

3D XPoint(スリー=ディー・クロスポイント と発音する)はインテルとマイクロンテクノロジーが共同開発した、現在は製造中止・販売終了となっている不揮発性メモリ(NVM)技術。2015年7月に発表され、2017年4月から2022年7月にかけて「(インテル)Optane」というブランド名で一般市場に投入された。マイクロンは QuantX (クアンテックス)と別のブランド名を冠していた。ビットの記録は、オボニック閾値スイッチ(英語: OTS: Ovonic Threshold Switch)と呼ばれる技術を用いて、積層可能な交差格子状データアクセス・アレイ(配列)と組み合わせた、バルク抵抗の変化を利用する。発売当初の価格は、Dynamic Random Access Memory(DRAM)よりは安かったが、フラッシュメモリよりは高かった。
インテルの主張によれば同技術を用いた製品をNANDフラッシュと比較した場合、レイテンシは1/10に、書き込み寿命は3倍に、書き込み速度は4倍に、読み込み速度は3倍に改善され、消費電力は30%に軽減された。
不揮発性メモリである3D XPointは、現在入手可能な他のRAMやNVRAMとは一線を画す数多くの特徴を備えていた。最初の世代の3D XPointは特に大容量でも高速でもなかったが、3D XPointは書き込みレイテンシが低い、2019年時点で入手可能な最速クラスのSSDを製造するために採用された。
メモリは生まれつき高速かつバイト単位でアドレス指定が可能であったため、従来のSSDの性能向上に用いられたリード=モディファイ=ライトやキャッシングのようなテクニックは、高い性能を得るのに必要でなくなった。
加えて、Cascade Lakeなどのチップセットは、キャッシュ用またはディスク加速用のディスクとして使用でき、またDIMMパッケージの不揮発性RAM(NVRAM)や永続メモリ (en:persistent memory)として使用できるほど高速な、3D XPointへのサポートを内蔵するように設計された[要出典]。
3D XPointの開発は2012年頃に開始された。以前にもインテルとマイクロンは他の不揮発性相変化メモリ(PCM)技術を開発しており; マイクロンのマーク・ダーカンは、3D XPointアーキテクチャは従来のPCM製品とは異なり、メモリセルのセレクタ(選択素子)部と記憶素子部の双方に(GSTのような従来のPCM材料よりも高速かつ安定性に優れる)カルコゲン化物材料を使用していると述べた。しかし今日では、それはReRAMのサブセット(一種)であると考えられている。特許情報によれば、カルコゲナイド材料として様々な材料を用いることが可能である。
2015年現在、両社とも同技術の全容を公開していないが、NANDフラッシュとは異なり「電子[の蓄積]によるものではない」としている。3D XPointは電気抵抗を利用し、ビット単位でのアドレス指定が可能であると言及されている。クロスバーが開発中の抵抗変化型メモリとの類似性が指摘されているがしかし、3D XPointはストレージに異なる物理法則を利用している。具体的には、メモリセル内のセレクタとしてトランジスタが閾値スイッチに置き換えられた。3D XPointの開発者らは本技術がバルク材料の抵抗値変化に基づいていることを示した。インテルのCEOであるブライアン・クルザニッチは、XPointの材料のスイッチング動作に関する度重なる質問に対し、「バルク材料の特性」によるものであると回答した。Intelは、3D XPointに相変化やメモリスタ技術は使用されていないと述べているが、もっとも、これについては独立したレビュアーから異議が唱えられている。
クリス・メラーは「3D XPointと同等の性能と寿命を持つ、抵抗変化型あるいは相変化型のメモリのサンプルを作成したサプライヤーはないようだ」とThe Registerの記事で書いている。
3D XPointの各記憶素子はトランジスタを使用しないため、記録密度はDRAMと比較し4倍程度になるとみられる。
リバースエンジニアリング企業であるTechInsightsによると、3D XPointはヒ素をドープ(=添加)したセレン=ゲルマニウム=シリコンの三元系相変化材料からなるオボニック閾値スイッチ(OTS)によってアクセスが行われるデータストレージ材料として、低シリコン含有量ゲルマニウム=アンチモン=テルル(GST)が使われていた。
電荷蓄積以外の原理に基づくスタンドアロン型メモリとして最も広く生産された一方、ReRAMや磁気抵抗メモリ(MRAM)といった他の代替メモリは、これまでのところ主に組み込みプラットフォーム向けに広く開発されてきた。
