| ジャンル | ステルスゲーム |
|---|---|
| 対応機種 | 未発表 |
| 開発元 | コジマプロダクション |
| 発売元 | Xbox Game Studios |
| プロデューサー | 小島秀夫 |
| ディレクター | 小島秀夫 |
| デザイナー | 小島秀夫 |
| シナリオ | 小島秀夫 |
| 美術 | 新川洋司 |
| 発売日 | 未発表 |
| ゲームエンジン | 未発表 |
『PHYSINT』(フィジント)は、コジマプロダクションが開発し、Xbox Game Studiosより発売予定のビデオゲームである。
小島秀夫が監督・プロデュース・ゲームデザイン・脚本などを務める。キャラクター&メカニカルデザインは新川洋司が務める。
コジマプロダクションにとって3作目のオリジナルIPであり、小島秀夫のゲームクリエイター40年にわたるキャリアの集大成と位置付けられている。
キャッチコピーは「Here Comes the Feeling」「新たな冷戦が始まる」。
ジャンルは「新世代のアクション・エスピオナージ・ゲーム」と銘打たれている。「エスピオナージ」とはスパイ活動や諜報を意味しており、小島がこのジャンルを手掛けるのは2015年に発売された『メタルギアソリッドV』以来となる。
本作は『DEATH STRANDING』シリーズに続き、ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)とのサポートのもとで制作されていたが、2026年6月中旬、SIEは本プロジェクトをキャンセルする旨をコジマプロダクションに通達した。2026年9月10日、コジマプロダクションは新たにXboxとパートナー契約を締結し、制作を継続することを発表した。
小島秀夫はコジマプロダクション設立後、「新しいことに挑戦する」という理念を掲げ、既存のジャンルにとらわれない新規IPの創出に注力していた。2019年には『DEATH STRANDING』を発売し、独立したゲームクリエイターとして異例の成功を収めた。
本作『PHYSINT』のプロジェクトが立ち上がる直接的な契機となったのは、その後の小島自身の個人的な体験であった。小島は、自身の家系に早死の傾向があったことから寿命への意識はあったものの、新型コロナウイルスのパンデミック下であった2020年に大病を患い手術を経験したことで、人生の有限性を強く再認識することとなった。「制作はもう続けられないかもしれない」と感じるほど心身ともに衰弱し、遺書と共に企画案の詰まったUSBメモリを秘書に託すほどの状態であったという。
この経験を経て、小島は今後の創作について深く思い悩むことになる。「残された時間でどんなゲームを何作作るべきか?」また以前から多数のオファーがあった「映画制作の道へ進むべきか?」という葛藤もあった。2023年5月、この迷いについて友人の映画監督ギレルモ・デル・トロに相談したところ、「君が創っているものは唯一無二の“映画”だ。今のままの物創りを続けるべきだ」と強く後押しされた。この助言を受けた小島は、ひとまずゲーム制作を継続する決断を下した。
当時のコジマプロダクションでは『DEATH STRANDING 2: ON THE BEACH』と『OD』の開発が進められていた。同社は独立系スタジオであり、事業を存続するためには、将来の新作を企画し、パブリッシャーに提案していく必要があった。小島によれば『OD』が挑戦的な作品になる予定だったことから、次作ではさらに過激な作品に挑戦することも考えていた。一方、インターネット上では「また『メタルギア』シリーズを作ってください」という声も多数寄せられていた。しかし、小島にとって同シリーズは過去の作品であり、新たな作品作りを優先したいと考えていたため、当初はあまり興味を持てなかったという。もっとも、小島は自身に残された時間が限られていることも強く意識していた。そうした中で、今後制作する作品について改めて検討した小島は、『メタルギア』シリーズの知的財産権をコナミが保有していることも踏まえ、同シリーズではなく、独自の世界観を持つ新たなアクション・エスピオナージ・ゲームを新規IPとして構想するに至った。
小島は自身のラジオ番組において当時の心境を、「本当は全く別のモノを企画していて、それをやりたかったが、毎日のように『メタルギア...メタルギア...(を作って欲しいというファンの声があった)。』コロナ禍で大病を経験したので、人生が残り10年と考えた時、そこまで望まれるのであれば(再び諜報アクションゲームを作ろうと思った)。」と回顧している。なお、本作が『メタルギア』シリーズとは異なる作品であることも強く示唆している。「メタルギアは作りません」と明言したほか、「(既存のジャンルの中で)新しいことをします」「『メタルギア』だと思ってやると”ちゃうやないか”と絶対言う」といった趣旨の発言もしており、あくまで独立した新規IPであることを強調している。
