| WT1190F | |
|---|---|
航空観測チームが撮影した、スリランカ上空で大気圏に突入するWT1190F | |
| 仮符号・別名 | 9U01FF6 UDA34A3 UW8551D |
| 見かけの等級 (mv) | 16 - 23等級 |
| 分類 | 一時的な地球の衛星 |
| 発見 | |
| 初観測日 | 2009年10月26日 |
| 発見日 | 2015年10月3日 |
| 発見者 | レモン山サーベイ カタリナ・スカイサーベイ |
| 発見場所 | レモン山天文台 |
| 軌道要素と性質 元期:JD 2461200.5(2015年10月3.0日) | |
| 軌道長半径 (a) | 338,298 km (210,209 mi) (0.880 LD, 53.04 ER) |
| 近地球点距離 (q) | 21,222 km (13,187 mi) (0.055 LD; 3.33 ER) |
| 遠地球点距離 (Q) | 655,374 km (407,231 mi) (1.704 LD, 102.75 ER) |
| 離心率 (e) | 0.937269 |
| 公転周期 (P) | 22.66日 |
| 平均軌道速度 | 1.1 km/s |
| 軌道傾斜角 (i) | 3.197 度 |
| 近日点引数 (ω) | 314.044度 |
| 昇交点黄経 (Ω) | 311.556度 |
| 平均近点角 (M) | 6.191度 |
| 地球の衛星 | |
| 物理的性質 | |
| 直径 | 0.7 - 2 m |
| 質量 | 250 - 2000 kg |
| 平均密度 | ~0.10 g/cm3 |
| 自転周期 | 0.75 秒 |
| 絶対等級 (H) | 31.3 |
| アルベド(反射能) | >0.1 |
| ■Template (■ノート ■解説) ■Project | |
WT1190F(9U01FF6, UDA34A3, UW8551D)は地球の一時的な衛星となったのち、2015年11月13日6時18分21.7秒(±0.1秒、協定世界時)に地球に衝突した天体である。
この天体の正体は1998年に打ち上げられた月探査機ルナ・プロスペクターが月遷移軌道へ移った際に生じたロケット部品である宇宙ごみだと考えられている。 2013年2月18日に、アリゾナ大学が行っている小惑星捜索サーベイであるカタリナ・スカイサーベイが最初に発見していたがすぐに行方不明になった。そののちに同年11月29日に再発見されていたが、2つが同一だと気付かれないまま再度行方不明になった。2015年の10月3日のカタリナ・スカイサーベイプロジェクトのRose Garciaによって60インチ望遠鏡で三たび発見され、この時に2013年に発見された2件の観測と同一天体であることが国際天文学連合(IAU)の小惑星センター(MPC)とデータを共有しているチームから指摘された。初期の軌道計算では、この天体が静止軌道の内側から月までの距離の2倍の遠さまで達する極端な楕円軌道を描いて地球を周回していることが示された。また、2009年10月26日に発見されて、似たような軌道を持つ9U01FF6とも同じ天体ではないかと考えられている。
WT1190Fは少なくとも2009年半ば、またはそれ以前から地球を公転する一時的な衛星であった。確実に特定の既知の人工衛星であると同定されたわけではないが、推定密度が0.1 g/cm3しかなく水の密度1 g/cm3すらよりもはるかに小さいため、欧州宇宙機関(ESA)の天文学者は自然天体ではなく何らかの燃料タンクである可能性が高いと結論付けている。
さらなる観測の結果、天文学者らは2015年11月13日の6時18分(協定世界時、現地時間では11時48分)にスリランカの南に衝突すると予測した 。大きさが小さいため地表に達する前に大部分が燃え尽きると予測されるが、白昼でも晴れていれば火球として見えるとされた。
将来に大きな天体衝突現象が発生した際に備えたテストのような位置づけで、地上観測キャンペーンが実施された。

WT1190Fはカタリナ・スカイサーベイを構成する地球近傍小惑星捜索プログラムの1つである、レモン山天文台で行われているレモン山サーベイで最初に2013年に発見された。 2013年2月18日に発見された際の見かけの等級は19.5等級で、一時的な内部符号としてUDA34A3と呼ばれていたがすぐに見失われ、観測期間に相当する観測弧の長さは5時間しかなかった。同じサーベイで同年11月29日に検出された際は2月の観測と同一天体と気づかれずUW8551Dという符号が割り振られていたが、わずか1時間35分の観測ののちに再び行方不明となった。
