| 開発元 | 日立製作所 |
|---|---|
| 初版 | 1994年 |
| 最新版 |
Version 10 10-11
/ 2026年4月 |
| 対応OS | Red Hat Enterprise Linux、Windows、AIX、HP-UX |
| 種別 | 関係データベース管理システム |
| ライセンス | プロプライエタリ |
| 公式サイト | https://www.hitachi.co.jp/Prod/comp/soft1/hirdb/ |
HiRDB(ハイアールディービー)は、日立製作所が開発・販売している関係データベース管理システム(RDBMS)である。1994年に最初のバージョンが提供され、日立オープンミドルウェアシリーズのひとつとして、金融・公共・交通・通信などの分野のミッションクリティカルなシステムに採用されてきた。名称は「Highly scalable Relational Database」に由来する。複数のサーバーでリソースを共有しないシェアードナッシング方式の並列処理と、メインフレームで培われた高信頼化技術を継承した無停止運用を特徴とし、日立製作所は「ノンストップデータベース」の呼称で販売している。
HiRDBは、データベースを管理するサーバー製品と、ネットワークを介してデータベースにアクセスするクライアント製品から構成される(クライアントサーバーモデル)。サーバー製品「HiRDB Server」には、1台のマシンでサーバーを構成しオンライン業務の応答性能を重視する「HiRDB/Single Server」と、複数のマシンで負荷分散を行い大容量のデータを扱う「HiRDB/Parallel Server」が同梱されている。Version 10のサーバー製品は64ビットOS専用である。
サーバー製品の動作環境は、2026年9月時点でRed Hat Enterprise Linux、Windowsおよび商用UNIX系OSである。過去にはSolaris版なども提供されていた。SQLはSQL92のEntry SQLに準拠し、SQL99のオブジェクト指向機能と、SQL2008のXQueryと連携するSQL/XMLをサポートする。文字コードはシフトJIS、EUC、Unicode(UTF-8、UTF-16)、EBCDIKに対応し、データベースの最大サイズは約8エクサバイト、1つの表の最大列数は30,000とされる。
クライアント製品「HiRDB/Run Time」にはJDBCドライバー、ODBCドライバー、Python用ドライバーが含まれ、「HiRDB/Developer's Kit」を用いるとC、C++、COBOLなどのソースプログラム中に直接SQLを記述する埋め込みSQL方式で開発できる。このほか、システム構築をGUIで行う「HiRDB Configuration Assistant」、運用操作用の「HiRDB Control Manager」、会話型SQL実行プログラム「HiRDB SQL Executer」、SQLの性能分析を支援する「HiRDB SQL Tuning Advisor」などの運用支援製品、他のデータベースとのデータ連携製品「HiRDB Dataextractor」「HiRDB Datareplicator」、XMLや全文検索、地図情報を扱うデジタルコンテンツ管理製品、JP1やPrometheusと連携する監視用製品がラインアップされている。
日立製作所は1980年代半ばにメインフレーム用の第1世代RDBMS「RDB1」、1990年初頭に第2世代の「XDM/RD」を開発し、メインフレーム上の基幹システムで関係データベースを実用化していた。1990年頃からダウンサイジングの動向が現れると、UNIXサーバー上で基幹システムを構築するためのDBMSを自社開発するか否かが社内で約2年間議論された。先行するデータベース専業ベンダーの製品が市場を確立しつつある中で後発として参入することには慎重論もあったが、UNIXサーバーを並列化した「BMPP(Business Massive Parallel Processor)」事業の開始などを背景に、1993年4月に自社開発が決定された。これに先立ち、日立のシステム開発研究所では1991年10月から1993年3月にかけて並列RDBの研究プロジェクトが進められ、1993年4月の研究発表会で16台のクラスター構成によるプロトタイプが披露されている。開発に携わった技術者によれば、この研究プロジェクトで開発された技術は国内外で408件(日本特許公告173件、米国特許公告235件)の特許として権利化され、製品に実装されたという。
