
レッドリスト(英語: Red List, RL)とは、絶滅のおそれのある野生生物のリスト。国際自然保護連合(IUCN)が作成したIUCNレッドリストが著名であり、正式にはThe IUCN Red List of Threatened Species(IUCN絶滅危惧種レッドリスト)という。毎年2回以上の更新を努力目標としている。注目を集めるために、国際自然保護連合総会をはじめ、生物多様性条約締約国会議やワシントン条約締約国会議などの大きなイベントに合わせて更新されることが多い。
また、日本では環境省が作成した「絶滅のおそれのある野生生物の種のリスト」(環境省レッドリスト)や、各都道府県が作成した都道府県別レッドデータブックも、レッドリストと呼ばれる。
絶滅のおそれのある生物のおかれた状況の深刻さと、保護の緊急性をあらわすためにレッド(=赤)と名付けられているが、しばしば人に害を及ぼす危険生物のリストと誤認されることがある。
最初のIUCN版レッドリストは、1964年に作成された。しかし、それ以前からレッドリストの作成に関する動きはあり、1940年代に哺乳類や鳥類の個体数の減少の報告が、1950年代にはIUCNが絶滅の危機のある野生生物をカード化して整理を始めた。これがレッドリストの先駆けである。そして、上述のように、1966年にノエル・シモン編『レッドデータブック第1巻「哺乳類」』及びジェイムズ・フィッシャー、ジャック・ビンセント編『第2巻「鳥類」』が発表された。その後、1968年にレネ・ホネッガー (René E. Honegger) 編『第3巻「爬虫類と両生類」』、1970年にロナルド・メルビル編『第5巻「種子植物」』、1977年にロバート・ラッシュ・ミラー編『第4巻「淡水魚」』が次々と発表された。これらは、更新の便利からルーズリーフ形式が採用されている。
その後、1970年代から1980年代にかけて、レッドリストの更新や新たな分類群のレッドリストの作成が進められ、1986年に"1986 IUCN red list of threatened animals"と呼ばれる「本」の形式で出版された後、2000年にはインターネットを通じて提供されるようになった。
レッドリストのカテゴリとその評価基準 (Categories & Criteria) の変遷を説明する。
- ※凡例
- 「 」内は矢原 (1996)、およびIUCN日本委員会が訳した「IUCNレッドリスト2000年(1994年レッドリストカテゴリーとその基準)」で示されている訳語。
- ( )は、環境省レッドリストの対応用語。
- ※凡例
- 「 」内は矢原・金子 (2003) が訳した『IUCNレッドリストカテゴリーと基準 3.1版』で示されている訳語。
- ( )は、環境省レッドリストの対応用語。
- <>はWWF-Jの訳語。
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IUCNのレッドリスト発表後、各国の所管政府機関などによって、同様のリストが独自に作成されてきた。これらの多くは、IUCNのカテゴリーに準拠したものもある。
日本では環境省により作成されているほか、水産庁や地方公共団体、学術団体などにより作成されている。
日本においてはレッドリストやレッドデータブックに掲載された生物に対する法令等の規制はないが、絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律(種の保存法)における希少野生動植物種の指定や環境アセスメントなどの野生生物の保護・保全における基礎資料として用いられる。
環境省では、レッドリストとレッドデータブックという2つの資料を作成・公表する。レッドリストは絶滅のおそれのある野生生物の名称(学名、和名等現地名)、カテゴリー等の最低限の情報のみをリストするものであり、レッドデータブックよりも短期間で作成することができる。一方レッドデータブックには、レッドリストの内容に加え、形態、繁殖・採餌等の生態、分布、生育・生息環境、生育・生息状況、絶滅の要因、保全対策などのより詳細な情報が盛り込まれており、掲載種の基本的な情報を得ることができるようになっている。しかしながら、最新の知見を収集し、それらを取りまとめるため、作成に時間がかかるという欠点もある。例えば、環境省ではレッドリストの公表からレッドデータブックの作成までの期間を見ると、最も短い両生類・爬虫類で2年半、最も時間が掛かった昆虫類で6年以上経過している。絶滅の危機に瀕している野生生物の状況は短期間で悪化することもある。そのため、いち早くレッドリストを確定・公表し、その後詳細な情報をとりまとめたレッドデータブックを作成するという2段階の作業をとっている。
この作成期間の差から、レッドリストとレッドデータブックで記載されている内容が変更されることもある。環境省の哺乳類では、1998年公表のレッドリストでは1亜種としていたニホンカワウソを、1998年発行のレッドデータブックでは本州以南個体群と北海道個体群の2つの亜種に分けている。また、維管束植物では、1997年公表のレッドリストで情報不足に評価された種(亜種・変種)について可能な限り再評価し、2000年発行のレッドデータブックでは絶滅危惧 (Threatened) に評価された種が266分類群も増加している。
