LiteLLM

LiteLLM
LiteLLM
開発元 Berri AI
初版 2023年7月27日
リポジトリ litellm - GitHub
プログラミング
言語
Python、Rust(ゲートウェイの一部、ベータ版)
種別 LLMゲートウェイ、ソフトウェア開発キット
ライセンス MIT License(企業向け機能には別ライセンス)
公式サイト 公式ウェブサイト
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LiteLLMは、複数の大規模言語モデル(LLM)のAPIを共通の形式で利用するためのオープンソースソフトウェアである。Berri AIが開発し、Pythonのソフトウェア開発キット(SDK)と、アプリケーションからモデルへの要求を仲介するプロキシサーバーを提供する。OpenAIのAPIと互換性のある形式を採用し、モデル提供者ごとに異なる要求や応答の形式を変換する。

2023年7月に公開された。プロキシはAIゲートウェイとも呼ばれ、複数の利用者やアプリケーションによるモデルへのアクセス、利用額、要求の振り分けを一元的に管理する。モデル提供者のAPIキーとは別の仮想キーを発行し、利用者やチームに応じた制限を設定できる。

企業や大学のLLM利用基盤に組み込まれる一方、2026年には3月と10月にサプライチェーン攻撃を受け、悪意のあるコードを含む版が配布された。

背景と開発

LLMを提供する事業者ごとにAPIの仕様や応答形式が異なるため、アプリケーションで複数の提供者を利用したり、モデルを切り替えたりするには個別の対応が必要になる。LiteLLMはこの違いを共通のインターフェースで吸収することを目的とする。

開発元の説明によれば、開発の契機は、チャットボットにMicrosoft AzureやCohere(英語版)のモデルを追加し、呼び出しに失敗した場合に別の提供者へ切り替える処理を実装したことであった。提供者ごとの条件分岐が複雑になったため、呼び出しを一つのパッケージにまとめ、2023年7月27日にLiteLLMとして公開したという。

基本部分はMIT Licenseで提供されるが、リポジトリ内の企業向け機能を収めたディレクトリには別のライセンスが適用される。商用のLiteLLM Enterpriseは、ゲートウェイにシングルサインオン、管理操作の監査ログ、管理権限の委譲、技術支援などを加える形で提供されている。

2026年にはゲートウェイの一部をRustへ移す開発が進められた。The New Stackの同年10月の報道によれば、6月に示された計画は既存のPython実装を段階的に置き換えるもので、Rust側が扱えない要求にはPython側で対応する方式を採った。同月時点の公式文書ではRust実装はベータ版とされ、Pythonサーバー内で利用する方式に加えて単独のサーバーも開発されているが、後者は既存のプロキシの全機能を備える段階にはない。

構成と機能

SDKとプロキシ

Python SDKは、アプリケーション内のライブラリとしてモデルを呼び出すために用いられる。共通の関数で提供者とモデルを指定し、応答を統一した形式で受け取る。OpenAI、Anthropic、Vertex AI、Amazon Bedrockなどへの接続に対応する。ただし、OpenAI形式の引数の対応範囲は接続先のモデルによって異なり、未対応のものはエラーにするか、設定によって要求から除外する。

プロキシはアプリケーションとモデルの間に独立したサーバーとして配置する。クライアントは接続先をこのサーバーに設定し、OpenAI互換のAPIを通じて要求を送る。管理画面では、接続するモデル、仮想キー、利用状況、要求のログなどを管理する。この構成は、利用者側にOpenAI互換の接続点を示し、モデル名に応じて接続先へ要求を転送するリバースプロキシとしても説明される。

プロキシは、Model Context Protocol(MCP)に対応する外部ツールへの接続をまとめるゲートウェイとしても利用できる。複数のMCPサーバーのツールを共通の接続先から呼び出し、キーやチームごとに利用権限を管理する。

要求の振り分けと利用管理

要求の振り分けを担うルーターは、複数のモデルの稼働先に対する負荷分散を行う。要求が失敗した際の再試行や、別の稼働先・提供者に切り替えるフォールバック、タイムアウト、一時的に接続先を利用対象から外す処理などを備える。複数のサーバー間で利用制限や接続先の状態を共有する仕組みにはRedisを利用できる。

仮想キーは、ゲートウェイを利用するために発行する認証情報である。各キーにチーム、予算、利用可能なモデルを関連付けられ、管理画面からチーム・キー・モデルごとの費用や要求数、トークン数を確認できる。個々の要求についても費用、所要時間、利用したモデルなどを記録する。キー、利用者、チームごとの利用額の追跡にはデータベースを用い、モデルごとの単価と使用量から費用を算出する。

