RUNX2(Runt-related transcription factor 2)は、ヒトではRUNX2遺伝子によってコードされているタンパク質である。CBFA1(core-binding factor subunit alpha-1)の名称でも知られる。RUNX2は、骨芽細胞の分化と関連している重要な転写因子の1つである。
RUNX2は骨芽細胞や内皮細胞において、細胞周期への進入と離脱に関わって細胞増殖を調節する役割を果たしていることが示唆されている。RUNX2は細胞周期のG1期の進行に影響を及ぼすことで、前骨芽細胞の増殖を抑制する。骨芽細胞では、RUNX2の濃度はG1期の序盤に最も高くなり、G1期の終盤、S期、M期には低下する。RUNX2による細胞周期調節機構の全体像は未解明であるものの、RUNX2の活性や濃度の変動が細胞周期を通じてその進行、進入と離脱に寄与していることは広く受け入れられている。骨腫瘍、特に骨肉腫の発生はRUNX2による細胞増殖制御の異常が原因となっている場合があり、重要な意味を持っている。
RUNX2はRUNXファミリーに属する転写因子であり、Runt DNA結合ドメインを有する。RUNX2は骨芽細胞の分化や骨格形態形成に必要不可欠であり、核酸と骨格系遺伝子発現に関与する調節因子との間の足場として機能する。このタンパク質は単量体としてもDNAに結合することができるが、ヘテロ二量体型複合体中の1サブユニットとして、より高い親和性で結合する。
RUNX2タンパク質はまず前骨芽細胞中に検出され、その発現は未成熟な骨芽細胞ではアップレギュレーションされ、成熟した骨芽細胞ではダウンレギュレーションされる。骨芽細胞系列への決定に必要となる最初の転写因子であり、Sp7やWntシグナルがこれに続く。RUNX2は多能性間葉系細胞から未成熟な骨芽細胞への分化の誘導を担うとともに、骨芽細胞分化の初期段階において主要な骨基質遺伝子の発現の活性化を担う。
RUNX2のDNA結合活性のノックアウトは骨芽細胞分化の阻害を引き起こす。そのため、RUNX2は骨形成のマスターレギュレーターと呼ばれることも多い。
骨芽細胞分化のマスターレギュレーターとしての役割に加えて、RUNX2は細胞周期の調節にもいくつかの役割を果たしていることが示されている。こうした役割の一部は、RUNX2がc-MybやC/EBPといった多くの細胞増殖遺伝子や、p53などとの転写レベルでの相互作用によって説明される。これらの機能は骨芽細胞の増殖と維持に重要であり、細胞周期を通じてRUNX2濃度が分解や転写活性の調節によって変動することで制御されていることが多い。
細胞内のRUNX2濃度の変動は、細胞周期のダイナミクスに寄与している。MC3T3-E1骨芽細胞株では、Runx2の濃度はG1期の序盤に最大となり、G1期の終盤、S期、M期には低下する。RUNX2の変動はG1期と関連した抗増殖機能に寄与しており、RUNX2は細胞周期からの離脱を補助することで、骨芽細胞の成熟を促進していると考えられている。
RUNX2のリン酸化も細胞周期依存的なダイナミクスに寄与していることが示されている。造血系細胞では、RUNX2はサイクリンD2、D3、p21(Cip1)の遺伝子発現を制御している。また有糸分裂時には、Cdc2の結合パートナーであるサイクリンB1と結合することが示されている。RUNX2のDNA結合活性は細胞の増殖能との相関がみられ、またRUNX2はCdc2によってSer451がリン酸化され、Cdc2阻害因子存在下ではDNA結合活性が低下する。これらのことから、RUNX2のリン酸化がG2期やM期の調節を介して細胞周期の進行を促進している可能性も示唆されている。また増殖中の軟骨細胞では、RUNX2は細胞周期制御機構の一部としてサイクリンD1/CDK4によってリン酸化され、ユビキチン化による分解が誘導されることで阻害されている。
RUNX2の変異は鎖骨頭蓋異形成症と呼ばれる疾患と関連している。RUNX2の発現量の不足が表現型の一因となっていることが提唱されている。RUNX2は細胞周期からの離脱を促進するため、RUNX2の量的不足が骨芽細胞増殖の増大、そして分化の低下と関連していると考えられている。
RUNX2の多型は骨肉腫表現型と関連しており、RUNX2の過剰発現がその一因となっていることも示唆されている。骨芽細胞ではRUNX2は細胞周期をG1期で停止させることで、がん抑制因子として機能している。一方で、骨肉腫細胞株であるラットROSやヒトSaOS細胞株ではRUNX2の変動に異常がみられ、RUNX2発現の調節不全が異常な細胞増殖に寄与していることが示唆されている。正常な骨芽細胞株であるMC3T3細胞ではMG132を用いたプロテアソーム阻害によって細胞周期依存的なRUNX2分解が阻害されることから、タンパク質分解による制御が行われていることが示されるものの、骨肉腫細胞ではこの効果は弱く、恒常的な強い発現が観察される。
Twist、MSX2、PLZFはRUNX2の上流で機能する。Osterix(Osx)はRUNX2の下流で機能し、正常な骨芽細胞分化のマーカーとして機能する。ZNF521、ATF4はRUNX2のコファクターである。TAZはコアクチベーターとしてRUNX2依存的転写を促進する。
RUNX2は次に挙げる因子と相互作用することが示されている。
miR-133はRUNX2を標的として阻害する。