| 開発元 | Amazon Web Services |
|---|---|
| 初版 | 2025年7月14日(プレビュー版) |
| 最新版 |
IDE 1.0.437 / CLI 2.21.0
/ 2026年9月1日 |
| 対応OS | Microsoft Windows、macOS、Linux、ウェブブラウザ、iOS(早期アクセス) |
| 種別 | 統合開発環境、AIエージェント |
| ライセンス | プロプライエタリ(Kiro CrewはApache License 2.0) |
| 公式サイト |
kiro |
Kiro(キーロ)は、Amazon Web Services(AWS)が開発・提供する、AIエージェントを統合したソフトウェア開発環境である。自然言語の指示から要件・設計・タスクの文書を生成し、それを基準にコードを実装する「仕様駆動開発」(spec-driven development)を特徴とする。2025年7月14日にVisual Studio Code系の統合開発環境(IDE)としてプレビュー公開され、同年11月17日(米国時間)に一般提供が始まった。その後、ターミナル向けのKiro CLI、ブラウザで動作するKiro Web、iOSアプリ、オープンソースの常駐型ワークスペースKiro Crewが加わり、2026年にはこれらを単一のエージェント基盤から動かす統合が進められている。
Kiroは、AWS内の小規模なチームが開発した製品で、AWSのバイスプレジデント(開発者エージェントおよびエクスペリエンス担当)のディーパク・シン(Deepak Singh)と、プロダクトリードのニキル・スワミナサン(Nikhil Swaminathan)が2025年7月14日にブログ記事で発表した。発表は独自ドメインkiro.devで行われ、Amazonの社名は本文に現れず、サイト末尾のAWSのロゴとリンクだけが両者の関係を示していた。発表に先立つ2025年5月には、Business Insiderが、AWSは「Kiro」というコードネームのAIコード生成ツールを開発中だと報じていた。
AWSは、プロンプトから手早く動くものを作る「バイブコーディング」がプロトタイプ作りには向く一方、前提や設計判断が文書化されず本番システムへ移しにくいという問題意識から、要件・設計・タスクを明文化してからエージェントに実装させる手法をKiroの中核に置いた。コード補完とチャットを中心とする同社のAmazon Q Developerとは異なり、Kiroはエージェントが自律的に作業を進めて文書化まで行う点に重きを置くと報じられている。Amazon Q DeveloperのIDE向け拡張機能が持っていた機能はKiroでも利用でき、AWSはQ Developerからの移行ガイドを公開している。
Kiro IDEは、Visual Studio Codeのオープンソース版であるCode OSSを基に作られており、VS Codeの設定やテーマ、Open VSX互換の拡張機能をそのまま利用できる。利用にAWSアカウントは必要なく、GitHub、Google、AWS Builder ID、またはAWS IAM Identity Centerのいずれかでログインする。TechTargetは、AWSが自社の開発者ツールをAWSと密接に結び付けてきたことに照らすと、KiroとAWSの結び付きが緩やかである点は同社の戦略として珍しいとするアナリストの見方を伝えている。
AIモデルには当初AnthropicのClaude(Claude Sonnet 3.7および4.0)が使われ、その後OpenAIのGPT-5.6やオープンウェイトモデルを含む複数のモデルから選べるようになった。Kiro本体はプロプライエタリソフトウェアであるが、2026年8月に公開されたKiro CrewはApache License 2.0のオープンソースソフトウェアとしてGitHubで開発されている。
Kiroの「スペック」(spec)は、1つの機能について3つのMarkdown文書を段階的に生成する仕組みである。
スペックはコードの変化に合わせて更新でき、実装中に設計文書の更新が止まって実態と食い違う問題を防ぐことを狙っている。スペックを使わず会話的にコードを書く「バイブ」モードも併存し、エージェントが承認なしに変更を進める自動操縦(Autopilot)と、変更ごとに承認する監督モードを切り替えられる。2026年2月には、既存アプリケーションの不具合修正に向けた「バグ修正スペック」など、目的別のスペックの種類が追加された。
