|
| |
|
サンフランシスコのオフィス(2019年) | |
種類 | 子会社 |
|---|---|
| 市場情報 | NASDAQ: SPLK(2012年 - 2024年) |
| 業種 | ソフトウェア |
| 設立 | 2003年10月 |
| 創業者 |
|
| 本社 | アメリカ合衆国カリフォルニア州サンフランシスコ |
| 製品 |
|
| 売上高 | 42.16億米ドル(2024年1月期) |
利益 | 2.64億米ドル(2024年1月期) |
従業員数 | 約8,000人(2023年1月31日時点) |
| 親会社 | シスコシステムズ(2024年3月 - ) |
| ウェブサイト |
www |
Splunk Inc.(スプランク)は、アメリカ合衆国カリフォルニア州サンフランシスコに本社を置くソフトウェア企業である。サーバーやネットワーク機器、アプリケーションなどが生成するログをはじめとする「マシンデータ」を収集・インデックス化・検索・分析するソフトウェア「Splunk」を開発し、セキュリティ情報イベント管理(SIEM)とオブザーバビリティの分野で事業を展開している。2003年に設立され、2012年にNASDAQに上場した。2024年3月18日、シスコシステムズによる約280億ドルでの買収が完了し、同社の子会社となった。
上場企業であった時期には、データの取り込み量に基づく料金体系が高額であるとの評価が顧客や業界アナリストから繰り返し示され、創業以来2023年1月期まで毎年純損失を計上した。2020年12月の業績予想未達に伴う株価急落をめぐる集団訴訟は3,000万ドルで和解し、競合の新興企業Criblを相手に起こした著作権侵害訴訟では陪審が名目的な1ドルの損害賠償のみを認めた。2023年には2度にわたり合計約800人規模の人員削減を実施し、2026年6月にはSplunk Enterpriseの重大な脆弱性が公表から8日後に悪用が確認され、Splunk製品として初めてアメリカ合衆国サイバーセキュリティ・社会基盤安全保障庁(CISA)の悪用が確認された脆弱性カタログに登録された。
社名は洞窟探検(spelunking)に由来し、同社は「洞窟探検家のごとく、奥深く膨大なマシンデータを探索する」ことを事業の出発点としている。主力製品のSplunk Enterpriseは、ウェブサイト、アプリケーション、サーバー、ネットワーク機器、センサーなどが生成するデータを収集してインデックスを作成し、検索・相関分析・可視化・アラートを行うソフトウェアである。IT運用管理、DevOps、セキュリティ運用(SIEM)、業務分析などの用途で使われ、2013年からは自社運用のSaaSであるSplunk Cloudも提供している。
料金はデータの取り込み量(1日あたりのインデックス量)に基づく方式を長く基本としてきた。業界分析会社RedMonkのアナリストは2021年に「Splunkは高価だと認識されている」と述べ、ElasticやSumo Logicなどの競合が価格を理由に一部の利用者を獲得してきたとTechTargetは報じている。2023年1月31日時点の従業員数は約8,000人で、その約70%がアメリカ合衆国に勤務していた。
Splunkは2003年、マイケル・バウム、ロブ・ダス、エリック・スワンの3人により設立された。2007年9月には2,500万ドルの資金調達を発表し、2009年にはVentureBeatが同社の黒字化を報じた。2012年4月19日にNASDAQへ上場し、ティッカーシンボルはSPLKであった。
2008年から最高経営責任者(CEO)を務め、上場を主導したゴドフリー・サリバンは2015年11月に退任し、上級副社長のダグ・メリットが後任のCEOに就いた。
Splunkは2013年以降、モバイル分析、ネットワークデータ取得、セキュリティ分析、インシデント管理、クラウド監視、分散トレーシングなどの分野で企業買収を重ねた。米国証券取引委員会(SEC)への年次報告書(Form 10-K)で開示された主な買収は次のとおりである。
| 買収完了日 | 企業 | 事業内容 | 対価(総額) | 出典 |
|---|---|---|---|---|
| 2013年9月25日 | BugSense | モバイル端末が生成するデータの分析サービス | 900万ドル | |
| 2013年12月6日 | Cloudmeter | ネットワークトラフィックからのマシンデータ取得技術 | 2,100万ドル | |
| 2015年6月 | Metafor Software | IT運用向けの異常検知・振る舞い分析 | 非公表 | |
| 2015年7月9日 | Caspida | 振る舞い分析による内部脅威の検知 | 1億2,840万ドル | |
| 2017年9月29日 | SignalSense | 機械学習を用いたクラウド型のデータ収集・侵害検知 | 1,220万ドル | |
