は惑星探査機のボイジャー計画を地上から支援するために建設されたが、その後もアメリカの赤外線天文の国立施設として、惑星科学や太陽近傍、さらに遠方宇宙まで様々な観測に用いられている。IRTFはNASAとの協定に基づきハワイ大学が運用されている。IRTFの観測時間規定では、観測時間の50%は惑星科学のために割り当てられる。


IRTFは主鏡口径が3.2m(126インチ)の古典的なカセグレン式望遠鏡である。そのカセグレン焦点のF値はf/38で主鏡のF値はf/2.5である。IRTFには赤外線観測に特化して設計された箇所がいくつかあり、たとえば副鏡は主鏡周辺からの望遠鏡本体の熱放射をできるだけ視野に入れないように、小さなサイズになっているほか、良像を保つための可変鏡になっている。副鏡の中心にも、装置からの熱放射を視野から外すための小さな鏡が取り付けられている。他に、F値が大きいことも、副鏡を小さくすることを可能とし、熱放射の影響を軽減する効果がある。鏡のコーティングも熱放射を最小限に抑えるようにされている。これにより、望遠鏡の放射が視野内に入り込む割合は4%未満になっている。また、副鏡には毎秒40回の高速で視野を切り替えることのできるチョッピング機構が備わっており、望遠鏡の視野を素早く対象天体と近くの空とを切り替えることができ、これはスカイ画像較正と呼ばれる赤外線観測特有の画像処理に必須となっている。
IRTFは大型のイギリス式赤道儀に搭載されているため、非常に剛性が高く装置のたわみを軽減し、望遠鏡を正確に対象へ指向することができる。赤道儀に搭載されているため視野回転を考慮せずに観測が可能であるが、イギリス式赤道儀のヨーク式架台であるため真北を向くことができず、赤緯69度以上の空には向けられない。ただし惑星科学を目的としたこの望遠鏡にとっては、太陽系天体がほとんど分布していないこうした高赤緯の空域を観測できないことは大きな欠点とならない。望遠鏡の架台の重量が大きいため、風による揺れなどの振動の影響も受けにくくなっている。
現在、IRTFは観測施設が有する装置としては、SpeX/MORIS, iSHELL, MIRSI/MOC, `Opihi, Felixの装置を搭載している。さらに外部機関からの持ち込みの装置を多数受け入れている。
SpeXはIRTF向けにハワイ大学の天文学研究所(IfA)が開発した、中分解能で0.7-5.4 μmの近赤外域を分光観測する分光器である。SpeXの科学目標としては、惑星科学や恒星、銀河の特徴によく適合し、また地球大気に由来する空の輝線を適切に分離し、空の連続光も分散できるほどの分解能を有しつつ、同時観測可能な波長範囲を最大化することだった。この要求を満たすために、SpeXは15秒角の長さのクロスディスパーサープリズムを用いて、0.8-2.4 μm, 2.0-4.1 μm,2.3-5.5 μmの各波長域でR~1000-2000の波長分解能を実現する。60秒角の1次のロングスリットでの観測も可能である。より透過率の高いプリズムは、0.8-2.5 μmの波長でR~100の分解能でスペクトルエネルギー分布の測定用などで使用される。分光器の検出器にはテレダイン・テクノロジーズ社の2048x2048ピクセル Hawaii-2RG赤外線検出器が使用されている。SpeXには、0.12秒角/ピクセルの解像度でフィールドを監視する赤外線スリットビュアーガイダーも搭載されており、こちらにはレイセオン社のAladdin 2 512x512ピクセルアンチモン化インジウムアレイが使用されている。赤外線スリットビュアーは撮像や測光観測にも用いられる。SpeXは惑星科学や天体物理学に至るまで幅広い用途で使用される、IRTFで最も使用要求の多い機器である。MORISはダイクロイック装置を使用することでSpeXと同時に使用でき、ダイクロイック装置が可視光をMORISに、赤外線をSpeXに分けて送ることで、SpeXの可視光ガイドや可視光同時撮像ができる。2000年に運用が開始され、2014年に機器がアップデートされた。