レッドリストとレッドデータブックの作成期間が開いた場合、レッドデータブックの発刊後すぐに、見直されたレッドリストが公表されるという場合もある。環境省の甲殻類等とクモ形類・多足類等のレッドデータブックは2006年2月に発行されたが、その年の12月に新しいレッドリストが公表されている。
なお、レッドリストとレッドデータブックの2段階に分けず、レッドデータブックとして1回のみ公表する場合もある。特に日本の地方自治体(都道府県など)ではその傾向にあるが、環境省(当時環境庁)が1991年(平成3年)に発行した『日本の絶滅のおそれのある野生生物』(動物版レッドデータブック)においても、先行してレッドリストを公表してはいない。
| 1997年版・2007年版カテゴリー | 1991年版カテゴリー |
|---|---|
| 絶滅 (EX) | 絶滅種 (Ex) |
| 野生絶滅 (EW) | - |
| 絶滅危惧I類 (CR+EN) | 絶滅危惧種 (E) |
| 絶滅危惧II類 (VU) | 危急種 (V) |
| 準絶滅危惧 (NT) | 希少種 (R) |
| 情報不足 (DD) | - |
| 絶滅のおそれのある地域個体群 (LP) | 地域個体群 (LP) |
| 分類 | 定義 |
|---|---|
| 絶滅 (EX) | 日本ではすでに絶滅したと考えられる種 |
| 野生絶滅 (EW) | 飼育・栽培下、あるいは自然分布域の明らかに外側で野生化した状態でのみ存続している種 |
| 絶滅危惧I類 (CR+EN) | 絶滅の危機に瀕している種 |
| 絶滅危惧IA類 (CR) | ごく近い将来における野生での絶滅の危険性が極めて高いもの |
| 絶滅危惧IB類 (EN) | IA類ほどではないが、近い将来における野生での絶滅の危険性が高いもの |
| 絶滅危惧II類 (VU) | 絶滅の危険が増大している種 |
| 準絶滅危惧 (NT) | 現時点での絶滅危険度は小さいが、生息条件の変化によっては「絶滅危惧」に移行する可能性のある種 |
| 情報不足 (DD) | 評価するだけの情報が不足している種 |
| 絶滅のおそれのある地域個体群 (LP) | 地域的に孤立している個体群で、絶滅のおそれが高いもの |
| 分類群 | 1991年版 | 1997-2000年版 | 2006-2007年版 | 2012-2013年版 | 2025-2026年版 | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 動物 | ||||||
| 哺乳類 | 1991年5月 | 1998年6月12日 | 2007年8月3日 | 2012年8月28日 | - | - |
| 鳥類 | 2006年12月22日 | 2026年3月17日 | ||||
| 爬虫類 | 1997年8月7日 | |||||
| 両生類 | ||||||
| 汽水・淡水魚類 | 1999年2月18日 | 2007年8月3日 | 2013年2月1日 | - | 1999年公表のリストの名称は「魚類」。 | |
| 海洋生物 | - | 2017年3月17日 | - | 海水魚類、サンゴ類、甲殻類、軟体動物、その他無脊椎動物が対象 | ||
| 昆虫類 | 1991年10月 | 2000年4月12日 | 2007年8月3日 | 2012年8月28日 | - | - |
| 貝類 | - | 2000年公表のリストの名称は「陸・淡水産貝類」。 | ||||
| その他無脊椎動物 | 2006年12月22日 | - | 2000年公表のリストでは「クモ形類・多足類等」と「甲殻類等」に分かれていた。 | |||
| 植物 | ||||||
| 植物I(維管束植物) | - | 1997年8月28日 | 2007年8月3日 | 2012年8月28日 | 2025年3月18日 | |
| 植物II(維管束植物以外) | 藻類、蘚苔類、地衣類、菌類が対象 | |||||
水産庁は2000年(平成12年)に「日本の希少な野生水生生物に関するデータブック」を発行している。これは水産資源の持続的利用を目的とし、環境省版では対象としていない海生生物含む水生生物を対象としたレッドデータブックである。評価基準及びカテゴリーは環境庁(現環境省)の1991年版カテゴリーに準じた絶滅危惧(種)、危急(種)、希少(種)、地域個体群に加え、独自のカテゴリーとして減少(種)、減少傾向、普通を設けている。最新のIUCNカテゴリー等に準拠しておらず独特のものであるため問題が指摘されている(鯨類#環境保全参照)。
日本の47都道府県全てで、レッドリスト(あるいはレッドデータブック)を作成・公表している。また、都道府県によっては、改定版を作成している場合もある。各地方自治体の状況に応じ、独自色をだしている(京都府レッドデータブックを参照)。千葉市、名古屋市、松山市などのように市町村レベルでのレッドデータブックを作成している地方自治体がある。
日本自然保護協会及び世界自然保護基金日本委員会の合同で、1989年に維管束植物のレッドデータブックが発行されている。
日本哺乳類学会においても、環境省とは独自に哺乳類のレッドリストを検討し、1997年に『レッドデータ 日本の哺乳類』を発表している。このレッドリストは、IUCN版の新旧両方のカテゴリーに対応している。
出版年順
機関
条約や規約
用語
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