News Gothic
News Gothic (ニュース・ゴシック)は、モリス・フラー・ベントン が設計し、1908年に所属先のアメリカン・タイプ・ファウンダーズ (ATF) から発表されたサンセリフ 書体 である。同じくベントンが設計したFranklin Gothic とプロポーションや構造が似ているが、より軽いウェイトで設計されている。
ベントンによる他のサンセリフ体と同様に、News Gothicはグロテスク様式 に基づいており、2階建ての小文字の「a」や「g」を持つなど、当時のセリフ体 の本文用書体に似た特徴を備えている。また、小文字「t」の頂部が平らに切り落とされている点や、大文字「Q」のテールがボウルの完全に外側に位置している点も特徴的である。字形はコンパクトで、ディセンダー は浅い。他のグロテスク・サンセリフ体と比べてウェイトがやや軽く、字形が開いているため、堅苦しさが和らぎ、ヒューマニスト的なトーンを生み出している。
20世紀の大部分において、News Gothicは新聞や雑誌の出版に広く用いられた。モノタイプ 社やインタータイプ (英語版 ) 社の熱間活字鋳造機(ホットメタル)用の母型が供給され、両社ともこのファミリーに新たなウェイトを追加した。また、見出し用としてコンデンス(長体)やエクストラ・コンデンスのスタイルも設計された。
「ゴシック (Gothic)」とは、主に20世紀初頭のアメリカやカナダでサンセリフ体を指して用いられた用語である。イギリスでも「グロテスク (grotesque)」と併用されていた。ドイツでは「グロテスク (grotesk)」という用語が用いられていた。日本では現在も「ゴシック体 」として一般的に用いられている。
金属活字でのリリース
ATFが多数の関連する「ゴシック」書体に対して用いた名称を解説した戦後のガイドライン(推定1958年頃)。当時の新書体であったNews Gothic Boldを紹介している
ベントンの自伝的ノートには、彼が同フォントファミリーに貢献したデザインとして以下のものが挙げられている。
News Gothic
News Gothic Condensed
News Gothic Extra Condensed
また、ATFの1923年の見本帳には以下の書体も掲載されている。
News Gothic Extra Condensed Title (見出し用書体)
Franklin Gothicと同様に、同活字鋳造所は後にラインナップを拡充し、さらに2つのバリエーションを追加した。
News Gothic Bold (1958年) - ジョン・L・“バド”・レンショーによるデザイン。ただし、インタータイプ (英語版 ) 社はすでに鋳造活字(ホットメタル)版で太字のNews Gothicをリリースしており、後にモノタイプ 社も同様にリリースした。
News Gothic Condensed Bold (1965年) - フランク・バルトゥスカによるデザイン。モノタイプ社とインタータイプ社からも同バージョンがリリースされた。
モノタイプとインタータイプの両社はオブリーク(斜体 )バージョンをリリースしている。マック・マグリューの報告によれば、ATFのアーカイブには1912年当時のオブリーク用制作図面が保管されていたものの、「製造の記録はない」という。
コールドタイプにおける複製
ほぼすべてのコールドタイプ製造業者が、異なる名称で独自のNews Gothicを提供していた。
デジタル版
News Gothicの代表的なデジタル復刻版数種の比較
アメリカン・タイプ・ファウンダーズ (ATF) 社の事業を継承してデジタル書体を制作している企業が現存しないため、News Gothicはさまざまな提供元により多様なバージョンでデジタル復刻されている。
Benton Sans (英語版 ) は、Font Bureau (英語版 ) 社がNews Gothicを基に大幅に拡張したフォントファミリーであり、ワイド体や極太ウェイトなどの特色が追加されている。全80スタイルを擁し、News Gothic系の中では最も包括的なデジタル版の一つである。『ニューズウィーク 』、『フォーチュン 』、『ボストン・グローブ 』、サザビーズ などで採用されている。
News Gothicの名でリリースされたデジタル版にも様々な特徴があり、オリジナルデザインにはないウェイトが追加されたり、需要の少ないウェイトが省略されたりすることが多い。例えば、ビットストリーム 社のリリース版は、Extra-condensed(極細幅)スタイルを含む珍しいものである。URW++ (英語版 ) 社のバージョン(Fontsite社からも販売)は、1種類の字幅のみだが幅広いウェイトを揃えており、全ウェイトにイタリック体 が用意されている。一方、ライノタイプ 社のバージョンには、Light(細字)やCondensed(細幅)スタイルが存在しない。モノタイプ 社による復刻版(その一部は多くのマイクロソフト 製品に同梱されている)は、CondensedスタイルはあるがExtra-condensedはなく、他社のいくつかのバージョンに比べて文字間隔が広く取られている。アドビ 、モノタイプ、ライノタイプ、ビットストリームの各社が独自のバージョンを提供している。なお、ビットストリーム版のNews Gothicは、パラタイプ (ロシア語版 ) 社のドミトリー・キルサノフによって2005年にキリル文字が、2009年にギリシア文字が拡張され、同社から単独で販売されている。
ソフトメーカー (英語版 ) 社のHamburg Serialは、知名度こそ劣るもののNews Gothicの派生版の一つであり、1階建ての「a」と「g」を持つイタリック体を特徴としている。
News Gothic No. 2は、1984年にD・ステンペルAG (英語版 ) 社が制作したNews Gothicの拡張版である。他のバージョンにはなかったウェイトがファミリーに追加されている。
