TI-89 シリーズ

TI-89
TI-89
種別プログラミンググラフ電卓
製造メーカーテキサス・インスツルメンツ
販売開始1998年
販売終了2004年
後継TI-89 Titanium
計算機
入力方式DAL
ディスプレイLCDドットマトリックス
表示サイズ160×100
CPU
プロセッサMotorola 68000
周波数10、12 MHz
プログラミング
ユーザーメモリ256 KB RAM (188 KB利用可能)
ファームウェア
メモリ
2 MBフラッシュメモリ (639 KB利用可能)
その他
電源単4電池 x 4本、
CR1616 あるいは CR1620を1個

TI-89 および TI-89 Titanium はテキサス・インスツルメンツ(TI)が開発したグラフ描画可能なプログラム電卓である。

1998年発売のTI-89は数式処理システム(Computer Algebra System, CAS)を内蔵していることが特徴で、代数式の記号的な操作が可能で、変数を用いた形で方程式を解くことができる。同機能を搭載し他の改良もなされた後継機 TI-89 Titaniumは2004年発売で、現行品である。

TI-89 は同社のTI-92 Plusのキーボードを変更し表示を小型化、電卓型にしたものである。TI-92 のようなQWERTY配列のキーボードを備えた機器は試験に持ち込めないことが多いので、同等機能で電卓型のTI-89が開発された。 標準で数式処理システムを搭載していながら試験に持ち込める装置は当時ほかにほぼ無く、欧米の学生に人気の機種となった。

TI-89

TI-89は1998年にリリースされた。160×100 ピクセルの液晶ディスプレイとフラッシュメモリを備え、Advanced Mathematics Software を内蔵している。

CPUはMotorola 68000(MC68000)の電卓用に最適化されたカスタムバージョン。クロック周波数は10MHzあるいは12MHz。RAMは256KB(うち190KBをユーザーが利用可能)、フラッシュメモリは2MB(うち700KBをユーザーが利用可能)である。これらのメモリに数式、変数、プログラム、テーブル、テキストファイル、リストを格納できる。

機能

最大の特徴は標準搭載された数式処理システム(CAS)である。このシステムには以下のような機能がある。

  • 代数式の単純化。(x^3-x^2-8x+12)/(x+3) と入力すると x2−4x+4 と表示される。
  • さらに factor 関数を使用可能。例えば、factor((x^3-x^2-8x+12)/(x+3)) と入力すれば (x−2)2 と表示される。
  • 逆に expand 関数を使えば、expand((x-2)^2) と入力すると x2−4x+4 と表示される。
  • comDenom 関数は一種の通分機能を提供する。例えば、comDenom(x/2+(y^2-6)/3-z^2/8) は次のような結果となる。
12x+8y2−3z2−4824.
  • propFrac 関数は、propFrac((x^2-5)/(x-3)) と入力すると次のような結果を返す。
4x−3+x+3.
  • 三角関数では、sin(60°) で次のように結果を返す。
32.
  • また、sin(arctan(x^2-6)) と入力すると次の結果を返す。
(x2−6)1x4−12x2+37.
  • tExpand を使うと、sin(3x)cos(x) を 4sin⁡(x)(cos⁡(x))3−sin⁡(x)cos⁡(x) のように展開する。
  • tCollect は tExpand の逆を行う。
  • solve() は、方程式と変数を指定し、その変数の解を返す。例えば、solve(3x+3=12,x) では x=3 となる。解が複数ある場合は全てを列挙する。
  • 連立方程式も solve(x+y=4 and x^2-6x+3=y,x) のように入力し解く事が出来る。解が複素数になる場合も cSolve 関数で解く事が出来る。
  • また、simult で行列式的な入力が可能で、16変数の16連立方程式まで解く事が可能。
  • 各種初等関数の微分を記号的に表せる。
  • 正確な解が求められない場合も nDeriv 関数で近似解を求めることができる。
  • 限定的ながら、積分も可能。
  • 数式の極限も計算可能。