2018年5月30日、Intelが「Optane DC」不揮発性メモリを発表した。
2023年にMicron Technologyが第2世代の「3D XPoint」メモリ技術を国際学会「IEDM 2023」で発表した。
2015年半ば、Intelは3D XPoint技術を採用したストレージ製品向けにOptaneブランドを発表した。マイクロン(QuantXブランドを使用)は、このメモリの販売価格をDRAM(ダイナミック・ランダム・アクセス・メモリ)の約半額、フラッシュメモリの4~5倍と予測していた。容量当たりの見込み単価はNANDフラッシュよりも高く、DRAMよりも安いことが期待されていた[誰によって?]が、実際の製品価格へと反映されるかどうかは不明である。当初、(IntelとMicronのジョイントベンチャー(=合弁会社)である)IMフラッシュ・テクノロジーズ LLCが運営するユタ州リーハイのウェハ製造工場において、2015年に128 ギガビット・チップの少量生産が行われた。これらのチップは64 ギガビットのプレーンを2層積層した構造となっている。2016年初頭の時点では、同チップの量産は、12~18ヶ月以内に行われると見込まれていた。
2016年初頭、IM Flashは、第1世代のSSDが9マイクロ秒のレイテンシで95,000 IOPSスループットを達成したと発表した。この低レイテンシはランダム操作における低キュー深度でのIOPSを大幅に向上させる。インテル・デベロッパー・フォーラム 2016において、Intelは140 GBのPCI Express (PCIe) 開発用ボードを公開し、PCIe接続のNANDフラッシュSSDと比較してベンチマーク性能が2.4~3倍に向上することを実演した。2017年3月19日、Intelは同社初の製品(2017年後半に発売予定のPCIeカード)を発表した 。
当初こそ反応が鈍かったものの、(特にIntelのOptaneシリーズのような形で)3D XPointは、Storage Review などのレビュアーが、2018年8月低レイテンシのワークロードにおいて、3D XPointが読み取り・書き込みの双方で(4K持続)50万IOPS、および3~15マイクロ秒のレイテンシを達成し、現時点で「これに匹敵するものは『他に』存在しない」と結論付けた一方、Tom's Hardwareは2017年12月Optane 900pについて、それまでの最高性能のコンシューマー向けデバイスの2倍の速度を誇り、実際に目にしなければ信じられないような「伝説上の生き物」のようだと評したことで、その特性が活きるタスクにおいて高く評価され、広く推奨されるようになる。
ServeTheHomeは2017年、読み取り・書き込み・混合アクセスの各テストにおいて、Optane SSDの性能は、それ以前のIntel製データセンター向けSSDの最上位モデルであったP3700 NVMeと比べて一貫して約2.5倍高速であったと結論付けた。
またAnandTechは、コンシューマー向けOptane SSDの大容量データ転送時の性能は、非3D XPointの高性能SSDと同等であるものの、エンタープライズ向けOptane SSDの大容量データ転送性能の前では、そのいずれもが「圧倒的な差をつけられた」と指摘している。
2021年にMicron社は、それに引き続き2022年にintel社もこの記述のメモリ製品からの撤退を表明している。
2021年3月16日、マイクロンは需要不足を理由に、Compute Express Link (CXL)ベースの製品開発に注力するため、3D XPointの開発を中止すると発表した。リーハイ(英語: Lehi)工場は十分に活用されることなく、テキサス・インスツルメンツに9億米ドルで売却された。
Intelは当時、Intel Optane製品の供給能力に影響はないと回答していた。 しかし、同社は2021年1月当時すでにOptane製品のコンシューマー向けラインナップの販売を終了していた。 2022年7月、IntelはOptane事業の縮小を発表し、事実上3D XPointの開発を終了した。
Intelは、Optane SSD、Optane Memory、およびそれらを組み合わせたデバイス("Optane Memory with Solid-State Storage")を製造している。(一方)MicronはQuantX X100のような、アド-インカード形式のSSDのみを製造している。
