R-73 (ミサイル)

R-73/AA-11 Archer
Su-27の翼端に装備されたR-73M1
種類 短距離空対空ミサイル
製造国 ソビエト連邦の旗 ソビエト連邦/ロシアの旗 ロシア
設計 ヴィーンペル科学製造連合
製造 ダックス工場(英語版)
トビリシ航空機製造(ロシア語版)(過去)
性能諸元
ミサイル直径 170mm
ミサイル全長 2,900mm
ミサイル全幅 510mm
ミサイル重量 105kg (R-73M1)
110kg (R-73M2)
115kg (R-73E)
弾頭 HE破片効果(7.4kg)
射程 20km (R-73M1)
30km (R-73M2)
推進方式 RDTT-295固体燃料ロケット
目標捜索装置 Mk.80
誘導方式 赤外線ホーミング
飛翔速度 マッハ2.5
テンプレートを表示

R-73(ロシア語: Р-73エール・スィェーミヂスャト・トリー)は、ソビエト連邦のヴィーンペル機械設計局で開発された短距離空対空ミサイルである。北大西洋条約機構(NATO)で用いられたNATOコードネームでは、AA-11 アーチャー(Archer)と呼ばれた。

概要

R-73は、ソ連戦闘機に装備される短距離空対空ミサイルとして、前任のR-60(AA-8 エイフィド)を代替するために1973年に開発が始められ、1985年に最初のミサイルが就役した。

R-73は、前任のR-60と同様に赤外線ホーミング方式を採用しているが、シーカーの冷却方式は、ペルティエ素子による熱電効果を利用したものから、窒素によるジュール=トムソン効果を利用したものに変更された。搭載されるMk.80シーカーは、アンチモン化インジウム(InSb)素子を使用しており、中赤外(MWIR)帯域に対応し、全方位交戦能力を実現している。ロックオン距離は8-12kmである。また、視野角は中心線±45度とされたほか、機体側の赤外線捜索追尾システム(IRST)やShchel (露:Щель) 、Sura (露:Сура) などのヘッドマウントディスプレイ(HMD)とリンクすることが可能となっており、これによって実現されるオフボアサイト射撃能力は、非常に先進的なものであった。このシーカーはウクライナのアーセナルが開発し、供給してきたが2014年ウクライナ騒乱の影響による禁輸からロシア国内メーカーにより代替品が製造され使用されている。

近接信管にはレーダー式のもの(一部派生型ではレーザー式のものも追加)と衝撃信管が装備され、弾頭にはRDX爆薬に劣化ウランとアルミニウムの断片を加えた連続ロッド弾頭が搭載された。

翼構成としては1列目に迎え角検出用のセンサーである小さい羽根、2列目に固定式の安定翼、3列目に全遊動式のカナード翼、その後ろに尾翼が設けられており、尾翼後部にはロール制御用のエルロンが取り付けられている。前部のセンサーと2枚の翼はカウンター・ウェイトとしても機能しており、この効果で20度の迎え角での飛翔が可能となった。また、推力偏向制御(TVC)能力との組み合わせにより、最小旋回半径がサイドワインダーの約1/2という極めて高い機動性を獲得、ミサイルは12Gで機動をおこなう空中目標への対応を可能とした。

これらの特性から、R-73の性能は、同時期に西側諸国で使用されていた第3世代サイドワインダーに優越するものと信じられている。これはASRAAMやIRIS-T、AIM-9X、AAM-5のようなサイドワインダーの後継機種の開発を促すことになった。

R-73は、MiG-23後期型、MiG-29、Su-27、Su-34、Su-35に使われているが、改修を施したMiG-21、Su-24、Su-25と中国のJ-10でもこれを運用することができる。珍しい例としては、イラクに輸出されたフランス製のミラージュF1EQに、R-73を搭載できるよう改造された機体がある。また、Mi-24、Mi-28、Ka-50/52のような攻撃ヘリコプターにも装備可能である。

後継ミサイルとしてK-30が開発されていたが事実上中止され、R-73の改良型の開発に注力することとなった。

実戦での使用

1996年2月24日、レスキューブラザーズ(英語版)の操縦するセスナ337(英語版) 2機が、キューバ空軍のMiG-29から発射されたR-73により撃墜される。キューバ系米国人3人とキューバ人永住者1人が死亡した。

