ALn 668

ALn668.1706号機、サンティア駅、2006年
ALn668.1054号機、ラメーツィア・テルメ駅、2016年

イタリア国鉄ALn668気動車は、イタリア国鉄の非電化の地方線用に製作された気動車である。

概要

第二次世界大戦後のイタリアでは鉄道車両が不足しており、また、車種が多いために交換部品の入手難などの保守上の問題があった。そこでイタリア国鉄では、シチリア島の狭軌線の旅客輸送の改善を目的に1950年に導入したRALn60気動車の経験を基に1435mm軌間の標準型気動車を開発することになった。
開発された新しいALn668気動車は座席定員が1等・2等合わせて68人で、多用途性と様々な環境への適応力を備えたものとなっており、28年間に700両以上が導入された。形式称号のAは自走客車、Lは軽量、nは使用燃料の頭文字で、座席定員を示す68の前に6を重複させて重連総括制御が可能であることを表した。形式に続くシリアルナンバーは4桁で、番台区分は12種に及ぶ。

番台区分

ALn668の番台区分は12種となるが、これらは便宜的に第1 - 第3の3世代に分類されている。なお、イタリア国鉄の形式称号規程においては座席定員が同数である総括制御可能なディーゼル動車は機構や性能等の差異に関わらず全て同一形式となるが、ALn668は全番台がプロトタイプのALn668.1401-1403号機をルーツとする同系列のものとなっている一方で、ALn668の第4世代とも位置付けられるALn663は、設計上はALn668の延長線上にあるものの、座席定員が変更となったため別形式となっている。また、制御車のLn664は、Ln664.1400がALn668向けであるのに対し、Ln664.3500は液体式のALn773向けの別形式となっている。

第1世代

ALn668.1400
ALn668.2400
Ln664.1400(Ln68.1400)

第2世代

ALn668.1500
ALn668.1600
ALn668.1700
ALn668.1800
Ln882.1500

(試作機)

ALn668.1999号機

第3世代

ALn668.1900/ALn.668.1000
ALn668.1200
ALn668.3000
ALn668.3100/ALn668.3300

(第4世代)