その後、2015年10月3日になって再び発見され、その際はWT1190Fという符号を割り振られたが、すぐにこの天体が地球を公転していることが軌道計算で分かるも、既知の人工衛星のどれにも同定されなかった。そして2013年の観測と同一天体であることが分かり軌道が接続されると、さらに時間を遡って観測画像に写り込んでいないか検証され、2009年6月までのプレカバリーが見つかった。
WT1190Fの軌道は長期にわたって安定するものでなく、遠くない時期に地球か月に衝突するか、地球の重力圏を離れ太陽周回軌道に放り出されるのに十分な軌道速度を得る可能性があった。つまり何十年にもわたって地球を公転していたとは考えられなかった。2011年時点では軌道離心率0.33で地球に24.8万㎞まで近づく軌道をとっていたが、2012年5月24日には地球から22000kmの位置を通過し、2013年には軌道離心率が0.70まで増加し地球に10.5万kmまで接近する軌道になっていた。
| 元期(年) | 離心率 | 傾斜角(度) | 近点 (km) |
遠点 (km) |
|---|---|---|---|---|
| 2011 | 0.33 | 59 | 248383 | 495045 |
| 2013 | 0.70 | 78 | 105639 | 598686 |
| 2015 | 0.94 | 3 | 21221 | 655374 |
WT1190Fの明るさは、近地点にあるときの16等級から、遠地点にあるときの23等まで変化し、公転周期中の多くの期間で20等級より暗かった。この限られた観測期間と、放射圧やヤルコフスキー効果、月の重力の影響により頻繁に受ける摂動の効果によって、最新の軌道や位置を予測することは常に困難であった。大気圏突入の1時間前にはRバンドで13.6等級の明るさになっており、これは冥王星と同じ見かけの等級であったがそれでも肉眼で見える限界等級の1000倍ほど暗かった。
WT1190Fは秒速11kmで大気圏突入した。突入時に燃え残った残骸は、スリランカのゴールから南に100kmほど離れた海上に落下したとされている。ゴールに最接近したのは大気圏を落下中の高度45kmにあったタイミングで、接近距離は51kmほどだった。同じくスリランカのコロンボからの観測者からは、地平線上30度の高さに、真西よりやや南寄りの方角から出現して見えた。衝突体の質量はスリランカ地域に何ら危険性が及ぶものではなかったが、明るい火球が観測された。一方で科学者はWT1190Fを、月遷移軌道からの人工衛星や宇宙ゴミ、小惑星の大気圏突入についての知見を得るよい機会として航空機観測を望んだ。 国際天文学センター(IAC)およびアラブ首長国連合宇宙連盟はジェット機をチャーターし、雲の上からその再突入の様子の研究観測を行い、その様子を動画撮影することに成功した。
| 日付 | 見かけの等級 | 地球との距離 (km) |
対地速度 (km/s) |
|---|---|---|---|
| 05 | 20.8 | 602399 | 0.2 |
| 08 | 20.5 | 524608 | 0.5 |
| 10 | 20.0 | 420800 | 0.8 |
| 11 | 19.6 | 345999 | 1.0 |
| 12 | 19.0 | 246196 | 1.4 |
| 13 | 17.1 | 89914 | 2.8 |
| 衝突時 | ~ –6 | 0 | 11.3 |

国際天文学センターとUAE宇宙連盟による、再突入時のWT1190Fの観測はIACがガルフストリーム450ジェット機をチャーターし、ピーター・ジェニスケンスら研究者を、雲の上からの観測が可能である高高度に送り届けることで実施された。2008 TC3の地球衝突を機に結成された次世代TC3コンソーシアムの小惑星検出・地球警告チームは、大気圏突入のタイミングを1.3秒の誤差まで絞り込んで観測を支援した。
地上観測者の多くは雨のため火球を観測できなかったが、その雨雲の上空を飛んでいた飛行機からは雲の切れ間を見つけることができ、肉眼で見えるほど明るい火球が観測された。分光観測データが取得され、WT1190Fの物質組成を調べる手掛かりとなった。スペクトルからはアルミニウムなどの特徴は検出されなかったが水素の発光と一酸化チタン(TiO)の特徴が検出され、これはチタン製燃料タンクと内部の残存燃料に由来すると考えられており、ステンレス合金を使用していたロケットは候補から外されるなどの突入物の知見が得られている。