バージョン1は1994年9月に開発を完了し、1995年4月に最初の顧客である大手金融機関のALM(資産負債管理)システムに適用された。並行して開発されたバージョン2は、単一のUNIXサーバーで基幹システムを代替する高性能・高信頼なDBMSとしての位置付けも与えられ、1995年8月に完成した。開発に携わった技術者の回顧によれば、バージョン2の開発は100名を超える体制で行われ、製品規模は100万ステップを超えた。品質保証部門はメインフレーム時代に蓄積したDBMSの検査技術を適用し、検出した問題と同種の問題の洗い出しを開発部門に課したことが信頼性の向上に寄与したという。バージョン2は完成直後から24時間365日の無停止稼働が求められる基幹システムに多く適用され、約80システムで採用された。1995年の『日立評論』では、金融機関の情報系システムへ並列データベースとして適用する構想が紹介されている。HiRDBの開発は1995年度の日経BP技術賞大賞を受賞した。日立製作所の資料では、1995年から1997年にかけてバージョン2から4が、1999年にバージョン5が、2001年にバージョン6が提供されたとされる。
1990年代後半には、SQLの国際標準(SQL99)で議論されていたオブジェクト関係データベース(ORDB)機能への対応が進められた。利用者が任意の構造のデータ型を定義する抽象データ型と、日本語文書の全文検索や地図情報検索、画像検索といったメディア対応モジュールをデータベースに組み込む「プラグイン」機構はバージョン5で実装され、同版を中心にデータベースアクセスツールなどを含めた製品体系「HiRDB Universal Server」として提供された。開発に携わった技術者の回顧によれば、この時点で日立はSQL規格への追従を続ける日本で唯一のベンダーになったとしている。SQL99は1999年5月に松江市で開催されたISO/IEC JTC 1/SC 32総会で承認され、同技術者によれば、翌2000年の作業部会でHiRDBのORDB機能の実装は海外の参加者に驚きをもって受け止められたという。
2001年に提供された「HiRDB Version 6」では、24時間365日稼働するネットビジネス向けのシステムを想定して信頼性がさらに強化された。2003年の「Version 7」では、ノンストップDB、スケーラビリティ、ディザスタリカバリ、セキュリティ、運用容易性、アプリケーション開発支援、データ活用の7項目が製品の柱として掲げられた。2005年3月にリリースされた「Version 7.2」では、あらかじめ定義したポリシーに従ってサーバー構成を動的に変更する「オンラインスケールアウト」や、待機専用サーバーを不要にする「Active-Activeクラスタ」などの自律運用機能が加わった。また、文部科学省のリーディングプロジェクト「e-Society基盤ソフトウェアの総合開発」における東京大学と日立の「ストレージ・データベース融合技術」の研究成果がディザスタリカバリ機能に反映され、約600km離れたサイト間でデータ損失ゼロを掲げた。
2006年には「情報統合」をコンセプトとする「Version 8」が発表された。2009年7月には、Version 8(08-04)がISO/IEC 15408に基づく評価保証レベルEAL4+(ALC_FLR.1)の認証を取得している。
2010年2月24日、日立製作所はインメモリデータ処理を取り入れた「HiRDB Version 9」を発表し、翌25日から販売を開始した(出荷は同年4月28日)。ディスク上のデータベースとインメモリデータベースを併用するハイブリッド構成により、アクセスが集中するテーブルの処理性能を従来比で約3倍から約30倍に向上させたとし、SQLの実行状況をリアルタイムに分析する「HiRDB RealTime Monitor」も製品化された。2011年1月31日には、バッチ処理を高速化するグリッド処理製品との連携機能を追加した「Version 9.1」が提供された。Version 9(09-65)は、総務省が推進する地域情報プラットフォームの標準仕様(APPLIC-0002-2017)に準拠した相互接続確認製品として、全国地域情報化推進協会(APPLIC)に登録されている。