| 2017年10月 | Rocana(技術・知的財産の資産買収) | IT向け分析ソフトウェア | 非公表 | |
| 2018年4月6日 | Phantom Cyber | セキュリティのオーケストレーション・自動化・対応(SOAR) | 3億380万ドル | |
| 2018年6月22日 | VictorOps | IT・DevOps向けインシデント管理 | 1億1,230万ドル | |
| 2019年9月13日 | Omnition(Cloud Native Labs) | 分散トレーシングとアプリケーション監視 | 5,250万ドル | |
| 2019年10月1日 | SignalFx | クラウド基盤・マイクロサービス・アプリケーションのリアルタイム監視 | 9億6,140万ドル | |
| 2019年11月1日 | Streamlio | ストリーミングデータ処理 | 1,980万ドル | |
| 2020年10月 | Rigor、Plumbr | デジタル体験監視、アプリケーション性能監視 | 非公表 | |
| 2020年11月 | Flowmill | クラウドネットワークの可観測性 | 非公表 | |
| 2021年5月 | TruSTAR | 脅威インテリジェンス管理 | 非公表 |
SignalFxの買収について10-Kに記載された対価の総額は9億6,140万ドル(現金6億1,910万ドル、自社株3億2,450万ドルなど)であった。Constellation Researchのアナリストは2023年、これら多数の買収について「Splunkは既に買収先の統合に苦しんでいた」と評している。
Splunkは2010年代後半から、ソフトウェアライセンスの販売からサブスクリプション型のクラウドサービスへの移行を進めた。この移行は売上の計上時期を変え、2021年1月期の売上高は前年度比5%減の22.3億ドルとなった。2020年12月2日に発表した2021年1月期第3四半期の売上高は前年同期比11%減の5億5,900万ドルで、数か月前に示した6億ドル以上という自社予想を大きく下回り、株価は20%を超えて下落した。
2021年6月、投資会社のSilver Lakeが転換社債による10億ドルの投資を行い、同額の自社株買い枠が設定された。同年11月15日、CEOのダグ・メリットが即日で退任し、取締役会長のグレアム・スミスが暫定CEOに就いた。発表当日の株価は18%下落し、CNBCはこれを同社の上場以来3番目に大きな下落と報じた。証券会社BTIGは「過去2年以上にわたる複数回の事業モデル変更とSilver Lakeの投資を踏まえれば、驚くべきニュースではない」との見解を示した。
2022年2月、ウォール・ストリート・ジャーナルはシスコシステムズが200億ドル超でSplunkに買収を提案したと報じたが、両社は「活発に協議している状況ではない」と伝えられた。同年3月2日、SplunkはProofpointの創業CEOであったゲイリー・スティールを4月11日付でCEOに任命すると発表した。同年3月には投資会社Hellman & Friedmanが約7.5%(約14億ドル相当)の株式を取得したと報じられ、10月にはアクティビスト投資家のStarboard Valueが5%弱の株式を保有して株価向上のための施策を求める意向であると報じられた。
2023年9月21日、シスコシステムズはSplunkを1株157ドル、総額約280億ドルの現金で買収すると発表した。発表当日、Splunkの株価は21%上昇し、シスコの株価は4%下落した。この買収はシスコにとって過去最大の規模であった。
買収発表に対しては、両社の顧客や業界関係者から料金や統合への懸念が示された。調査会社Enterprise Technology Research(ETR)が両社の共同顧客を対象に行った緊急調査では、最大の懸念は「価格の上昇」で、次いで「事業の焦点の喪失」「Splunkからの人材流出」が挙げられた。料金体系については回答者の半数近くが「価格設定は好ましくないが、囲い込まれていると感じる」と答え、現行の料金モデルを好むとした回答者は10%未満であった。TechTargetの取材では、OpenText Cybersecurityの公共部門CTOが「コストを理由にSplunkから移行しようとする顧客を見てきた」と述べ、別のアナリストはAppDynamicsの買収を例に「シスコにはソフトウェアを自社製品群へ吸収した実績があまり良くない」と指摘した。
欧州委員会は2024年3月13日、「両社が事業を行う市場における競争への影響は限定的で、十分な数の代替事業者が存在する」として買収を無条件で承認した。買収は2024年3月18日に完了し、Splunkの株式はNASDAQでの取引を終了した。
