PyQt
PyQtは、クロスプラットフォームなGUIツールキットであるQtのPythonバインディングにして、PythonでGUIプログラミングをするときの選択肢の一つである。PyQtの他には、PySide・PyGTK・wxPython・TkinterなどのGUIツールキットが存在する。Qtと同様にPyQtは自由ソフトウェアである。PyQtはPythonのプラグインとして実装されている。
PyQtはイギリスのRiverbank Computing社によって開発されており、GPLと商用ライセンスで提供されているが、LGPLの下では提供されていない。PyQtはクロスプラットフォームなツールキットであり、Windows・Linux・macOSなどをサポートしている。
PyQtは440のクラスと6000以上の関数とメソッドを持つ。代表的なものは以下のとおりである。
- 充実したGUIウィジェット
- SQLデータベース (ODBC, MySQL, PostgreSQL, Oracle Database) にアクセスするためのクラス
- QScintillaとScintillaをベースとしたエディタウィジェット
- 自動的にデータベースからデータを取り込みウィジェットに表示
- XMLのパーサ
- SVGのサポート
- Windows上でのActiveXのためのクラス(商用バージョンのみ)
自動的にこれらのバインディングを生成するため、フィル・トンプソンは他のプロジェクトでも使用されるSIPというツールを開発した。
Qtツールキットの所有者であるノキアは、2009年8月にPySideを公開した。PySideはPyQtと同じ機能を持つが、LGPLの下で公開されているという点でPyQtと異なっている。PySideが公開されたのは、Riverbank Computing社とのライセンスに関する合意形成に失敗したためである。

PyQtの構成
PyQt4は次のPythonモジュールを含んでいる。
- QtCore
- イベントループとQtのシグナルとスロット機構を備えた非GUIクラスを含んでいる。このモジュールは、プラットホームに依存しないようにUnicode・スレッド・マップドファイル・共有メモリ・正規表現などを抽象化する。
- QtGui
- 多くのGUIクラスを含んでいる。これらのクラスはModel View Controller設計パターンに基づいた、たくさんのテーブル・ツリー・リストを含んでいる。また、何千ものアイテムを格納できる、洗練された2Dキャンパスウィジェットを提供する。
- QtNetwork
- UDP・TCPクライアントとサーバを作成するためのモジュールである。このモジュールはFTPの実装・HTTPクライアント・DNSルックアップのためのクラスを含んでいる。ネットワークアプリケーションが簡単に開発できるように作成されている。
- QtOpenGL
- OpenGLを扱うためのモジュールである。
- QtSql
- オープンソースでプロプライエタリなSQLデータベースを扱うためのモジュールである。これはGUIクラスで使用できるデータベーステーブル用の編集可能なデータモデルを含んでいる。また、SQLiteの実装も含んでいる。
- QtSvg
- SVGファイルを表示するためのモジュールである。
- QtXml
- QtのXMLパーサにSAXとDOMのインターフェースを実装するモジュールである。
- QtMultimedia
- 低レベルでマルチメディア機能を実装するためのモジュールである。ソフトウェア開発者は普通phononモジュールを使う。
- QtDesigner
- PyQtを用いてQt Designerを拡張するためのモジュールである。
- Qt
- 一つのモジュールに上記すべてのモジュールに含まれるクラスを統合する。このため、Qtモジュールを読み込んでおけば、あるクラスが含まれているかどうかを心配する必要がなくなる。しかし、一つのモジュールに統合することで、アプリケーションのメモリ使用量を増加させる、Qtフレームワーク全体を読み込まなければならないなどの欠点が生じる。この統合されたモジュールを使用するか、個々のモジュールを使用するかは個人の好みになる。
- uic
- Qt Designerで作られた、XMLファイルを扱うためのモジュールである。これは、XMLファイルの読み込み・表示機能や、後に実行するためにXMLファイルからPythonコードを生成するクラスが含まれている。
Hello World

#! /usr/bin/env python
# -*- coding: utf-8 -*-
#
# Here we provide the necessary imports.
# The basic GUI widgets are located in QtGui module.
import sys
from PyQt4.QtGui import *
# Every PyQt4 application must create an application object.
# The application object is located in the QtGui module.
a = QApplication(sys.argv)
# The QWidget widget is the base class of all user interface objects in PyQt4.
# We provide the default constructor for QWidget. The default constructor has no parent.
# A widget with no parent is called a window.
w = QWidget()
w.resize(320, 240) # The resize() method resizes the widget.
w.setWindowTitle("Hello, World!") # Here we set the title for our window.
w.show() # The show() method displays the widget on the screen.
sys.exit(a.exec_()) # Finally, we enter the mainloop of the application.
PyQtを用いたソフトウェア
- Anki 学習補助ソフトウェア
- Eric Python IDE Pythonの統合開発環境
- Kodos Pythonの正規表現デバッガ
- Orange データマイニングとデータの可視化のためのフレームワーク
- qt-recordMyDesktop recordMyDesktopというソフトウェアのQt版
- QGIS 地理情報システムのためのソフトウェア
- Veusz 科学用途の作図ソフトウェア
- Spyder Pythonの統合開発環境
- Leo プログラミング用のエディタ
- Ninja-IDE Pythonの統合開発環境
- Calibre 電子書籍ソフトウェア
- TortoiseHG Mercurialのグラフィカルなインタフェース
関連項目
出典
推薦文献
- Summerfield, Mark (October 28, 2007), Rapid GUI Programming with Python and Qt (Covers PyQt4) (1st ed.), Prentice Hall, pp. 648,ISBN 978-0-13-235418-9
- Rempt, Boudewijn (2002), GUI Programming with Python: QT Edition (Covers PyQt3), OpenDocs