ほとんどのOptaneデバイスは、コンピュータに対してNVMe SSDとして認識される。接続形態としては、M.2、U.2、またはPCI Expressアド-インカード形状のいずれかが採用される。これらのOptaneを(いずれの形状であれ)通常のSSDとして使用する場合、互換性に関する要件は従来のSSDと同様である。つまり、互換性はハードウェア、オペレーティングシステム、およびドライバがNVMeや同種のSSDをサポートしているかどうか(ハードウェアへの物理的な接続が可能であること、オペレーティングシステム、BIOS/UEFI、およびドライバがNVMeをサポートしていること、そして十分な冷却が確保されていること)に依存する。Optane SSDは、したがって(Intel製以外のチップセットやCPUを含め)新旧を問わず幅広いチップセットやCPUと互換性がある。
Intelは通常の「Optane SSD」とは別に、同社のOptaneデバイスの一部を「Intel Optane Memory」として販売している。これらもM.2経由で接続され、SSDとして認識させることが可能である。 しかし、対応するIntel製マザーボード(チップセットおよびBIOS)とCPUの組み合わせにおいては、低速なストレージデバイスのキャッシュとして利用することもできる。
Intelによると、Optane MemoryはOptane SSDよりも低レイテンシのモードで動作する。キャッシュ処理は、別のドライブ上のデータのうち頻繁に使用される部分を自動的に選択してキャッシュに格納する、Rapid Storage Technologyドライバの拡張機能によって行われる。
(初期のOptaneブランドSSDの中には、Optaneキャッシュを搭載した通常のNANDデバイスも存在する。)
Intelは、「Intel Memory Drive Technology(MDT)」に対応した一部の「Optane SSD」を販売していた。これらのデバイスは一般的なPCIeインターフェース(M.2、U.2、またはPCIe AIC)を使用するが、(SSDとして認識されるだけでなく)OSとの連携によりメインメモリとしても機能させることが可能である。メモリとして使用する場合、これらは常に揮発性メモリと同様に扱われるが; その主な利点はコスト面にある。Intelの構成ガイドによれば、システムの物理メモリ容量の最大8倍まで増設しても良好なパフォーマンスが期待できるとされている。なお初期のOptane SSDであっても、MDTソフトウェアのライセンスを別途購入することで、同様の用途に使用することが可能である。
さらに特殊なものとして、通常のDIMMスロットに装着してNVDIMMとして機能する「Optane Persistent Memory」モジュール(2019年)や、Data Center Persistent Memory Modules(DCPMM)がある。対応するマザーボードでは、これらは通常のメモリと同様に、CPUのメモリコントローラに直接接続される。これらは揮発性メモリとして使用することも、あるいは非常に高速なブロックデバイスのように動作する「永続メモリ(Persistent Memory)」モードで使用することも可能である。1つのモジュールで最大512 GBの容量が提供される。SDRAMと比較するとレイテンシは1桁(10倍程度)大きいものの、レイテンシの差が2桁(100倍程度)に及ぶ他のOptane製品群と比べれば、その差は抑えられている。
Optane SSDをマザーボードやCPUが直接、追加メモリやディスクキャッシュとして利用することはできないけれども、以前からオペレーティングシステムにはディスクをメインメモリの拡張(スワップファイル)として利用したり、低速なディスクのキャッシュとして高速なディスクを利用したりする仕組み(階層型ストレージ)は備わっている。こうしたソフトウェアによる仕組みは一般的にチップセットのファームウェアに組み込まれた仕組みに比べて性能面で劣るが、Optaneの持つ性能特性により通常のSSDよりも適した選択肢となっている。
ACM ACCESS に掲載された2023年の論文によると、4 GBのRAMと16 GBのOptane SSDスワップを組み合わせたシステムは、NAND SSD構成の同等システムよりも高い性能を示した。Optane SSDスワップにおけるボトルネックはLinuxのブロック層にあるが、zswap(スワップ用のRAM内圧縮キャッシュ)を使用することで軽減させられる。また、このシステムは8 GBのRAMのうち4 GBを、zramで圧縮して使用するシステムよりも高い性能を発揮した。