2026年6月、ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)はコジマプロダクションに対し、『PHYSINT』への資金提供を継続しない方針を伝えた。小島秀夫によれば、SIEからZoomによる協議を求められた時点では、その内容を知らされておらず、ニューヨークでのイベントやロサンゼルスでの仕事を終えて帰国した後、コジマプロダクション代表の平野真二、タレント開発責任者の齊藤昭義とともに協議に参加した。SIE側ではすでに『PHYSINT』への資金提供を終了する方針が検討・決定されていたとみられるが、コジマプロダクション側には事前にその決定が知らされておらず、6月のZoom会議で初めて、今後の開発資金を提供できないとの最終通告を受けたという。
小島は、告げられた内容をすぐには理解できなかったため、「今、なんと言いましたか?」と聞き返したと述べている。SIEから具体的な理由について説明はなく、同じ内容を繰り返し伝えられたという。小島は、ゲーム業界でスタジオの閉鎖やタイトルのキャンセルが相次いでいる状況自体は理解していたものの、『PHYSINT』については問題ないと考えていたため、SIEが同作から撤退し、資金提供を終了することは完全に予想外だったと説明している。また、後になってもSIEから理由の説明や連絡はなく、「これが結論だったのであれば、もっと早く聞きたかった」と述べている。
小島はSIEに対して怒りや対立の感情を抱いているわけではないと説明している。SIEとは約30年間仕事をしてきた関係にあり、久夛良木健や平井一夫らとの交流にも言及し、自身も長年ソニー製品を使用してきたと述べている。。
『PHYSINT』は、小島がSIE社長兼CEOだったジム・ライアンに『メタルギア』シリーズに代わる新たなアクション・スパイ作品の構想を伝え、両者が協力して制作することで合意したという。しかし、資金提供終了が伝えられた2026年6月には、ライアンはすでにSIEを退任しており、発表当時とはSIEの経営体制が変化していた。小島は、ライアンがすでに退任していたことは認識しつつも、『PHYSINT』は双方が期待を寄せ、互いに合意した上で進めていたプロジェクトであったため、今回の決定をすぐには理解できなかったと述べている。
SIEではライアンの退任後、経営体制の再編が進められた。2024年にはプラットフォーム事業とスタジオ事業を分離する体制が導入され、2025年4月からは西野秀明がSIE社長兼CEO、ハーマン・ハルストがスタジオビジネスグループCEOを務める体制となった。『PHYSINT』のパートナーシップ締結時と、資金提供終了が告げられた2026年では、同じSIEとの契約でありながら、経営陣や組織体制は大きく異なっていた。
小島によれば、コジマプロダクションは独立会社であり、企業として継続的な資金を持つのではなく、プロジェクトごとに契約を締結することでスタジオを維持してきた。そのため、ひとつのプロジェクトが終了する前に次のプロジェクトを確保する必要があり、小島は『DEATH STRANDING 2: ON THE BEACH』と『OD』の制作が進んでいる段階から、その次のプロジェクトである『PHYSINT』を計画していた。
2026年6月当時、主要なプロジェクトは『OD』と『PHYSINT』の2つであり、プロジェクト数に応じてスタッフを雇用していたため、『PHYSINT』の契約を失えば、同作に携わっていたスタッフを削減する必要が生じる可能性があったほか、キャッシュフローが尽きてスタジオそのものが維持できなくなる可能性も考えたという。また、スタジオ設立後に銀行から融資を受けており、プロジェクトの停止やキャンセルが金融機関に知られれば深刻な問題になる可能性もあったと述べている。
コジマプロダクションには約200人のスタッフが在籍しており、小島は同作が存在する事を前提としてスタジオの規模を拡大してきたと説明した。また、同作では既に俳優のスキャンを開始し、協力するアーティストとも話を進めていたため、関係者に突然ゲームの中止を伝えることは避けたいと考えたという。小島は、過去の『P.T.』の開発中止と同じことを繰り返したくなかったと述べている。
小島は、『PHYSINT』に強い思い入れを持っていた理由として、コジマプロダクションの設立10周年と、自身がゲーム制作を始めてから40周年という2つの節目を挙げた。さらに、新型コロナウイルスの流行中に体調を崩したことをきっかけに、自分に残された時間を考えるようになり、キャリアのこの時点で『PHYSINT』に全力を注ぐことを決意していたと説明している。そのため、SIEから資金提供終了を告げられた後も、同作を継続する方法を探すことを決めたという。
