
NELF(negative elongation factor)は、4つのサブユニット(NELF-A、NELF-B、NELF-C/NELF-D、NELF-E)からなるタンパク質複合体であり、転写開始部位(TSS)から約20–60ヌクレオチド下流でRNAポリメラーゼII(Pol II)を一時停止させることで、Pol IIによる転写に負の影響を及ぼす。
NELFは、NELF-A、NELF-B、NELF-C/NELF-D、NELF-Eの4つのサブユニットからなる複合体である。NELF-AサブユニットはNELFA/WHSC2(Wolf-Hirschhorn syndrome candidate 2)遺伝子にコードされる。NELF-BはそれまでCOBRA1(cofactor of BRCA1、現在ではNELFB)として知られていた遺伝子にコードされるタンパク質と同一であることが明らかにされた。NELF-CとNELF-Dはどちらも同じ遺伝子(NELFCD/TH1L)に由来し、選択的翻訳開始部位によってN末端が異なるタンパク質が産生される。NELF複合体にはNELF-CとNELF-Dのいずれか1つのみが存在し、両方が存在していることはない。NELF-EはNELFE遺伝子にコードされ、RNA結合タンパク質である。
NELFは核内に局在している。NELFはDSIF(DRB-sensitivity inducing factor)、Pol IIとともに安定な複合体を形成するが、いずれか一方のみと安定な複合体を形成することはない。NELFはDSIFの負の機能においても重要な因子である。NELFはDSIFとともに機能し、転写伸長期のPol IIの進行を低下させる。キイロショウジョウバエDrosophila melanogasterでは、NELFとDSIFによるプロモーター近位での一時停止によってHsp70遺伝子が影響を受けることが知られている。NELFはDSIFを補助して負の効果を増幅し、遺伝子発現制御をより強力なものとする。P-TEFb(positive transcription elongation factor b)は、Pol IIのC末端ドメインのセリン2番、そしてDSIFのSPT5サブユニットのリン酸化によってNELFの解離を引き起こし、Pol IIに対するNELFとDSIFの負の効果を阻害する。

その他の機構としては、NELFとエンハンサーRNA(eRNA)の相互作用によってNELFがPol IIから解離し、生産的な転写伸長が引き起こされることが2つの最初期遺伝子での研究から示されている。
一方で、NELFとDSIFがどのような機構で機能しているのかは不明確である。NELFのホモログは一部の後生動物(昆虫や脊椎動物)に存在するが、植物、酵母、線虫では見つかっていない。
NELF-AはPol II複合体と相互作用する。
NELF-BはKIAA1191、NELF-E、BRCA1と相互作用する。
NELF-C/Dは、ARAF、PCF11、KAT8と相互作用する。
NELF-Eは、NELF-B、HIV TAR RNAと相互作用する。
NELFは、HIV-1の潜伏期に停止したPol IIに対するPCF11の組み込みに関与している可能性がある。NELFA遺伝子は、ヒトゲノム上の4番染色体短腕に位置しており、この領域の欠失が重要となるウォルフ・ヒルシュホーン症候群の表現型と関係している可能性がある。NELFによって制御されるPol IIの一時停止はBRCA1欠損乳腺上皮細胞におけるRループの蓄積の大きな要因となっており、腫瘍形成につながっている可能性がある。