論理リンク制御

論理リンク制御(ろんりリンクせいぎょ、Logical Link Control、以下LLCと略す)は、OSI参照モデルのデータリンク層を2つにわけた上のほうの副層で、IEEE 802.2 によって最初に定められた。一般にデータリンク層はLLC副層・MAC副層の形で上下にわけられ、このうち LLCはイーサネット・トークンリング・無線LANといったさまざまな物理メディアを統一する役を負っている。

歴史

1989年に標準化されたIEEE 802.2 LLCは、IEEE 802.3 イーサネット、IEEE 802.4 トークンバス、IEEE 802.5 トークンリング、IEEE 802.11 無線LANなどの各MAC副層と組み合わせるように設計された。1998年まで追加拡張され、2011年に廃止された。その内容は ISO/IEC 8802-2 として引き継がれているが、こちらも更新停止扱いとなっている。

当初の設計では、主に

といった動作をIEEE 802.2内の機能のみで規定していたが、2014年以降はLLC層はMAC副層とネットワーク層(レイヤ3)の間に生じるすべての関連機能を含むようにIEEE 802自体が改定されている。

LLCでカプセル化されるプロトコルはIEEE 802で定められたものの他、FDDIのようなIEEE 802外のプロトコルも扱えるよう考慮された。また、IEEE 802外のプロトコルの中にもMAC層とLLC層を分けて考えることができるものがある。

2026年現在では、LLC副層では以下の機能を提供している。

また、カプセル化用途では、以下のプロトコルで主に用いられる。

イーサネットではDIX仕様が主流となっているためほぼLLCは使われておらず、それ以外のMAC副層はプロトコル自体が廃れている。

LLCフレーム書式

LLCフレームの書式を以下に示す。

802.2 LLC ヘッダ ペイロード
LSAP (宛先)LSAP (送信元)制御
1バイト 1バイト 1バイト
0x03
任意バイト

LSAP (Link Service Access Points) 欄は受け渡しする上位層プロトコルを指定するもので、宛先用と送信元用で2つ用意されていたが、現在ではほとんどの場合で同じ値が入る。主なものとして、BPDU用に0x42、IS-IS用に0xFEが規定されている。

拡張書式

SNAP (Subnetwork Access Protocol)は、LLCフレームに特にEtherTypeを格納する欄を設け、プロトコルの識別がさらにできるように拡張した書式。LSAP値が2つとも0xAAの場合、LLCヘッダの後に以下のようなSNAPヘッダを置くことができ、この中でプロトコルID欄にEtherType値を格納できる。

802.2 LLC ヘッダ SNAP拡張 ペイロード
LSAPLSAP制御OUIプロトコルID
1バイト
AA
1バイト
AA
1バイト
03
3バイト 2バイト 任意バイト

RFC 1042ではIPv4通信のカプセル化にSNAPフレームで EtherType 0x0800 使うように規定しており、FDDI・トークンリング・無線LANなどではこちらの実装が採られている。

初期の仕様

「LSAP」欄では、宛先と送信元のそれぞれにおいて、奇数と偶数の値が異なる用途を持つように規定されている。

LSAPタイプ用途
宛先 偶数: ユニキャスト (個別アドレス)
奇数: マルチキャスト (グループアドレス)
送信元 偶数: 要求パケット
奇数: 応答パケット

また「制御」欄では、当初HDLCの仕様を元にして以下の3つの動作モードをサポートしていた。

種類制御欄の書式用途・動作
U-フォーマット
(Unnumbered)
1バイト
(下位2ビットが0b11)
コネクションレス型通信用途。最も頻繁に使用されたもので、現在ではこのモードのみをサポートする。
I-フォーマット
(Information transfer)
2バイト
(1バイト目の下位ビットが0)
コネクション型通信用途。制御バイトにシーケンス番号を含む。
S-フォーマット
(Supervisory)
2バイト
(1バイト目の下位2ビットが0b01)
LLC層での監視機能用。

LSAP一覧

2026年2月現在、IEEE 802によって予約済みのLSAPの値を下表に示す。

LSAP管理組織規格用途
00ISO/IEC JTC 1/SC6ISO/IEC 8802-2Nullアドレス
02ANSIIEEE 802.1bLLC副層管理
06ANSIRFC 791ARPANET内のIPv4
0AANSIIEEE 802.10BSecure Data Exchange プロトコル
0EIECIEC 955:1989Proway C (Process Data Highway, Type C)のネットワーク管理
42ISO/IEC JTC 1/SC6ISO/IEC 10038:1993スパニングツリープロトコル
4EISOISO 9506:1990 (旧 EIA RS-511)Manufacturing Message Service
7EISO/IEC JTC 1/SC6ISO/IEC 8208:1995X.25のDTE拡張
82ASHRAEANSI/ASHRAE 135-1995BACnet
8EIECIEC 955:1989Proway C (Process Data Highway, Type C)の端末保守用
A6ISO/IEC JTC 1/SC6ISO/IEC 8802-2Route Determination Entity
AAANSIIEEE 802-1990SNAP
E6IEC TC13IEC62056-46電力計測のHDLC通信
FEISO/IEC JTC 1/SC6ISO/IEC TR 9577:1993ネットワーク層汎用
FFISO/IEC JTC 1/SC6ISO/IEC 8802-2ブロードキャストアドレス

なお、4の倍数値(0x00を除く)は予約なしで使用可能なものとなっている。かつてはさまざまなベンダや組織によって利用され、主な用途に以下のものがあった。

脚注

  1. ↑ “IEEE 802.2 Logical Link Control (LLC)” (2011年7月25日). 2026年2月11日閲覧。
  2. 1 2 IEEE 802-2014, Section 5.2.2 "LLC sublayer"
  3. ↑ RFC 1390
  4. ↑ (PDF) ITU-T G.9960: Unified high-speed wire-line based home networking transceivers - Foundation. (2009-10). p. 24
  5. ↑ IEEE 802.11-2020, Annex M "EPD and LPD headers and the integration function"
  6. 1 2 IEEE 802.1Q-2022, Section 8.13.3 "Use of LLC by Spanning Tree Protocol Entities"
  7. ↑ IEEE 802-2024, Section 9.5.1.1 "Type 2 PIF encoding of an L-Type protocol identifier"
  8. ↑ IEEE 802.1Q-2022, Table 8-15. "Standard LLC address assignment"
  9. ↑ IEEE 802-2024, Section 9.5.1.2 "Type 2 PIF encoding of an E-Type protocol identifier"
  10. ↑ “Current Assignment of Individual LSAP Address Values”. IEEE Standards Association (2024年5月1日). 2026年2月11日閲覧。
  11. ↑ José Morales Barroso, Ph.D. (2024年5月1日). “LLC-802.2 Based Congestion Management”. 2026年2月11日閲覧。

関連項目