SIEとの協議直後、小島が最初に行ったのは、自身のデスクに戻って『PHYSINT』のコンセプトを書き加える事だったという。コジマプロダクション代表の平野は、「一番驚いたのは、その後の秀夫の行動です。部屋に戻って、仕事を始めたんです」と述べ、小島がいかに素早く仕事に戻ったかに驚嘆した。その後、小島、平野、齊藤の3人だけで対応を協議し、スタッフにはすぐに事情を伝えず、まず今後の方向性を固めることを決めた。小島によれば、その後数日間にわたって新たなパートナーを検討し、当初はファーストパーティとの協業を考えていたが、サードパーティやその他の企業との提携も選択肢に入れるようになった。
SIEから資金提供終了の方針を伝えられた後も、『PHYSINT』の作業そのものが完全に停止したわけでは無かった。小島によれば、SIEとの会議の3日後に『PHYSINT』チームのリーダーたちを呼び、状況を説明したうえで、新たなパートナーを探すと伝えた。しかし同時に、プロジェクトがキャンセルされたことで、『PHYSINT』チームは重要な部分を担当するごく小さなチームを残し、そのほかのメンバーを全員『OD』へ移動させることとなった。もっとも『PHYSINT』は当時、敵AIをはじめとするゲームシステムについて実験を進めている段階であり、まだ大規模なチームが編成されていたわけではなかったため、変更はごく小規模なものにとどまり、大きな遅延などは特に生じなかったという。また、小島はスタッフが退職する可能性も想定していたが、実際には誰も辞めなかったと述べている。
その後、『PHYSINT』チームでは新たなパートナーに提出する企画提案用の資料作成が進められた。小島は、SIEから資金提供終了を告げられたにも関わらず、チームが楽しそうに資料を作成している姿を見て、スタッフの強さを実感したと振り返っている。新たなパートナーが決定するまで、プロジェクトの状況は限定的に共有されていたが、XBOXとの協業発表の前日には全スタッフへ事情が伝えられた。小島によれば、スタッフはプロジェクトを継続できることを前向きに受け止めたという。
外部企業への企画提案の際、小島は、従来のように単一のゲームタイトルへの資金提供を求めるのではなく、『PHYSINT』をゲーム、映画、ドラマ、アニメーション、テレビ、コミック、音楽などへの展開を視野に入れ、これらを含むIPを共同で構築することを提案したという。また、ゲーム会社だけなく映画会社、映画スタジオ、ストリーミング企業なども候補として検討した。
その過程で小島は、すでに『OD』で協力関係にあったXBOXに『PHYSINT』の企画提案を行った。XBOX側は「この企画提案は素晴らしい。こんな企画提案は見たことがない。」と内容を高く評価し、技術面でも支援できると回答したという。小島はXBOXとの既存の関係に加え、ゲームだけでなく映画やアニメーションなどを含むIP全体の展開を視野に入れていたことが、協業を決めるうえで重要だったと説明している。さらにXBOXは、ブルームバーグに対し、この決定は「簡単な判断だった」と語っている。
開発環境について、小島はXBOXとの協業決定後もゲームエンジンを最終決定していないと説明している。XBOXからは新技術に関する支援を受ける予定であり、小島はXBOXの研究施設や最先端技術に触れた経験にも言及した。『PHYSINT』では利用可能な新技術を積極的に取り入れる考えを示しており、エンジンを含む技術面では引き続き試行錯誤を行っている。
また、小島は『PHYSINT』の実写映画も制作したいという考えを示している。一般的にはゲーム発売後に映画化が行われることが多いが、ゲームと映画の制作時期をより近づけたいと考えており、デジタル制作環境の発達によってゲームと映画で同一のアセットを利用できる可能性にも言及している。
XBOXとの協業に至った経緯について、小島はフィル・スペンサーとの長年の関係にも触れている。スペンサーの退任後、2026年4月にレドモンドを訪問して現CEOのアーシャ・シャルマと会談し、将来の方向性について意気投合したと説明している。小島はXBOXについて、単なる経営者の交代ではなく、組織構造や将来構想そのものが変化していると感じたとしている。
『PHYSINT』の対応プラットフォームについて、小島自身にも確かなことは分かっておらず、XBOXに確認すべき事項だとして回答を避けている。そのうえで、XBOXにはできるだけ多くのゲーマーに作品を届けようとする姿勢があると感じていると述べ、対応プラットフォームについては今後の発表を待つ必要があるとしている。