Kernel-based Virtual Machine
Kernel-based Virtual Machine (KVM) は、Linuxカーネルをハイパーバイザとして機能させるための仮想化モジュールである。Linuxカーネルのメインラインにバージョン2.6.20でマージされ、このカーネルは、2007年2月5日にリリースされた。KVMは、VTやAMD-Vなどのハードウェアの仮想化拡張を必要とする。KVMは、他のオペレーティングシステム (OS) であるFreeBSDやillumosにも、ローダブル・カーネル・モジュールの形態で移植されている。
KVMはもともとx86プロセッサ向けに設計されたが、後にS/390、PowerPC、IA-64、ARM向けにも移植されている。
KVMは、Linux、BSD、Solaris、Windows、Haiku、ReactOS、Plan 9、AROS Research Operating System、macOSなど、非常に幅広いゲストOSに対してハードウェア支援仮想化を提供する。また、Android 2.2、GNU/Hurd(Debian K16)、Minix 3.1.2a、Solaris 10 U3、Darwin 8.0.1などのOSや上記OSの新しいバージョンでは、何らかの制限の元で動作することが知られている。
さらに、KVMでVirtIO APIを利用することで、Linux、OpenBSD、FreeBSD、NetBSD、Plan 9、WindowsのゲストOSに対して、準仮想化の機能も提供する。準仮想化対象には、準仮想イーサネットカード、ディスクI/Oコントローラー、ゲストOSの仮想記憶管理の動作を変更するバルーンデバイス (balloon device)、SPICEまたはVMwareを使用したVGAグラフィックインタフェースも含まれる。
歴史
KVMの開発は、テクノロジーのスタートアップであるQumranetで、Avi Kivityにより始められた。Qumranetは、2008年レッドハットに買収された。
KVMは、Linuxカーネルのメインラインにバージョン2.6.20でマージされた。このLinuxカーネルは、2007年2月5日にリリースされた。
KVMは、Paolo Bonziniによりメンテナンスされている。
内部構造

KVM自体はエミュレーションは全く実行しない。そのかわりに、/dev/kvm
インタフェースを公開することによって、ユーザースペースのホストが以下の機能を利用できるようにする。
- ゲストVMのアドレス空間のセットアップ。ホストは、ゲストがメインOS内にブートストラップするために利用するファームウェアイメージ(通常、PCをエミュレートする時のカスタムBIOSである)も提供する必要がある。
- ゲストのシミュレートされたI/Oをフィード。
- ゲストのビデオディスプレイをシステムホストにマッピング。
Linuxでは、QEMUのバージョン0.10.1以降がユーザー空間のホストの1例である。QEMUは、ゲストをネイティブに近い速度で仮想化できる場合にはKVMを使うが、そうでない場合には、ソフトウェアのみのエミュレーションにフォールバックする。
内部では、KVMは、16ビットx86BIOSのオープンソース実装としてSeaBIOSを利用している。
エミュレート対象ハードウェア
グラフィカルな管理ツール

- Kimchi – ウェブベースのKVM仮想化管理ツール。
- Virtual Machine Manager – はKVMベースの仮想マシンの作成、編集、スタート、ストップに対応している。また、ホスト間でドラッグ・アンド・ドロップによるVMのライブまたはコールドマイグレーションもできる。
- Proxmox Virtual Environment – KVMとLXCを含むオープンソースの仮想化管理パッケージ。ベアメタルのインストーラ、ウェブベースのリモート管理GUI、HAクラスタースタック、統合ストレージ (unified storage)、柔軟なネットワーク管理 (flexible network)、オプションの商用サポートがある。
- OpenQRM – ヘテロジニアスなデータセンターのインフラストラクチャーを管理するための管理プラットフォーム。
- GNOME Boxes – Linux上のlibvirtのゲストを管理するためのGNOMEインタフェース。
- oVirt – libvirtを基盤に構築された、KVMのためのオープンソースの仮想化管理ツール。
ライセンス
KVMの各部品は、以下のように様々なGNUライセンスでライセンスされている。
- KVM カーネルモジュール: GPL v2
- KVM ユーザモジュール: LGPL v2
- QEMU 仮想CPUコアライブラリ (libqemu.a) とQEMU PCシステムエミュレータ: LGPL
- LinuxユーザモードQEMUエミュレータ: GPL
- BIOSファイル (bios.bin, vgabios.bin, vgabios-cirrus.bin) : LGPL v2以降