2025年11月の一般提供に合わせて、生成されたコードが仕様どおりに振る舞うかを測る「プロパティベーステスト」が導入された。EARS記法の要件から検証すべき性質(プロパティ)を抽出し、ランダムに生成した多数の入力で数百から数千回のテストを実行して、単体テストでは漏れがちなエッジケースを確認できるとされる。反例が見つかった場合は実装を更新するか、仕様・コード・テストのどれを直すべきかを提示する。
2026年5月には、コードを書く前に要件そのものの不備を検出する「要件分析」(Requirements Analysis)が追加された。AWSは要件の不備を、抽象度の不適切さ、曖昧さ、要件同士の矛盾、入力空間の一部が未定義のままになる不完全さの4種類に分類し、大規模言語モデルで要件を形式論理に変換し、SMTソルバーによる自動推論で矛盾や欠落を検出すると説明している。
「エージェントフック」は、ファイルの保存・作成・削除や手動の操作を契機にエージェントへ処理を委ねる、イベント駆動の自動化である。Reactコンポーネントを保存したときにテストファイルを更新する、APIエンドポイントを変えたときにREADMEを更新する、コミット前に認証情報が含まれていないか確認する、といった用途が例として挙げられている。フックの定義をリポジトリに含めれば、同じ品質チェックがチーム全体に適用される。2026年2月からは、エージェントがツールを呼び出す前後に介入するフックも設定できる。
「ステアリング」は、コーディング規約やアーキテクチャ、使用する技術などをMarkdown文書として.kiro/steeringに置き、エージェントの振る舞いをプロジェクト全体で一貫させる仕組みである。2025年11月までに、複数のプロジェクトに共通する設定をまとめる「グローバルステアリング」が追加された。外部ツールとの接続にはModel Context Protocol(MCP)を使い、ローカルのサーバーに加えて2025年10月からリモートのMCPサーバーにも対応した。
2025年12月に導入された「Powers」は、MCPサーバー、ステアリング文書、フックを1つの束にまとめ、会話中に関連するキーワードが現れたときにだけ読み込む仕組みである。多数のMCPサーバーを常時接続するとツール定義がコンテキストウィンドウを圧迫するという問題への対処として位置付けられており、公開時のパートナーにはDatadog、Dynatrace、Figma、Neon、Netlify、Postman、Supabase、Stripeなどが名を連ねた。2026年2月のバージョン0.9では、特定の作業に専念する「カスタムサブエージェント」と、オープンな規格に沿った指示の束「Agent Skills」の取り込みが加わった。
このほか、エージェントが行った変更を任意の時点まで巻き戻す「チェックポイント」(2025年11月)、長い会話がモデルのコンテキスト上限に近づいたときに自動で要約する機能(2025年12月)、複数のプロジェクトルートを1つのワークスペースで扱うマルチルートワークスペースなどがある。
Kiroの既定の設定では、複数の基盤モデルと特定の処理に特化したモデルを組み合わせ、意図の判定やキャッシュなどの技術で品質・速度・コストの均衡を取るとAWSが説明する「Auto」と呼ばれるエージェントがプロンプトを処理する。利用者は個別のモデルを指定することもでき、2026年9月時点ではAnthropicのClaude Opus 5・Sonnet 5・Haiku 4.5などのClaude各モデル、2026年7月に初めて追加されたOpenAIのGPT-5.6(Sol・Terra・Lunaの3種)、DeepSeek 3.2、MiniMax M2.5、GLM-5、Qwen3 Coder Nextなどのオープンウェイトモデルが選べる。モデルごとにクレジットの消費倍率が異なり、Autoを1倍として、Claude Opus系は2.2倍、オープンウェイトモデルは0.05倍から0.5倍などと設定されている。
Code OSSを基にしたデスクトップアプリケーションで、Windows、macOS、Linuxに対応する。プレビュー公開時のバージョンは0.1で、2026年6月25日に公開されたバージョン1.0では、エージェントが実行できる操作を種類ごとに許可・拒否する権限モデル、複数のエージェントセッションを並べて扱う「Agent Focus」モード(実験的機能)、Markdownで定義するカスタムエージェントなどが導入された。