現行の「HiRDB Version 10」では、クラウドへの移行性向上、内部からの情報漏えい防止、運用省力化が強化の柱とされている。2020年12月には、Amazon Web Services(AWS)上にHiRDB環境を構築して運用サポート込みで提供する「HiRDB Cloud Service」の販売が始まり、2021年2月1日からAWSの東京リージョンで提供された。AWSのアベイラビリティゾーンをまたいでHiRDBを配置し、データを同期して障害時に待機系へ自動で切り替える冗長化構成をとることができる。2024年1月には、パブリッククラウドへの移行を設計から構築・チューニングまで支援する「HiRDBクラウド移行支援サービス」の提供が始まり、同年8月には、テストデータ管理製品「Delphix」と連携して本番データからマスキング済みのテストデータを生成する「HiRDB Connector for Delphix」が発売された。同年、HiRDBは提供開始から30周年を迎え、記念サイトが公開された。
Version 10の改訂では、2024年4月の10-08でデッドロック発生時の業務復旧時間短縮など、2025年1月の10-09でリードレプリカ機能によるシングルサーバーの負荷分散やBIツール「Tableau」からの接続対応、2025年10月の10-10でロール機能と、監視ソフトウェア「Prometheus」およびJP1/Integrated Management 3による監視への対応、2026年4月の10-11でリードレプリカ機能の自動反映方式などが追加された。2026年9月には、新開発のミドルウェア「Hitachi Volume Replication Driver」とHAモニタ、HiRDB、OpenTP1、JP1を組み合わせ、パブリッククラウド上で障害発生時に数十秒で待機系へ自動切り替えする「クラウド高信頼化ソリューション」の提供が始まった。
HiRDBはサーバー間でリソースを共有しないシェアードナッシング方式を採用しており、日立製作所は、サーバー台数に応じた処理性能を引き出せ、サーバー数100台を超える大規模システムにも適用できるとしている。複数サーバー構成では、SQLを受け付けるフロントエンドサーバーとデータベースにアクセスするバックエンドサーバーに役割が分かれ、表は列の値の範囲やハッシュ関数によって複数の格納領域(RDエリア)に分割して格納できる。Version 9で導入されたインメモリデータ処理は、ディスク上のデータベースと併用できる。
障害発生時には待機系サーバーへ数秒オーダーで系を切り替え、切り替え中に受け付けた新規トランザクションをキューイングして切り替え後に処理する(トランザクションキューイング)ことで、利用者に障害を意識させずにサービスを継続する設計とされている。待機専用のサーバーを用意せず、稼働中の別サーバーに処理を引き継ぐActive-Activeクラスタ構成や、オンライン中のサーバー追加・削除といった構成変更は、オプション製品「HiRDB Advanced High Availability」で提供される。ディザスタリカバリには、日立のストレージ製品と連携してデータ損失ゼロを図る「リアルタイムSANレプリケーション」と、「HiRDB Datareplicator」を用いて特別なハードウェアなしに遠隔地へデータを複製する「リアルタイムSQLレプリケーション」の2方式がある。
ストレージの筐体内複製機能を利用した「インナレプリカ機能」(オプション製品「HiRDB Staticizer Option」)により、オンライン業務の性能を維持したままバッチ処理やデータベースの再編成、バックアップを並行して実行できる。再編成時期の予測、削除で生じた空き領域を再利用するガベージコレクション、格納領域の自動拡張、オンライン中の表データの再配置(リバランス)といった運用支援機能も備える。
格納データとクライアント・サーバー間通信の暗号化、「いつ」「だれが」「どのリソース」にアクセスしたかを記録する監査証跡、特定の表を参照・追加のみ許可して管理者を含む全利用者の更新・削除を禁止するWORM機能(改ざん防止機能)などを提供する。Version 10 10-10ではロール機能が追加された。
プラグイン機構を用いたデジタルコンテンツ管理製品として、XML文書を構造を保持したまま格納する「HiRDB XML Extension」、日本語文書の全文検索や同義語・異表記語の検索を行う「HiRDB Text Search Plug-in」、OGCの認証を取得した地図情報検索用の「HiRDB Spatial Search Plug-in」などが提供されている。