関数のグラフを二次元表示できるほか、各種グラフ表示が可能。

プログラミング

TI-BASIC というBASIC言語でプログラミング可能である。またPC/AT互換機上でC言語やアセンブリ言語でプログラミングし、コンパイルやアセンブルしてTI-89のCPU(MC68000)の機械語を生成し動かすこともできる。 リリース以来、様々なプログラムが開発されており、テトリスやマインスイーパのクローンなどのゲームもある。また、ZX Spectrumのエミュレータやチェスのプログラムもある。

TI-89 Titanium

TI-89 Titanium

2004年夏に後継の TI-89 Titanium がリリースされた。2006年にはRAM増量と高速化 (16MHz) がされている。

ミニUSBポートを備え、同一機種やPCと接続可能である。表計算ソフト CellSheetを搭載。数式処理システムも若干強化されている。

メモリマップがTI-89と異なっており、C言語やアセンブリ言語で TI-89向けに書かれたプログラムがそのままでは動かないことがあり、再コンパイルあるいはユーティリティソフトが必要な場合がある。

試験や授業での使用の可否

米国での大学入試(ACT)には持ち込めないが、SAT には持ち込める。

SAT (大学進学適性試験)など、電卓持ち込みが許されている試験ではTI-89も持ち込める。

ACT(American College Testing)では禁止されている。

試験や授業へのTI-89の持ち込みの判断は各学校や各教師の判断による。

他

各国のネット通販サイトで販売されており、日本でもネット通販で購入できる。

後継機Titaniumの外見が気に入らず、TI-89 から Titanium への移行をしたがらないユーザーもいる。

脚注

注釈
  1. ↑ 米国国立博物館(National Museum of American History)の展示解説で、TI‑89 は “compact version of the TI‑92”(TI-92の小型版)として紹介されている。
  2. ↑ 一部の標準化試験(SAT、ACT、APなど)その他多くの試験の「試験中に使える携帯型電卓の条件」には「QWERTYキーボードを備えた電卓は禁止」と明記されていた。これは、コンピュータに近い入力インタフェースを持つ機器が不正行為につながる恐れがあるとされたため。TI-92 系列は QWERTY 配列のキーボード を搭載しており、これが「試験中に使える携帯型電卓の条件」に抵触することが多かったので、TIは TI-92 に近い性能を持ちつつも、電卓形状と "QWERTYではないキー配列"の、より試験で許容されやすい機種として TI-89 を開発・販売した。
  3. ↑ HPが1987年に発売したHP‑28C / HP‑28Sは、代数の記号操作の機能は限定的だった。1990年発売のHP‑48シリーズは、標準ではCASを搭載していなかったが、拡張モジュール(Erable など)を導入すればCAS機能を持たせることが可能で、そうする学生も多かった。だがこれは標準搭載ではなかった。
  4. ↑ 後年、他社でも数式処理システムを搭載したグラフ電卓が発売となった。たとえば カシオが1997年に発売したCFX‑9970G はカシオとして初めて CAS機能を搭載(後続の Algebra FX 系列も搭載)。
  5. ↑ TI-92 や TI-92 Plus、Voyage 200 などの上位機種も同じく Motorola 68000 をベースとした CPU を採用している。
  6. ↑ ハードウェアのバージョンにより異なる
  7. ↑ WindowsでもLinuxでも生成できる。専用のツールチェーン(開発環境) を使う。一般的なCコンパイラやアセンブラ(たとえばGCCやNASMなど)では生成できない。
    • C言語プログラミングには、GCC4TI(旧 TIGCC:TI-GCC)を使う。GCCベースのクロスコンパイラでWindows, Linux 両対応(GUI ツールも一部あり、後述)。公式サイトはhttps://gforge.ticalc.org/gf/project/gcc4ti/
    • アセンブリ・プログラミングには、Motorola 68000 用のクロスアセンブラ A68kを使う。TIGCC / GCC4TI などと連携して使用されることが多い。SPASM / TASMなどTI系に特化したアセンブラもあるが、TI-89用にはA68kの方が一般的。
    • Windows用には統合開発環境のTIGCC IDEもある。GUIで、CとASMのソースコード作成・ビルド・転送まで対応。
    • Linuxではコマンドラインベースの操作が好まれるので、gcc4ti と tilp(転送ソフト)を組み合わせて使うのが一般的。
出典

関連項目

外部リンク