DON'T TRUST OVER THIRTY

『DON'T TRUST OVER THIRTY』
ムーンライダーズ の スタジオ・アルバム
リリース
ジャンル ニューミュージック
時間
レーベル T.E.N.T / CANYON
プロデュース ムーンライダーズ
チャート最高順位
オリコンアルバムランキング38位
ムーンライダーズ アルバム 年表
THE WORST OF MOONRIDERS
(1986年)
DON'T TRUST OVER THIRTY
(1986年)
最後の晩餐
(1991年)
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『DON'T TRUST OVER THIRTY』(ドント・トラスト・オーバー・サーティー)は、日本のロックバンド・ムーンライダーズの11枚目のオリジナル・アルバム。1986年11月21日にT.E.N.T / キャニオン・レコード(LP:C28A0527、CD:D32A0246)より発売された。通称は『ドントラ』。

概要・背景

1986年のバンド結成10周年を記念してリリースされた作品である。しかし、結成10周年の記念作でありながら回顧的・祝祭的なアニバーサリー感は皆無であり、過激で急進的な実験性と緊迫感が全面に押し出された作品となった。

タイトル『DON'T TRUST OVER THIRTY』は、1960年代の米国ヒッピー・カウンターカルチャー運動のスローガンであった「Don't trust anyone over thirty(30歳以上(大人)を信じるな)」に由来する。当時メンバー全員が30代に達していたことから、自虐と反骨精神、そして「30代を越えた自分たちのリアルさを見せつけてやる」というセルフパロディ的な反骨の意を込めて命名された。

本作のリリースとそれに伴うライブツアーを終えた後、ムーンライダーズは約5年間に及ぶ長期の活動休止期間(「凍結」)に入ったため、1980年代におけるバンド活動の締めくくりとなるスタジオ・アルバムとなった。

音楽性・制作

本作の制作にあたっては、ルールとして「メンバー各自の得意分野(趣味)の禁止」という明確なコンセプトが掲げられた。各自が慣れ親しんだプレイや得意な作風をあえて封印し、その制限の中で表現を模索するという試みがなされた。

また、メンバー全員による共同制作・作曲名義として「E.D MORRISON」(イー・ディー・モリソン、Moonridersのアナグラム)が使用され、個人の楽曲と全員による共同作業の楽曲が混在する極端で尖った構造を作り出している。“E.D MORRISON”は2026年に発売されたアルバム『e.d. morrison』のタイトルに使われた。

サウンド面では、デジタル・シーケンサーやサンプラー、ハードなギター・サウンド、ニュー・ウェイヴ経由のファンクネスなどを積極的に導入。ポップな旋律とアヴァンギャルドなコラージュ・手法が入り交じる、硬質でメカニカルかつドライな質感のサウンドを展開している。

作詞陣・ゲストには多彩な人物が参加しており、漫画家の蛭子能収(「だるい人」作詞)、サエキけんぞう(「9月の海はクラゲの海」作詞)、滋田みかよ(「A FROZEN GIRL, A BOY IN LOVE」作詞)のほか、コーラスとして直枝政広(カーネーション)やボーカルとして宙也(De+LAX)が参加している。

評価・影響

結成10周年という節目の時期でありながら商業主義や妥協に走らず、自らの肉体と思考を追い込むような尖った音楽性を提示した本作は、ムーンライダーズのディスコグラフィの中でも屈指の壮絶作・傑作として高く評価されている。

後続のカルチャーシーンや演劇界にも影響を与えており、2003年にはケラリーノ・サンドロヴィッチ(KERA)主宰の劇団「ナイロン100℃」により、本作のタイトルおよび世界観にインスパイアされたミュージカル・舞台演劇『ドント・トラスト・オーバー30』が上演された。同舞台では鈴木慶一が音楽監督を務め、鈴木博文がバンド演奏に参加するなど直接的なコラボレーションが行われた。

日本のシンガーソングライターこっちのけんとは、本作をフェイバリットにあげていて、「本作を聴いて何度も背中を押されて救われた」、「このアルバムに出会っていなかったら今の自分とは違っていたし、はいよろこんでという曲は生まれてなかった」と語っている程に影響を受けたという。