ALn663

諸元

ALn668形各番台・系列主要諸元
形式ALn668Ln664Ln882
番台 14002400150016001700180019001000120030003100330014001500
機番 1401-14802401-24401501-15751601-16331701-17201801-18551901-19421001-11201201-12603001-30403101-32503301-33401401-14331501-1523
製造両数 804075332085421206040150403323
世代 第1世代第2世代第3世代第1世代第2世代
製造年 1956-631959-641965-671970-711971-721971-731975-761975-791979-801980-811980-831982-831957-591965-66
製造所 FIATBredaFIAT
Breda
FIAT
Breda Pistoiesi
Breda PistoiesiFIATFIAT Savigl
Omeca
FIAT SaviglFIAT
OM
FIAT
車軸配置 (1A)(A1)2'B'(1A)(A1)2'2'
動力方式 ディーゼルエンジンによる機械式
軌間 1435 mm
全長 22110 mm23540 mm17700 mm22110 mm
全幅 2900 mm2878 mm2900 mm
主機搭載数 2基-
形式 203 SD.140.S6H221 H8217.128217.328217.128217.32-
気筒数・配置 水平直列6気筒水平直列6気筒水平直列6気筒水平直列6気筒水平直列6気筒水平直列6気筒水平直列6気筒-
排気量 10.7 l10.2 l12.9 l13.8 l13.8 l13.8 l13.8 l-
定格出力(FS規定) 110 kW100 kW115 kW115 kW147→170 kW120 kW147→170 kW-
定格回転数(FS規定) 1800 rpm1900 rpm1800 rpm1800 rpm1850 rpm1800 rpm1850 rpm-
定格出力(UIC規定) 125 kW136 kW166 kW206 kW166 kW206 kW-
過給器 VTx 150過給器付き自然吸気自然吸気ターボチャージャー自然吸気ターボチャージャー-
変速機クラッチ方式 単板変速機内蔵単板2板単板2板-
変速機方式 機械式5段変速Wilson C 235機械式5段変速-
終減速比 2.672.392.672.392.64-
総括制御可能両数 2両3両2両
(自車含まず)
2両
(自車含まず)
最高運転速度 110 km/h130 km/h110 km/h130 km/h110 km/h110 km/h
台車台車中心間距離 15150 mm15200 mm15150 mm15300 mm10900 mm
台車形式 FIAT製Breda製FIAT製7170系FIAT製
台車軸距 2300 mm2500 mm2300 mm2450 mm2300 mm
車輪径 920 mm920 mm920 mm920 mm920 mm
重量自重 32.0 t34.0 t36.0 t35.0 t37.0 t20 t
動輪周上重量 17.2 t18.0 t17.2 t18.0 t18.4 t18.0 t19.0 t19.3 t-
定員座席(1等) 8名12名8名-
座席(2等) 60名56名60名64名82名
乗降口台数 1箇所2箇所1箇所1箇所
備考 ALn668.1439 - 1440号機は車軸配置(1A)(A1)で製造、1969年に2'Bo'に改造低出力型勾配線区用の低歯車比・高牽引力型Ln68.1401 - 1404号車は付随車として1957年製造、1964年に制御車Ln664.1401 - 1404に改造
  1. ↑ Ln664.1433号車はLn664.3500のLn664.3519号車を改造の上で編入したもの
  2. ↑ イタリア国鉄では冷却能力や実際の使用条件を考慮してUICの定める条件での出力より制限した出力に抑えている
  3. 1 2 当初147 kWに設定されていたが1980-81年の試験結果に基づき順次170 kWに調整、3181号機/3301号機以降は当初より170 kWで製造
  4. 1 2 減速比:1速 5.37、2速 3.40、3速 2.01、4速 1.27、5速 1.00
  5. ↑ 機械式4段変速
  6. ↑ FIAT製5段変速機装備・総括制御2両可能の機種用、後にFIAT製5段変速機装備・総括制御3両可能の機種の編成の中間に入れた4両編成が可能となる
  7. ↑ Wilson式4段変速機装備のALn668.1500用
  8. ↑ 製造時120 km/h、その後130 km/hに向上とする文献もある
  9. ↑ ALn668.1401 - 1403号機は910 mm
  10. ↑ Ln664.1401 - 1404号車は910 mm
  11. ↑ Ln68.1400形は68名