アドビのSource Sans Pro はNews Gothicを基にした単一字幅のデザインであるが、画面表示用に最適化するため純粋なイタリック体 (true italic) を採用し、エックスハイト が大きく設計されている点で異なる。2012年にアドビ初のオープンソースファミリーとして、SIL Open Font License の下で公開された。アドビのトレーニング資料では、やや細身なNews Gothicよりも、ページ全体での文字の濃さ(カラー)が均一になる点が強調されている。
News Cycleは、ネイサン・ウィリスによるオープンソースの派生版である。1908年当時のNews Gothicの書体見本を基にしており、ラテン文字、ギリシア文字、キリル文字の全グリフが拡張されている。SIL Open Font Licenseの下で提供されているオープンソース書体である。
類似のデザイン
ライノタイプ は自社の類似書体を「Trade Gothic (英語版 ) 」と称し、一方ラドロー (英語版 ) 版は「Record Gothic」として知られていた。インタータイプ (英語版 ) は同名でこの書体を複製し、1955年に派生書体である「News Gothic Bold」を追加した。ボルチモア・タイプによる複製版は「Balto Gothic」と呼ばれた。一方で、同社がインランド活字鋳造所 (英語版 ) の「Inland Gothic No. 6」を複製した書体は「News Gothic」という名称で販売されていた。
1916年、ソル・ヘス (英語版 ) はNews Gothic Extra Condensed向けに丸みを帯びた代替文字を制作した。この書体はランストン・モノタイプ から「Jefferson Gothic」として販売され、ボルチモア・タイプからも「Tourist Extra Condensed」の名称で販売された。1935年には、ベントンがATF向けに同様の制作を行い、この書体は「Phenix」と呼ばれた。
ラドローの「Record Gothic」は当初単なる複製版に過ぎなかったが、1956年から1961年にかけて、同社の専属デザイナーであるR・ハンター・ミドルトン (英語版 ) が同ファミリーに以下のような多くの独自デザインを追加した。
Record Gothic Condensed Italic
Record Gothic Extended + Italic
Record Gothic Bold + Italic
Record Gothic Bold Condensed
Record Gothic Bold Extended + Italic
Record Gothic Bold Extended Reverse
Record Gothic Thinline Condensed
Record Gothic Heavy Condensed
Record Gothic Light Medium-Extended
Record Gothic Medium-Extended + Italic
Record Gothic Bold Medium-Extended
Record Gothic Heavy Medium-Extended
このようにRecord Gothicは一貫性に欠ける書体ファミリーとなっており、現在に至るまで完全にデジタル化されたことはない。
一部のMicrosoft Windows およびmacOS に標準搭載されている日本語フォント「游ゴシック体 」は、欧文グリフの設計にFranklin Gothic をベースとしている。そのため、同じくベントンが設計した関連書体であるNews Gothicとも類似した印象を持つ。ただし、両書体の間に直接的な系譜関係があるわけではない。
主な使用例
本フォントのボールド体を用いたABBAの著名なロゴ
News Gothicのボールド体は、スウェーデンのポップグループABBA のロゴに使用されている。このロゴは1976年にルーネ・ソーデルクヴィストによって考案された。
『スター・ウォーズ 』シリーズ各作品のオープニングクロール 本文、およびエンドクレジットには、News Gothic Boldが使用された。
IBM のタイプセッターに搭載されていたNews Gothicは、ジョージ・マチューナス (その出版物「Fluxpublications」)やジョージ・ブレクト (「イベント・スコア」)といったフルクサスのアーティストたちによって広く使用された。
1950年代後半にポラロイド 社が採用したポール・ジャンバルバ (英語版 ) デザインのロゴはNews Gothicで組まれている。また、1980年代に至るまで、同社のパッケージや関連文書の多くにもこのフォントが使われていた。
1960年代後半から1970年代にかけてクイズ番組などで用いられた縦型の反転フラップ式表示機 の数字には、News Gothic Boldが使用されていた。
オリジナルであるアメリカ版『スクラブル 』の文字タイルには、News Gothicが使用されている。
News Gothicの派生フォントである「Heidelberg Gothic」は、ハイデルベルグ・グループのコーポレートフォントとして採用されている。
J.C.ペニー の委託により制作された「JCP News Gothic」は、Monotype News Gothicと調和する2つの新たなウェイトで構成されており、広告キャンペーンでの使用を目的としてデザインされた。
ステートファーム保険 の主要書体は、News Gothicを同社向けに独自調整した「SF News Gothic」である。
法律により、オハイオ州 の州章の刻銘にはNews Gothicを使用することが定められている。
脚注
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