買収完了後、SplunkのCEOであったゲイリー・スティールは2024年5月にシスコのGo-to-Market部門プレジデントに就き、Splunk事業は引き続き同氏の管轄下に置かれた。2024年6月、シスコは自社のCisco Observability Platform(旧Full-Stack Observabilityプラットフォーム)をSplunk Observability Cloudで置き換える方針を示し、AppDynamicsの開発チームをSplunkに移管した。
シスコは2024年8月、全世界の従業員の約7%を削減する再編計画を発表し、同年10月にはSplunkのサンフランシスコ本社オフィスを閉鎖して従業員を同市内のシスコのオフィスへ移すとともに、サンノゼの拠点を縮小する計画が報じられた。カリフォルニア州への届出(WARN通知)によれば、この削減にはサンフランシスコ拠点の134人が含まれていた。スティールは2025年2月、社外のCEO職に就くため同年4月25日付でシスコを退任すると発表された。
中核製品は自社運用型のSplunk Enterpriseと、そのSaaS版であるSplunk Cloud Platformである。この上で動作するプレミアム製品として、SIEMのSplunk Enterprise Security、IT運用監視のSplunk IT Service Intelligence(ITSI)、Phantom Cyberの買収を基にしたSOAR製品などがある。SignalFx、Omnition、VictorOpsなどの買収を統合したクラウド監視製品群は2020年10月にSplunk Observability Suiteとして発表され、後にSplunk Observability Cloudと呼ばれる。2024年6月には、セキュリティ運用の統合画面であったSplunk Mission ControlがSplunk Enterprise Security 8.0に統合された。
料金体系は、2019年9月に従来のデータ取り込み量に基づく方式に加えて、あらかじめ定めた容量階層で購入するPredictive Pricing、計算資源(仮想CPU)を基準とするInfrastructure-Based Pricing、用途別バンドルのRapid Adoption Packagesが追加された。2021年10月には、検索や分析に使う計算資源の利用量で課金するワークロード課金がSplunk Cloud Platformの既定の方式となった。
Splunkbaseは、Splunk向けのアプリやアドオンを利用者や他社が公開・入手できる配布サイトで、New RelicやForeScoutなど他社製品との連携アプリが提供されている。
Splunkは上場後も純損失を続け、2023年1月期の年次報告書は「創業以来、毎年純損失を計上してきた」と記載し、同期末の累積赤字は37.9億ドルであった。2024年1月期に通期のGAAP純利益2億6,400万ドルを計上した。
| 会計年度(1月末決算) | 売上高 | うちクラウドサービス | 営業損益(GAAP) | 純損益(GAAP) |
|---|---|---|---|---|
| 2021年1月期 | 2,229 | 554 | −780 | −908 |
| 2022年1月期 | 2,674 | 944 | −1,147 | −1,339 |
| 2023年1月期 | 3,654 | 1,457 | −236 | −278 |
| 2024年1月期 | 4,216 | 1,837 | 240 | 264 |
Splunkの料金は長く、1日にインデックスするデータ量に基づく取り込み量課金を基本としてきた。この方式は取り込むデータが増えるほど費用が増えるため、顧客の間で費用への不満が繰り返し表明されてきた。2023年のシスコによる買収発表時、TechTargetは「Splunkは長年、高価で最上位層の製品と見られてきた」とするアナリストの評を伝え、そのワークロード課金モデルについても「その日の株式市場の終値を当てるのと同じくらい分かりやすい」と述べたアナリストの発言を伝えた。ETRの調査を分析したSiliconANGLEは「価格はSplunkの顧客基盤において常に最大の懸念事項であった」と述べている。
同社は2019年9月に取り込み量課金以外の選択肢を追加し、2021年10月にはクラウド版でワークロード課金を既定とした。シスコ傘下となった後の2025年9月、Splunkは取り込みと分析を分離して単価を引き下げる新たな料金モデルの試験を発表した。調査会社IDCのアナリストは「取り込みコストはSplunkの顧客にとっての障害であり続けてきた」と述べ、この変更が近年の顧客の不満に応えるものだとしている。