MORIS (MIT Optical Rapid Imaging System)は電子増幅型CCDを使用した、IRTF用の可視光高速カメラである。MORISはSpeXのサイドウィンドウに取り付けられ、SpeXの内部低温ダイクロイック装置から可視光を受け取る。この設計はマサチューセッツ工科大学とウィリアムズ大学が共同設計したPOETS (Portable Occultation, Eclipse, and Transit Systems)装置を基にしている。MORISはIRTFで自由に利用でき、ユーザーインターフェースもIRTFの標準インターフェースに対応している。可視光測光に加えて、MORISはSpeXの観測時に可視光ガイドをする目的にも使用され、Vバンドで20等級ほどの天体まで正確にSpeXの視野内からずれないように監視できる。ガイドソフトウェアには、赤外線と可視光線の大気分散の違いを補正する機能が組み込まれている。
iSHELLは2016年から使用されている、波長1 - 5.3 μmの高分解能エシェル分光器である。検出器にはSpeXと同じ2048x2048 Hawaii-2RG赤外線検出器を使用している。これはCSHELL分光器の後継機であり、より大きな検出器とクロス分散器を使用することでCSHELLよりもはるかに幅広い波長範囲を観測できる。iShellはシリコン浸透回折格子を使用して高い分散が可能となっており、それによってより小型の回折格子で分光が可能となり、従来の回折格子を用いた装置よりも光学系や装置全体の小型化に繋がっている。したがってiSHELLはSpeXよりもはるかに大きな波長分解能を持つにもかかわらず、その装置の大きさはSpeXより少し小さいほどである。Kバンド用に最適化された回折格子と、Lバンド用に最適化された回折格子の2種類を要する。ただしシリコン回折格子を用いる影響で、iShellは1 μmより短い波長に対しては感度を有さない。検出器のピクセルサイズは0.125秒角で、スペクトル分解能は0.375秒角のスリットを使用した際には80,000に達する。0.375から4.0秒角まで5種のスリットが用意されている。iSHELLは赤外線撮像モードと赤外線ガイドカメラモードでも使用でき、42秒角の視野を有する。2019年時点で、IRTF内でSpeXに次いで2番目に使用された機器である。最大で3-5 m/sの視線速度変化を検出でき、特に赤外線で明るい赤色矮星周囲の太陽系外惑星の観測に使用される。

MIRSIは2.2-25 μm までの熱赤外線撮像カメラで、グリズム分光も可能である。MIRSIはボストン大学が製作し、IRTFのスタッフが改良した。光学系は20Kまで冷却され、内部の320x240ピクセルSi:As BIB検出器は住友重機械工業製の閉サイクル冷凍機で5Kまで冷却されており、これは従来の液体窒素を使うシステムから改良されたため施設スタッフの労力が削減された。MIRSIでは広帯域フィルターと狭帯域フィルター、CVFを選択できる。MOCは2022年から運用されている、MIRSIとダイクロイックで同時使用できるCCDカメラで、MOCによる可視光とMIRSIによる中間赤外の測光を同時に行うことで小惑星のアルベドを測定でき、大きさの推定ができる。
`OpihiはPlanewave社が市販している17インチ望遠鏡をIRTFに同架させているものであり、画角が広いため位置の不確定性が大きい小惑星の観測に使用されているほか、観測中に空の状態を監視するためにも使用されている。
Felixは2025年から稼働している観測支援用のCCDカメラであり、ガイドカメラ、波面センサーとして機能する。
IRTFには外部の観測者が開発した機器が多数持ち込まれ使用されており、その多くは熱赤外分光器である。機器の例としてTEXES, EXES, BASS, HIPWACなどがある。
IRTFのスタッフはSPECTREと呼んでいる、一度の観測で0.4 - 4.2 μmまでをシーイング限界までR=250の波長分解能で分光する積分フィールド分光装置を開発しており、地球近傍小惑星や光学突発天体の分光観測への使用が見込まれている。
CSHELLは後継となるiSHELLがIRTFで運用開始された際に退役した。CSHELLは波長1 - 5.5 μmを高分解能で分光する1次エシェル分光器で、256 x 256 ピクセルのInSb検出器アレイを使用している。それぞれのピクセルは空で0.2秒角に相当する。 スリットは0.5から4.0秒角で、波長分解能は最大で30000に達した。CSHELLは30秒角四方をカバーする赤外撮像モードも使用でき、1度の視野を持つ内部CCDにガイドされた。