利用と評価

InfoWorldの2025年の解説は、複数のクラウドにまたがるモデルの利用と、組織内の費用管理を主な用途として挙げた。モデル提供者ごとの実装を共通化し、費用の把握や障害時の切り替えに伴う開発作業を減らす点に着目している。

アリゾナ大学では、2024年5月に試験導入した教育・研究用のLLM基盤「AI-VERDE」にLiteLLMを組み込んだ。2025年の開発者らの報告によれば、LiteLLMを通じて、学内のGPU群で動かすモデルと外部の商用サービスへのアクセスをまとめ、プロキシ用のAPIキーによって利用権限と予算を管理している。これはLiteLLM自体がモデルの計算を担う構成ではなく、学内のモデルの実行にはvLLM(英語版)を用い、LiteLLMをその前段に置く構成である。

ソフトウェア開発を支援するCline(英語版)では、組織の管理者がLiteLLMをモデルへの接続先として設定する機能が用意されている。拡張機能では、組織で指定したプロキシやモデルの設定を利用者に適用できる。

他方、既存のシステムに組み込んだ後の更新が課題になった例もある。The New Stackは、LiteLLMを基盤としていたRespanが、2026年1月の更新後に断続的な接続障害を経験し、更新を差し戻したと報じた。同社の説明では原因を特定できず、その後は修正を個別に取り込む方式に変え、10月にはRustで新たに実装したゲートウェイを公開したという。

セキュリティ上の事件

2026年3月のサプライチェーン攻撃

2026年3月24日、Python Package Indexに悪意のあるコードを含むLiteLLMの1.82.7と1.82.8が公開された。BleepingComputerは、セキュリティ企業Endor Labsの調査と同紙の解析を基に、これらが認証情報を盗むプログラムを含み、脆弱性検査ツールTrivyの侵害に続くTeamPCPの攻撃と関連すると報じた。

不正なプログラムはSSHの鍵、クラウドの認証情報、Kubernetesの秘密情報などを収集する。1.82.8には、LiteLLMを直接呼び出さなくてもPythonの起動時に実行される仕組みも含まれていた。両版はPyPIから削除された。AI向けの人材・データ事業を行うMercor(英語版)は、このLiteLLMに関係するサプライチェーン攻撃の影響を受けたと公表し、外部の専門家を交えた調査を進めているとした。

2026年10月のサプライチェーン攻撃

同年10月21日には配布工程が侵害され、認証情報を盗むプログラムと遠隔操作用のトロイの木馬を含む1.107.0がPyPIおよびコンテナの配布先へ公開された。The Recordが伝えたセキュリティ企業Wizの調査では、不正なパッケージはPyPI上で約2時間配布され、その間に約4万9000回ダウンロードされた。ただし同メディアの10月26日付の記事では、この版に関係する被害を公に認めた組織は確認されていないとしている。

開発元が10月23日に公表した原因調査によれば、5月27日に社内のエージェント実行基盤のマスターキーを誤って公開リポジトリに含め、該当するコミットを取り除いた後もキーを失効させていなかった。攻撃者は10月10日にそのキーで基盤へアクセスし、GitHubの組織所有者の権限を持つトークンを取得した。さらに別の保守担当者のトークンも盗み、複数の担当者による操作と承認を装って不正な版を公開したという。開発元は不正な配布物を取り下げるとともに、内部システムと外部サービスのトークンを失効させる対応を表明した。

