| ASTRO-G | |
|---|---|
| 所属 | JAXA(ISAS)、NAOJ |
| 状態 | 開発中止 |
| 目的 | VLBI観測、天体の電波観測 |
| 設計寿命 | 3年(目標) |
| 打上げ機 | H-IIAロケット |
| 打上げ日時 | 2012年度後半(当初計画) |
| 先代 |
はるか、 きく8号(アンテナ展開技術) |
| 本体寸法 | 展開時:2×18.1×9.7m |
| 質量 | 約1,200kg(推薬含む) |
| 発生電力 | 約1,400W(EOL) |
| 軌道 | 楕円軌道 |
| 近点高度 (hp) | 1,000km |
| 遠点高度 (ha) | 25,000km |
| 軌道傾斜角 (i) | 31度 |
| 軌道周期 (P) | 7.5時間 |
ASTRO-G(第25号科学衛星)は、日本が計画していた電波天文衛星。2008年に開発を開始したが、技術的な課題が浮上し、開発を継続しても要求性能に達しないと見込まれる上に、スケジュール延伸、大幅な予算超過となることから2011年に開発中止となった。
先代の電波天文観測衛星はるかによって実施された国際的な天体観測プロジェクト宇宙VLBI計画VSOPを発展させた「VSOP-2」の中核となる宇宙望遠鏡として、日本の国立天文台 (NAOJ) と宇宙航空研究開発機構 宇宙科学研究本部 (JAXA/ISAS) を中心として開発していた。プロジェクト開始時は2012年度打上げ・衛星開発費140億円を予定していたが、プロジェクト中止を判断した時点の試算では早くとも2016年度打上げ・232億円(いずれも打ち上げ費用を含まない)と見込まれた。
先代のVLBI観測衛星はるかは史上初のVLBI衛星として、宇宙研(ISAS)における工学実験衛星シリーズのMUSESを冠した「MUSES-B」の名称であったが、本衛星は天文衛星シリーズのASTROを冠した「ASTRO-G」の名称となり、工学的な技術実証としてではなく理学的な科学観測衛星に位置づけられている。
ASTRO-Gが中核をなすVSOP-2計画では、VSOPと比較して高い周波数帯の43GHz帯(波長0.7cm)、反射鏡の鏡面精度0.4cm rms(表面粗さ)により、10倍の観測精度となる40マイクロ秒角の高分解能で天体現象を直接観測する計画であった。
なおVLBI(超長基線電波干渉法)とは、複数の電波望遠鏡で同一の天体を同時観測することで仮想的な一つの巨大な望遠鏡の観測精度を得る超解像技術であり、その望遠鏡の大きさは離れた距離(基線)の長さに依存する。宇宙VLBIでは電波望遠鏡の一つを宇宙に置くことで、地球の直径の何倍もの大きさの望遠鏡を設置したのと同じ精度で天体観測を行う技術であり、ASTRO-Gによって口径35,000km相当(遠地点高度25,000km+地球の直径12,000km)の性能が得られると期待された。
ASTRO-Gは観測精度を決定づける大型展開アンテナの基本設計において複数の技術的な課題(経年劣化・アンテナ展開の非再現性等)が明らかになり、ミッション成立性の再評価を実施していた。総合的な判断として、打ち上げ後1.5年の間アンテナの鏡面精度が1.0mm rms(計画設計寿命3年、サイエンス要求0.4mm rms)であれば現実的に達成可能であると判断されたが、この鏡面精度では43GHz帯での感度が5分の1程度に低下することから、サクセスクライテリアのうちフルサクセスの一部の項目が達成不可能であると見込まれた。国立天文台側は性能低下の少ない22GHz帯でも観測意義があるとの考えはあったが、要求性能を妥協しても開発予算・期間とも倍増することから宇宙研側として他の宇宙科学ミッションへの圧迫の可能性もあるとし、JAXA経営層へ中止を申し入れた形となった。
主鏡は軌道上展開式の9m口径電波反射鏡である。観測波長がミリメートルオーダーであるため、反射鏡は金メッキされたメッシュで構成される。7個の小さなモジュールが組み合わさって大きな反射鏡を構成する構造になっており、これにはきく8号(ETS-VIII)の技術が使われる。ただし個々のモジュールはきく8号ではモリブデン線であったが、鏡面精度を上げるためこれをタングステン線に替え、表面を金メッキする。