1994年から2004年まで撮像装置としてNSFCAMが使用されており、その後継のNSFCAM2は波長1-5 μmのカメラで、IfAがIRTFのために開発した。2048x2048ピクセルの Hawaii 2RG検出器アレイが使用されている。画像のスケールは0.04 秒角/ピクセルで、視野は82秒角四方だった。フィルターホイールは2つ備えており、1つは広帯域と狭帯域フィルター、ワイヤーグリッドの偏光フィルターを28種類備えており、もう1つは1.5-5 μm のCVFと低分解能分光用のグリズムが搭載されていた。そのほか3番目のホイールがカメラ内部のF/38焦点に配置されており、グリズムとフィールドレンズを備えている。外部ホイールは偏光観測装置やそのためのCVFホイール用の波長面を含んでいる。NSFCam2はより高性能な検出器を搭載した機器への更新のために2012年秋にIRTFから取り外され、その後は利用できなくなっている。
その他可視光CCDのApogeeが使用されていた。

現在のIRTFのユーザーの大多数は遠隔で観測を行っている。観測者は高速インターネットさえ使用できれば、所属機関のオフィスや自宅からでも観測ができる。観測者は現地観測するときと同じくVNCセッションで装置をコントロールし、望遠鏡の操作者とは電話やポリコム、Zoomでやり取りする。観測者は割り当てられた観測時間にログインして望遠鏡を制御する。リモート観測には多くの利点があり、ハワイまでの渡航費や時間の節約もその1つであるが、天文学における利点も存在する。従来、観測者がハワイに渡航していた頃は、複数夜を費やす観測の場合は滞在期間が伸びないようなるべく連続した日にまとめて行う必要があった。リモート観測では観測者は一夜を費やす観測のかわりに1/2夜、1/4夜などの細々とした観測提案も抵抗なく行うことができ、観測のスケジュール調整もフレキシブルになっている。その結果、1週間ごとの太陽系天体の監視といった多様な観測頻度のプログラムを実施しやすくなった。遠隔観測によって、IRTFでもToO(Target Of Opportunity)と呼ばれる観測を行うことができるようになった。これは事前に予想のできない突発的な天体や現象の観測で、科学的に価値が高い。ターゲットとしては超新星や直前に発見された地球近傍小惑星などがある。観測者はリモートでも望遠鏡の操作手は施設に常駐しており、施設の安全管理や望遠鏡の焦点調整、その他トラブル対応といった遠隔の観測者ができない作業を行うことで観測者をサポートしている。
2001年には分光観測から土星の衛星タイタンの風速が130m/sを超えることを直接測定した。
IRTFには小惑星センターからT13の天文台コードが割り当てられ、小惑星の観測が行われている。 IRTFは2016年に、地球から月との距離の9倍まで接近したパンスターズ彗星 (460P)の観測にも参加した。
NASA IRTFは同じくマウナケア天文台においてイギリス赤外線望遠鏡(UKIRT)と同時期に建設された。マウナケア地区に最初に望遠鏡を建設した、ハワイ大学天文学研究所のジョン・ジェフェリーも、同じ場所で同時期に2つも同じような望遠鏡が要るのかという疑問のもとしばしば困惑され、1つだけ建てて共有しないのかという疑問は自然なものであると述べている。 なおUKIRTは2025年より撤去されている。
赤外線望遠鏡には、非常に高地の乾燥した立地、特殊な装置、可視光望遠鏡と同品質の鏡や光学系が必要となる。1980年前後には複数の3m級赤外線望遠鏡が建設された。
| # | 名前 / 天文台 |
画像 | 口径 | 観測波長 | 標高 | ファーストライト |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | イギリス赤外線望遠鏡 ジョイント天文学センター |
380 cm (150 in) | 赤外線 | 4,205 m (13,796 ft) | 1979 | |
| 2 | ESO3.6m望遠鏡 ESO ラ・シヤ天文台 |
357 cm (141 in) | 可視光線 赤外線 |
2,400 m (7,874 ft) | 1977年 | |
| 3 | IRTF マウナケア天文台 |
320 cm (126 in) | 赤外線 | 4,205 m (13,796 ft) | 1979年 |
さらに小型の近赤外望遠鏡として、スイスのアルプス山脈にある口径150 cm (59 in)のゴルナーグラート赤外線望遠鏡と、カナダのモンメガンティク天文台にある口径160 cm (63 in)望遠鏡がある。