2022年10月、Splunkは元従業員が創業したデータパイプライン企業Criblをカリフォルニア州北部地区連邦地方裁判所に提訴した。訴状は特許侵害、著作権侵害、契約違反、不正競争など12の請求からなり、Criblの製品がSplunkのソースコードや技術文書を不正に利用しているなどと主張した。Criblの製品LogStreamは、Splunkに送るログデータの量を減らして顧客のSplunkへの支払いを削減することを主な用途としていた。特許に関する請求は2023年に却下され、CriblのCEOは「見出しを飾った部分のほとんどはもう訴訟に残っていない」と述べた。
2024年4月の公判で、陪審はCriblがSplunkの通信プロトコル(S2S)との相互運用のためにSplunk Enterpriseをリバースエンジニアリングしたことを認定し、ウィリアム・オルサップ判事はこの目的での複製はフェアユースに当たると判断した。一方、陪審はCriblがマーケティング用の環境などでSplunk Enterpriseをフェアユース以外の目的で複製して著作権を侵害し、利用規約にも違反したと認定したが、Splunkが求めた1億5,500万ドルの損害賠償については立証がないとして名目的な1ドルの賠償のみを認めた。Splunkは評決を「Criblの故意かつ違法な行為を認めたもの」と歓迎し、CriblのCEOは相互運用性にとっての勝利だと述べた。元Splunk幹部のアナリストは「顧客が不満を抱いているのはCriblではなくSplunkだ」として、訴訟が高い価格を守るためのものだったと批判した。
判決は2024年8月23日に言い渡され、双方が判決後の申立てを行ったが、オルサップ判事は2025年12月31日にこれらを退け、1ドルの賠償を認めた評決を維持した。Splunkは同日、Criblは2026年1月14日にそれぞれ連邦巡回区控訴裁判所へ控訴した。
2020年12月2日の決算発表による株価急落を受け、同月4日に株主が同社と経営陣を相手に集団訴訟を提起した(In re Splunk Inc. Securities Litigation、カリフォルニア州北部地区連邦地方裁判所)。原告は、Splunkが大口顧客との契約成立が遅れていることを開示せずに第3四半期の業績予想を達成できると投資家を誤導し、予想と実績の差が6,000万ドルに達したことが明らかになると株価が23%下落したと主張した。請求の一部は却下申立てを乗り越え、Splunkは3,000万ドルを支払う和解に合意した。和解は2023年9月に仮承認、2024年3月に最終承認され、2020年5月から12月の間に株式を取得した投資家が対象となった。
2023年2月1日、Splunkは全世界の従業員の約4%(約325人)を削減するとSECへの届出で明らかにした。CEOのゲイリー・スティールは従業員への書簡で「成長と収益性のバランス」を取るための組織変更の一環だと説明し、関連費用として約2,800万ドルを見込んだ。同年11月1日には、シスコによる買収完了を待つ間にさらに約7%(約500人)の削減を発表した。スティールはSECに提出した従業員宛ての書簡で、この削減は「シスコとの合意の結果ではなく」1年以上続けてきた取り組みの継続だと述べた。
買収完了後の2024年8月、親会社のシスコは全世界の従業員の約7%を削減する再編を発表し、最大10億ドルの費用を見込んだ。同年9月に処理されたWARN通知では、旧Splunk本社があるサンフランシスコ拠点の134人を含むベイエリアの842人が対象とされた。
2026年6月10日、SplunkはSplunk Enterprise 10.2.4未満および10.0.7未満に、PostgreSQLサイドカーサービスのエンドポイントに認証が欠けているため、認証なしの遠隔攻撃者が任意のファイルを作成・切り詰めできる脆弱性(CVE-2026-20253、CVSS 9.8)があると公表し、修正版を提供した。2日後にセキュリティ企業watchTowrが遠隔コード実行に至る手法と概念実証コードを公開し、同月18日にSplunkは限定的な悪用を確認したとして至急の更新を呼びかけた。同日、CISAはこの脆弱性を「悪用が確認された脆弱性カタログ」(KEV)に追加し、連邦文民行政機関に6月21日までの対処を命じた。Splunk製品の脆弱性がKEVに登録されたのはこれが初めてであった。
日本法人のSplunk Services Japan合同会社は2012年2月に設立され、東京都千代田区大手町に本社を置き、大阪と名古屋にもオフィスを構える。2025年1月にはシスコシステムズと共同で日本での事業戦略を発表し、セキュリティとオブザーバビリティの分野で製品統合を進める方針を示した。2026年1月1日付で内山純一郎が社長執行役員に就任した。前任の野村健は2025年12月に日本プルーフポイントの代表取締役に転じた。
Splunkは2018年11月、プロロードレースチームのトレック・セガフレードと2019年からのスポンサー契約を結び、2020年2月にはマクラーレンのF1チームの公式テクノロジーパートナーとなり、レースカーMCL35にロゴが掲出された。