脚注

[脚注の使い方]
  1. 1 2 3 4 5 Janakiram MSV (2025年5月15日). “LiteLLM: An open-source gateway for unified LLM access” [LiteLLM:LLMへのアクセスを共通化するオープンソースのゲートウェイ]. InfoWorld (英語). 2026年10月9日時点のオリジナルよりアーカイブ. 2026年10月28日閲覧.
  2. 1 2 3 “About LiteLLM” [LiteLLMについて]. LiteLLM (英語). 2026年10月12日時点のオリジナルよりアーカイブ. 2026年10月28日閲覧.
  3. 1 2 3 “Getting Started” [入門]. LiteLLM documentation (英語). LiteLLM. 2026年10月27日時点のオリジナルよりアーカイブ. 2026年10月28日閲覧.
  4. 1 2 “[Beta] Rust AI Gateway” [[ベータ版]Rust製AIゲートウェイ]. LiteLLM documentation (英語). LiteLLM. 2026年10月27日時点のオリジナルよりアーカイブ. 2026年10月28日閲覧.
  5. 1 2 “LICENSE” [ライセンス]. GitHub (英語). Berri AI. 2026年10月19日時点のオリジナルよりアーカイブ. 2026年10月28日閲覧.
  6. 1 2 3 “LiteLLM AI Gateway” [LiteLLM AIゲートウェイ]. LiteLLM documentation (英語). LiteLLM. 2026年10月24日時点のオリジナルよりアーカイブ. 2026年10月28日閲覧.
  7. Mithun, Paul; Noriega-Atala, Enrique; Merchant, Nirav; Skidmore, Edwin (2025年2月11日). “AI-VERDE: A Gateway for Egalitarian Access to Large Language Model-Based Resources For Educational Institutions” [AI-VERDE:教育機関における大規模言語モデルを用いたリソースへの公平なアクセスのためのゲートウェイ] (英語). arXiv:2502.09651v1 [cs.CL].(プレプリント)
    1. 1 2 2.1節、4節
    2. 1 2 2.1節
  8. 1 2 Martin, Alexander (2026年10月26日). “Popular AI tool LiteLLM says unrevoked key allowed hackers to target users” [人気のAIツールLiteLLM、失効させていなかったキーが利用者を狙う攻撃を可能にしたと説明]. The Record (英語). 2026年10月28日閲覧.
  9. ↑ “Enterprise” [企業向け版]. LiteLLM documentation (英語). LiteLLM. 2026年10月25日時点のオリジナルよりアーカイブ. 2026年10月28日閲覧.
  10. 1 2 Caswell, Amanda (2026年10月20日). “Respan spent two years building on LiteLLM. One upgrade made it start over” [RespanはLiteLLMを基盤に2年間開発したが、1回の更新で作り直すことになった]. The New Stack (英語). 2026年10月22日時点のオリジナルよりアーカイブ. 2026年10月28日閲覧.
  11. ↑ “Input Params” [入力パラメーター]. LiteLLM documentation (英語). LiteLLM. 2026年10月20日時点のオリジナルよりアーカイブ. 2026年10月28日閲覧.
  12. ↑ “MCP Overview” [MCPの概要]. LiteLLM documentation (英語). LiteLLM. 2026年10月27日時点のオリジナルよりアーカイブ. 2026年10月28日閲覧.
  13. ↑ “Router - Load Balancing” [ルーター:負荷分散]. LiteLLM documentation (英語). LiteLLM. 2026年10月19日時点のオリジナルよりアーカイブ. 2026年10月28日閲覧.
  14. ↑ “Virtual Keys” [仮想キー]. LiteLLM documentation (英語). LiteLLM. Setup、Spend Tracking節. 2026年10月19日時点のオリジナルよりアーカイブ. 2026年10月28日閲覧.
  15. ↑ “Configure LiteLLM Provider (Admin)” [LiteLLMプロバイダーの設定(管理者向け)]. Cline documentation (英語). Cline. 2026年4月19日時点のオリジナルよりアーカイブ. 2026年10月28日閲覧.
  16. 1 2 Abrams, Lawrence (2026年3月24日). “Popular LiteLLM PyPI package backdoored to steal credentials, auth tokens” [人気のLiteLLMのPyPIパッケージにバックドア、認証情報や認証トークンを窃取]. BleepingComputer (英語). 2026年9月26日時点のオリジナルよりアーカイブ. 2026年10月28日閲覧.
  17. ↑ Smalley, Suzanne (2026年4月1日). “Mercor confirms security incident tied to LiteLLM supply chain attack” [Mercor、LiteLLMへのサプライチェーン攻撃に関連したセキュリティ事案を確認]. The Record (英語). 2026年7月23日時点のオリジナルよりアーカイブ. 2026年10月28日閲覧.
  18. 1 2 Lyons, Jessica (2026年10月26日). “LiteLLM supply chain attack started with an exposed master key” [LiteLLMへのサプライチェーン攻撃は公開されたマスターキーから始まった]. The Register (英語). 2026年10月28日閲覧.
  19. 1 2 Jensen, Oliver; Wang, Mateo (2026年10月23日). “The attack chain behind the v1.107.0 LiteLLM release” [LiteLLMのv1.107.0リリースをめぐる攻撃の経路]. LiteLLM documentation (英語). LiteLLM. 2026年10月26日時点のオリジナルよりアーカイブ. 2026年10月28日閲覧.

関連項目

外部リンク