日立製作所は、サーバーをバージョンアップしてもデータベースをそのまま使用でき、アプリケーションの作り直しも不要な上位互換性を保証するとしている。メインフレーム上のアプリケーションからHiRDBにアクセスするためのAPIや、XDM/RD、XDM/SD、RDB1 E2、PDMII E2といったメインフレームのデータベースとのデータ連携製品も用意され、メインフレームからオープンシステムへの移行(レガシーマイグレーション)の事例が公表されている。
接続インターフェースとしてはODBC 3.5、JDBC 4.3、Python Database API 2.0準拠のPython用ドライバーを備え、X/Open XAインターフェースの仕様に準拠する。埋め込みSQLはC、C++、COBOL2002、Javaで利用できる。Hibernate用のDialectクラス、Spring Batch用のライブラリ、分散SQLエンジンPresto用のコネクターは、日立製作所がオープンソースソフトウェアとして公開している。監視については、Prometheusで稼働状況を収集する「HiRDB Metrics Exporter」や、JP1の性能監視・バックアップ製品向けのエージェント製品が用意されている。
日立製作所によれば、HiRDBは金融・公共・交通・通信などの分野のミッションクリティカルなシステムに採用されており、開発に携わった技術者によれば2021年5月時点の累計販売本数は約11万本である。公表されている主な採用例には次のものがある。
パッケージソフトウェアの前提データベースとしての採用例もある。日立システムアンドサービス(現・日立ソリューションズ)が2007年に発売した企業内コンテンツ管理システム「ラビニティ ECM」は、HiRDB、TPBroker、Cosminexusを前提製品としていた。日立ソリューションズ(当時の商号は日立ソフトウェアエンジニアリング)の地理情報システム製品「GeoMation」では、2006年発売の「GeoMation/ケータイ」が対応DBMSにOracle DatabaseやPostgreSQLなどと並んでHiRDBを挙げ、2009年発売の組立型GIS「GeoMation Remix」も、前提データベースの選択肢としてHiRDB Version 7、またはVersion 8とSpatial Search Plug-inなどの組み合わせを挙げている。
日本データベース学会の業績賞について日立製作所は、1995年当時には稀であった並列一括更新処理を実装した製品を送り出し、その後15年以上にわたって技術開発、技術サポート、標準化活動、研究・教育活動の支援を継続したことが評価されたと説明している。情報処理学会の喜安記念業績賞については、高いスケーラビリティを発揮する並列問合せ処理機構と、メディアコンテンツを扱う拡張可能なプラグイン機構から成るORDB技術を約20年にわたって開発し続けたことが評価されたと、日立製作所は説明している。
HiRDBの開発と販売は日立製作所が行っている。2025年4月1日以降の担当組織はAI&ソフトウェアサービスビジネスユニットのマネージド&プラットフォームサービス事業部で、それ以前の資料ではソフトウェア事業部などの旧組織名が用いられている。日立製作所は、国内のHiRDB技術者が利用者からの問い合わせに対応する体制を特徴として挙げており、保守サービス「日立サポート360」のほか、データベースの設計・構築・チューニングを支援する「HiRDBテクニカルサービス」と「HiRDBクラウド移行支援サービス」を提供している。運用・構築技術者向けの研修講座は日立アカデミーを通じて提供されている。また、研究・教育活動の支援を目的として2003年から大学の研究室などへ製品を無償提供する「日立HiRDBアカデミック支援プログラム」を実施しており、2023年時点で延べ21の研究室・研究機関に提供されたとしている。
販売やシステム構築は、日立製作所のほかに日立オープンミドルウェアパートナープログラムに参加するパートナー企業も担っている。公式サイトでは、2026年9月時点で、販売パートナーとして日立ソリューションズ、日立ソリューションズ東日本などが、設計・構築を中心に担うテクニカルパートナーとして信興テクノミスト、日立ソリューションズ、日立ソリューションズ・クリエイトが、連携製品を提供するパートナーとしてウイングアーク1st(MotionBoard)とDTS(データスタジオ@WEB)が紹介されている。