仕様

車体

走行機器

改造

運用

脚注

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注釈

  1. ↑ ガソリン機関の機体の形式称号は”b”、ガス機関の機体は"g"で、命名規則制定当時のイタリアではディーゼル燃料の名称に軽油類の総称であるナフサ(nafta)を使用し、軽油(gasolio)、ガソリン(Benzina)の名称を使用するようになった現在でも表記はそのままである
  2. ↑ Raggruppamento Ansald, Genova Cornigliano
  3. ↑ 例えばALn556ではFIAT製のALn556.1200とBreda製のALn556.2200は別設計の機体であり、当時は1000番台がFIAT製、2000番台がBreda製、3000番台がOM製、4000番台がAnsald 製と大まかに分類されていた
  4. ↑ Fabbrica Automobili Isotta Fraschini e Motori Breda S.p.A., Milano、イソッタ・フラスキーニ デルタなどを製造していたエンジンメーカーのイソッタ・フラスキーニとBredaのエンジン製造部門が1955年に統合したもの
  5. ↑ Industrial Vehicles Corporation, S.p.A. Torino、1975年にFIAT傘下の5つの商用車部門のブランドを統合したもの
  6. ↑ 後に、1975年に設立されたFIATの商用車部門のIVECOに生産が移管されている
  7. ↑ Ferrovia Suzzara-Ferrara
  8. ↑ Westinghouse Electric & Manufacturing Company, Pittsburgh
  9. ↑ Maschinenfabrik Oerlikon, Zürich
  10. ↑ Ferrovia Terni-Sulmona、全長164 km、最急勾配35 パーミル、標高128 - 989 m
  11. ↑ FIAT, Divisione Materiale Ferroviario、FIAT(Fabbrica Italiana Automobili Torino)の鉄道車両部門
  12. ↑ Breda Elettoromeccanica & Locomotive S.p.A., Milano、1974年にBreda Construzioni Ferroviarie S.p.A.に社名変更
  13. ↑ Ferroviaria Breda Pistoiesi S.p.A., Pistoia、Bredaのピストイア工場が第二次世界大戦後に半公営企業のOfficine Meccaniche Ferroviarie Pistoiesi(OMFP)となり、その後1968年に再度Breda傘下となったもので、1972年にBreda Elettoromeccanica & Locomotive S.p.A.に統合された
  14. ↑ FIAT Ferroviaria Savigliano S.p.A., Savigliano/Torino、半国営企業であったSocietà Nazionale delle Officine di Savigliano(SNOS)のサヴィリアーノ工場が1973年にFIAT傘下となったもので、FIATの鉄道車両部門が順次同社に統合され、1988年にFIAT Ferroviaria S.p.A.に社名変更される
  15. ↑ Officine  Meccaniche Calabresi S.p.A., Reggio Calabrita(O.ME.CA)
  16. ↑ Officine Meccaniche S.p.A., Milano、1975年にIveco傘下となる
  17. ↑ 1930年代製造の初期の近郊用電車であるE.623およびE.624や、Ln664.1400と類似の車体を持つLn664.3500といった事例があるほか、ALn773およびALn873は後年床下カバーの一部を小さいものに変更している
  18. ↑ isabella、オーストリア大公妃イサベル・クララ・エウヘニアに由来するという説がある
  19. ↑ giallo coloniale、アメリカのコロニアル様式の建物にちなんだ黄色
  20. ↑ verde lichene、「地衣類の緑」の意
  21. ↑ verde bottiglia、「ワインボトルの緑」の意
  22. ↑ coloritura unificata
  23. ↑ beige pergamena、羊皮紙のベージュ
  24. ↑ Brown, Boveri & Cie, Baden
  25. ↑ Holset Engineering、1973年にCummins(Cummins Engine Company)に買収されてCummins Turbo Technologiesとなる
  26. ↑ Deutz AG, Köln
  27. ↑ ALn668.1539, 1558, 1563号機
  28. ↑ ALn668.1548号機
  29. ↑ ZF Friedrichshafen AG, Friedrichshafen
  30. ↑ Fondazione FS Italiane(FFSI)、イタリア鉄道に関する歴史的遺産を管理する財団
  31. ↑ Snam S.p.A.(Società Nazionale Metanodotti)
  32. ↑ Massachusetts Bay Transportation Authority(MBTA)
  33. ↑ Chicago Transit Authority(CTA)
  34. ↑ Ferrocarril Chihuahua al Pacífico
  35. ↑ Red Nacional de los Ferrocarriles Españoles(RENFE)
  36. ↑ Ferrovia Cuneo-Limone-Ventimiglia
  37. ↑ Rete Ferroviaria Italiana S.p.A., Roma
  38. ↑ Ferrovia Nord Milano(FNM)
  39. ↑ Trenord S.r.i., Milano、2011年に設立されたイタリア国鉄とFNMの共同出資会社
  40. ↑ Ferrovie del Sud Est(FSE)、2016年にイタリア国鉄(トレニタリア)の子会社となっている
  41. ↑ Sistemi Territoriali(ST)、ヴェネト州で陸運・内陸水運の運営を行う会社、鉄道部門は旧FV(Ferrovie Venete)の鉄道路線の運営を引継いでいる
  42. ↑ European Rail Traffic Management System
  43. ↑ Treno D.O.C., Palermo
  44. 1 2 3 Treno D.O.C.担当機
  45. ↑ Union Internationale des Chemins de fer
  46. ↑ European Vehicle Number
  47. ↑ "95"は気動車、"83"はイタリアの国番号を表す

出典

参考文献

書籍

関連項目