エチオピア・エリトリア国境紛争においてはエチオピアのSu-27とエリトリアのMiG-29においてR-60と合わせて使用された。

2008年3月18日、アブハジアにおいてジョージアのヘルメス 450 UAVがロシア空軍のMiG-29から発射されたR-73により撃墜された。

派生型

R-73A
初期型。シーカーアングルは中心線±45度。コレチェットレーダー近接信管を搭載したR-73Kとヤンターリレーザー近接信管を搭載したR-73Lの2種類がある。射程20km。
R-73M1 (R-73 RDM-1)
R-73の改良型。全体のパフォーマンスが改善されている。
R-73M2 (R-73 RDM-2)
1997年に就役したR-73Mの改良型。IRCCM能力を向上させたほか、推進装置用の固形燃料を増やして射程を30kmに延長した。
R-73E
近接信管をレーダー近接/目標センサーとしたモデル。レーザー近接信管を加えたR-73ELもある。
R-74
1980年代半ばから開発され、1997年に明らかとされた改良型。IRCCM能力を強化したMK.80Mシーカーを搭載したほか、シーカーアングルが中心線±60度に拡大された。開発名称はIzdeliye 740。
R-73BM
MILEX 2017で公開されたベラルーシのBSVTによるアップグレード型。シーカーアングルが中心線±60度に拡大された新しいオールアングルシーカーを特徴としミサイルの妨害抵抗を大幅に増加させている。他新しいエンジン、新しいオートパイロットコントロールユニットを搭載、目標近くで確実に弾頭を起爆するため新しいレーザー近接信管も装備されている。最大射程は高度20,000mにおいて12km。
R-74M
2015年より出荷が開始されたR-74の改良型。シーカーを二波長赤外線センサを使用してロックオン距離とIRCCM能力を向上させ、メモリーを状況に応じて前線で再プログラム可能なものに変更したMM-2000に換装し、アングルを中心線±75度に拡大、冷却時間は従来の70分から6時間に延長した。これらの改良で効率は25-30%増加しているとされている。開発名称はIzdeliye 750。
RVV-MD
輸出型。レーダー近接信管を搭載したRVV-MDとレーザー近接信管を搭載したRVV-MDLの2種類がある。
R-74M2
Su-57のウェポンベイに搭載するためにR-74Mをベースに開発した発展型。以下の改良を行っており、AIM-9XやASRAAMと同様の性能を得た。開発名称はIzdeliye 760。
  • 全幅を320mmに縮小。
  • LOAL(発射後ロックオン)能力の付加。
  • 慣性航法装置の改善。
  • シーカーアングルの中心線±80度への拡大。
  • ロケットモーターの燃焼時間の増加。
  • 新しいマルチモード赤外線シーカーの装備。
  • データリンク受信機の装備。
訓練用
UR-73
航空機の飛行訓練用。後部の尾翼が存在しないのが外見上の特徴である。
B-72
R-73と同じ寸法で作られたモックアップ。
整備訓練型
整備訓練用。航空機に搭載しての運用は不可能。

採用国

青が運用国。赤では退役している

過去の運用国

脚注

[脚注の使い方]
  1. 1 2 3 4 5 6 7 AA-11 ARCHER R-73
  2. 1 2 3 Short-Range Air-to-Air Missile
  3. ↑ OPTICAL SEEKERS FOR AIR-TO-AIR MISSILES
  4. ↑ Гендиректор "Дукса": мы возродим в России малую авиацию | РИА Новости
  5. 1 2 3 世界の名機シリーズ MiG-29 フルクラム P.47-48
  6. ↑ 富永 & 宮永 2024, p. 45.
  7. ↑ Наследник Су-27: Air Forces Monthly о Т-50
  8. ↑ Armando Alejandre Jr., Carlos Costa, Mario de la Pena y Pablo Morales v. Republica de Cuba, Case 11.589, Report No. 86/99, OEA/Ser.L/V/II.106 Doc. 3 rev. at 586 (1999).
  9. ↑ “Russian jet shoots Georgian drone © Reuters”. YouTube. 2016年6月7日閲覧。
  10. 1 2 3 4 Jane’s Missiles and Rockets 19-May-2006 Vympel plans to develop air-to-air missiles for Russia's PAK FA fighter
  11. ↑ Vympel reveals previously classified air-to-air missiles
  12. ↑ MILEX 2017: BSVT unveils modernized R-73BM & R-60BM air-to-air missiles
  13. ↑ “"Дукс": поставки новейшей ракеты "воздух-воздух" в ВКС уже начались”.
  14. ↑ ЖУРНАЛ "ЭКСПОРТ ВООРУЖЕНИЙ", ИЮЛЬ-АВГУСТ 2009
  15. ↑ 「空自AWACSを脅威にさらす長距離ミサイル 中国、ロシアと日米の2020年代空対空対決 急げ!ロシアに勝る空対空ミサイルの開発」『軍事研究』2015年10月。
  16. ↑ “В ВКС начали поступать новейшие ракеты "воздух-воздух"”.
  17. ↑ 鹿内誠「実戦配備を間近に控えたロシア空軍最新鋭戦闘機スホーイSu-35Sの実力」『航空ファン』第61巻第11号、株式会社 文林堂、2012年11月、73頁。
  18. ↑ Russia and CIS Observer 17 June 2007.
  19. ↑ Учебная авиационная ракета УР-73
  20. ↑ Габаритно-массовый макет Б-72
  21. ↑ Учебно-разрезная ракета Р-73
  22. ↑ IISS 2024, p. 179.
  23. ↑ IISS 2024, pp. 269–270.
  24. ↑ IISS 2025, p. 261.
  25. ↑ The International Institute for Strategic Studies (IISS) (2023-02-15) (英語). The Military Balance 2023. Routledge. p. 206. ISBN 978-1-032-50895-5
  26. ↑ The International Institute for Strategic Studies (IISS) (2023-02-15) (英語). The Military Balance 2023. Routledge. pp. 179-180. ISBN 978-1-032-50895-5
  27. ↑ Su-25KM SCORPION (It is made in Georgia) - YouTube
  28. ↑ IISS 2024, p. 209.
  29. ↑ IISS 2024, p. 78.
  30. ↑ IISS 2025, p. 279.
  31. ↑ IISS 2025, p. 281.

参考文献

外部リンク