収録曲

SIDE A

  1. CLINIKA (インストゥルメンタル)  – (4:29)
    作曲:かしぶち哲郎
    • かしぶち哲郎作曲のインストゥルメンタル。本来はボーカル入りの楽曲として制作されていたが、かしぶちの体調不良による入院のためボーカル録音が間に合わず、バッキング・トラックのみで収録された。後にベスト盤『かしぶち哲郎 SONGBOOK』等でボーカル入りのバージョンが披露された。
  2. 9月の海はクラゲの海  – (4:58)
    作詞:サエキけんぞう、作曲:岡田徹
    • サエキけんぞう作詞、岡田徹作曲。繊細で切ないメロディと洗練されたテクノ・ポップ・サウンドが融合したテクノ歌謡の代表曲。ベスト盤等にも度々収録されるバンドの人気曲の一つである。
  3. 超C調  – (3:05)
    作詞・作曲:白井良明
    • 白井良明作詞・作曲。過去作品のボイス・サンプリングやコラージュ、高速ギターとオルガンが激しく交錯する極めて実験的かつアヴァンギャルドなナンバー。
  4. だるい人  – (4:13)
    作詞:蛭子能収、作曲:E.D MORRISON
    • 蛭子能収作詞、E.D MORRISON作曲。漫画家・蛭子能収による「出来れば何にもしたくない 金さえあればの四十代」といったサラリーマンのドライで本音に満ちた歌詞と、クレイジーキャッツを思わせるコミカルでありながら無機質なトラックが合致したナンバー。
  5. マニアの受難  – (4:14)
    作詞・作曲:鈴木慶一
    • 鈴木慶一作詞・作曲。「ポケットにも入れられない物が好き」といったマニアの業や哀歓を描いた楽曲。後年に制作されたムーンライダーズのドキュメンタリー映画『マニアの受難』(2008年公開)のタイトル元となった。

SIDE B

  1. DON'T TRUST ANYONE OVER 30  – (6:43)
    作詞:鈴木博文、作曲:E.D MORRISON
    • 鈴木博文作詞、E.D MORRISON作曲。アルバムのタイトル曲。力強いニュー・ウェイヴ・ファンクのビートに乗り、30代を迎えた男の家庭劇や狂気、家出や葛藤を描いた歌詞とともに「30歳以上は信じるな」というフレーズが連呼されるパワフルな名曲。
  2. ボクハナク  – (5:30)
    作詞・作曲:鈴木博文
    • 鈴木博文作詞作曲、リードボーカル。アコースティック・ギターの切ない音色とセンチメンタルなメロディが際立つ、鈴木博文ならではの繊細で箱庭的なナンバー。タイトルは「僕は泣く」を意味し、男の孤独や寂寥感を描いた詩的な歌詞世界が展開される。後半のコーラス(バック・ボーカル)には、当時ムーンライダーズを深く敬愛していたカーネーションの直枝政広(当時:直枝実和子)が参加しており、両者の密接な交流を示すエピソードとなっている。
  3. A FROZEN GIRL, A BOY IN LOVE  – (4:09)
    作詞:滋田みかよ、作曲:武川雅寛
    • 滋田みかよ作詞、武川雅寛作曲・リードボーカル。冬の海辺を舞台にしたロマンチックかつ冷ややかな緊張感を湛えたミディアム・ナンバー。
    • 武川特有の叙情的なメロディセンスと渋みのあるボーカルが際立つ佳曲で、2018年にリリースされた武川のソロアルバム『a journey of 28days』においてセルフカバーされた。
  4. 何だ?この、ユーウツは!!  – (4:56)
    作詞:鈴木慶一・鈴木博文、作曲:E.D MORRISON
    • 鈴木慶一・鈴木博文作詞、E.D MORRISON作曲。カオスとカタルシスが交錯する重厚なラスト・トラック。作詞後半は鈴木博文が手掛け、後半のボーカルには宙也(De+LAX)が参加している。当時の精神状態が色濃く反映されており、鈴木慶一は後に「どうやって演奏したのかもわからない。二度と演奏したくない曲」と回想している。

脚注

  1. 1 2 3 4 5 6 “DON'T TRUST OVER THIRTY - DISCOGRAPHY > ALBUM > MOONRIDERS”. moonriders official web site. 2026年8月31日閲覧。
  2. 1 2 “ムーンライダーズ / DON'T TRUST OVER THIRTY”. CDJournal. 2026年8月31日閲覧。
  3. 1 2 3 “DON'T TRUST OVER THIRTY : ムーンライダーズ”. HMV&BOOKS online. 2026年8月31日閲覧。
  4. 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 “【年齢のうた】ムーンライダーズ その5 30代から中年期”. note (2023年9月6日). 2026年8月31日閲覧。
  5. ↑ “鈴木慶一のルーツをたddる”. 音楽ナタリー (2021年3月19日). 2026年8月31日閲覧。
  6. 1 2 3 4 5 “ムーンライダーズ アルバム・レビュー”. OTOTOY (2011年12月7日). 2026年8月31日閲覧。
  7. ↑ “ムーンライダーズのドキュメンタリー映画「マニアの受難」DVD化”. 音楽ナタリー (2008年3月27日). 2026年8月31日閲覧。
  8. ↑ “もっとムーンライダーズを聴いていける10曲”. ystmokzkのブログ (2019年6月30日). 2026年8月31日閲覧。
  9. ↑ “ムーンライダーズ武川雅寛、6年ぶりソロアルバムは死に直面した28日間のドキュメンタリー”. 音楽ナタリー (2018年10月16日). 2026年8月31日閲覧。

外部リンク

Moonriders Web Server (Official Fan Site)
その他