| NGC 1365 | ||
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ビクター・M・ブランコ望遠鏡のダークエネルギーカメラ (DECam) が取得したデータをもとに作成された画像。 | ||
| 星座 | ろ座 | |
| 見かけの等級 (mv) | 10.32 | |
| 視直径 | 11.2' × 6.2' | |
| 分類 | (R')SBb(s)b | |
| 位置 元期:J2000.0 | ||
| 赤経 (RA, α) | 03h 33m 36.4071s | |
| 赤緯 (Dec, δ) | −36° 08′ 24.669″ | |
| 赤方偏移 | 0.005457 | |
| 視線速度 (Rv) | 1636 km/s | |
| 距離 | 6,070万光年 (18.6 Mpc) | |
| 物理的性質 | ||
| 直径 | 24万7,000光年 (75.7 kpc) | |
| 他のカタログでの名称 | ||
| PGC 13179、ESO 358-17、MCG-06-08-026、FCC 121、VV 825、2MASS J03333638-3608257、PKS 0331-363、2E 794 | ||
| ■Template (■ノート ■解説) ■Project | ||
NGC 1365は、地球からろ座の方向に約6,000万光年離れた位置にある棒渦巻銀河である。明瞭な棒状構造を持つため、Great Barred Spiral Galaxy とも呼ばれる。また、スターバースト銀河とセイファート銀河の両方に分類される銀河であり、中心には超大質量ブラックホールが存在すると考えられている。
NGC 1365は、天文学者のジェームズ・ダンロップによって1826年9月2日に発見された。彼は、オーストラリアのパラマタで自作の反射望遠鏡を用いて発見し、「かなり大きく、かつ淡く丸い星雲。中心に向かうにつれて徐々に濃くなるが、外縁部はとても淡い。」と記した。1837年11月28日には、天文学者のジョン・ハーシェルによって観測された。彼は、滞在先のケープ植民地で観測し、「とても素晴らしい星雲。M27とM51の中間的な性質を持つ。中心部はとても明るく、やや広がっている。」と記した。その後、ジョン・ドライヤーによってニュージェネラルカタログに加えられた。1999年には、棒状構造やガス運動、活動銀河核などについてまとめた総説論文が天文学者のP・O・リンドブラッドによって発表された。近年では、スターバースト領域周辺の分子ガスや、スペクトルに変動が見られる活動銀河核に関する研究が行われている。また、多波長かつ高解像度で近傍の銀河を観測することで、星形成に対する理解を深めることを目的とした Physics at High Angular resolution in Nearby GalaxieS (PHANGS) と呼ばれるプロジェクトで観測対象となった。このプロジェクトには、ハッブル宇宙望遠鏡やジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡などが関わっている。
ドゥ・ボークルール分類では SB(s)b に分類される棒渦巻銀河であり、東西に伸びる棒状構造とそこから南北に伸びる渦状腕は全体として「Z」の形を連想させる。渦状腕は2つの主要な腕とそれに先行する2つの未発達の腕からなる。銀河円盤は天球面に対して約55度傾いており、さらに棒状構造の位置角は銀河の短軸から約35度ずれている。

美しい棒渦巻銀河ではあるものの、表面輝度が低いため、郊外からの観測は困難である。口径10 cmの望遠鏡を用いて観測すると、低倍率では中心部が明るく輝くレンズ状銀河のように見えるが、棒状構造と渦状腕の区別は容易ではない。中心から北西に1.3分離れた位置には、超新星と見間違える可能性のある14等星が存在する。楕円銀河のNGC 1399、レンズ状銀河のNGC 1316と並び、ろ座銀河団で最も明るい銀河の一つであり、付近には、NGC 1366、NGC 1379、NGC 1387、NGC 1389、NGC 1399などの銀河や、6等星のろ座Χ2星やろ座Χ1星が分布する。

棒状構造の長さは約3分(5 - 6万光年に相当)である。2つのダストレーンを伴っており、この構造を介してガスが銀河の中心部へ供給されることで、後述するスターバーストが促進されている。
NGC 1365は、棒状構造の内側に小さな棒状構造を持つ、「二重の棒」渦巻銀河である。棒渦巻銀河全体の約3分の1にこのような構造が見られることから、小さな棒状構造は長期間存続する構造と考えられている。NGC 1365の小さな棒状構造は、赤外線画像上でより鮮明に現れる。二重の棒状構造の誕生には、恒星軌道や密度波、銀河円盤の回転などに起因する力学的な不安定性が関与した可能性が指摘されている。また、小さな棒状構造は大きな棒状構造とは独立して回転している。
渦状腕では星形成が起きており、若く青みを帯びた恒星の集まり(星団)とHII領域(電離水素領域)が分布する一方、棒状構造は主に古く黄色みを帯びた恒星で占められている。ただし、ダストレーンの進行方向側(特に東側の領域)や銀河中心部など、棒状構造の一部では渦状腕と同じく星形成が起きている。銀河全体の星形成率は年間で 16.9 M☉ と推定されており、20 Mpc (約6,500万光年) 以内では最も星形成率が高い銀河の一つである。この星形成率には、銀河中心部での星形成、より具体的には銀河核の周囲に存在するリング状構造(Circumnuclear ring、CNR)でのスターバーストが大きく寄与している。

CNRは珍しい構造ではなく、明瞭な棒状構造を持つ棒渦巻銀河では一般的に見られる。NGC 1365以外では、NGC 1097、NGC 1512、NGC 1672、NGC 4314などがCNRを有する。CNRはガスの貯蔵庫として機能し、銀河中心へ向かうガスの流れを遅らせている。CNRがなぜ生じるのか、その物理的なメカニズムについては諸説あるが、NGC 1365の場合、ダストレーンを介して流れ込んだガスが内部リンドブラッド共鳴付近に蓄積することで生じたと考えられている。
銀河核の周囲でスターバーストが起きていることは、可視光で明るく輝く「ホットスポット」が存在することを根拠に、1950年代から提唱されていた。その後、ハッブル宇宙望遠鏡が撮影した画像から、楕円形のCNRを構成する多数のコンパクトで若い星団(超星団)の存在が明らかになった。最も明るい星団は、天の川銀河で最も明るい球状星団の実に300倍の明るさを誇る。CNRの半径(銀河中心からの距離)は約2 kpc (6,500光年) であり、一部はダストレーンによって遮蔽されている。2023年の研究では、ダストに埋もれた星団が新たに特定され、既知の星団と合わせて、年齢が1000万年以下で、質量が 106 M☉ 以上の星団が37個存在することが明らかになった。NGC 1365は、赤外線の光度が 1011 L☉ を超える高光度赤外線銀河であり、放射の大部分はCNRにおけるスターバーストに起因している。
NGC 1365では4つの超新星(SN 1957C、SN 1983V、SN 2001du、SN 2012fr)が発見されている。SN 2001duは、アマチュア天文家のロバート・エヴァンズによって2001年8月24日に発見された。発見時の実視等級は14.0であり、バルマー系列のうち特にHβ線にP Cyg 型プロファイルが見られ、光度曲線において光度が一定に保たれる期間(プラトー)が約100日間持続したことから、II-P型超新星に分類された。SN 2012frは、ラ・シヤ天文台のTAROTが取得した画像を精査していた天文学者のアラン・クロッツによって、2012年10月27日に発見された。発見時の実視等級は15.6であり、Ia型超新星に分類された。