2025年11月17日の一般提供と同時に公開されたターミナル向けのエージェントで、Amazon Q Developer CLIのエージェント機能(エージェントモード、MCP、ステアリング、カスタムエージェント)の技術を引き継ぎ、ソーシャルログインやAutoの対応を加えたものである。IDEと同じ.kiroディレクトリの設定を共用でき、公開当初はmacOSとLinuxに対応した。2026年2月にはエディタとAIエージェントの通信を標準化するAgent Client Protocol(ACP)に対応し、JetBrains製IDE、Zed、Neovim、Emacs、EclipseなどACPをサポートする他のエディタからKiroのエージェントを使えるようになった。2026年4月13日のバージョン2.0でWindowsへ対応し、APIキーを使ってCI/CDパイプラインなどから対話なしに実行するヘッドレスモードが追加された。2026年8月時点では、後述の統一されたエージェントハーネス上で動くバージョン3が、2.x系と並行して早期公開されている。
ウェブブラウザからapp.kiro.devにアクセスして使う形態で、2026年5月18日に有料プランの利用者向けにプレビュー公開され、同年9月1日に一般提供となった。利用者がGitHubまたはGitLabのリポジトリを選んで指示を出すと、セッションごとに用意される隔離されたクラウド上のサンドボックスでエージェントがコードを書き、プルリクエストを作成する。1つのセッションで複数のリポジトリにまたがる変更を扱え、対話しながら進める既定モード、要件・設計・実装計画を先に固めるスペックモード、計画から実装とプルリクエスト作成までを委ねる自律モードの3つの働き方がある。変更が既定ブランチへ自動的にマージされることはなく、最終的な確認は利用者が行う。
自律モードの前身は、2025年12月2日にラスベガスで開かれたAWS re:Invent 2025でAWS最高経営責任者のマット・ガーマン(Matt Garman)が発表した「Kiro autonomous agent」である。AWSはこれを、セッションをまたいで文脈を保持し、数時間から数日にわたって独立して作業する「フロンティアエージェント」の1つとして、セキュリティ担当のAWS Security Agent、運用担当のAWS DevOps Agentとともにプレビュー公開した。2026年5月、この自律エージェントは独立した製品ではなくKiro Webの自律モードとして統合された。
2026年6月17日、ニューヨークで開かれたAWS Summitに合わせて発表されたiOS向けアプリで、クラウド上で動くセッションの開始・監視・操作、差分の確認、変更の承認をiPhoneから行える。Apple TestFlightを通じた早期アクセスとして提供されている。
2026年8月4日に公開された、利用者の手元または管理下のリモートマシンで常駐して動く開発用ワークスペースである。Amazon社内の「MeshClaw」という個人的な副次プロジェクトとして始まり、社内での貢献が積み重なったことを機にオープンソース化された。デスクトップアプリ、ウェブダッシュボード、CLIから操作でき、Slack、Discord、Telegram、Microsoft Teamsなどの連絡手段からも同じ作業を続けられる。複数の工程からなるタスクの無人実行、定期実行、システムの監視を担い、既存の.kiro設定を読み込む。
当初、IDE、CLI、Webの各クライアントは別々のエージェント実装を持っており、IDEはCode OSSの拡張機能に合わせてTypeScriptで、CLIは性能のためにRustで、Webは研究成果を取り込みやすいPythonで書かれていた。AWSによれば、セッションの形式や権限の設定方法が食い違い、新機能を3回作る必要があったことから、同社は2026年にこれらを単一の「エージェントハーネス」へ統合する作業を進めた。ハーネスはクライアントとは別のプロセスとして動き、2026年6月にバージョン1.0となったAgent Client Protocolで各クライアントと通信する。2026年8月時点で新しいハーネスはKiro IDE 1.0、Kiro Web、iOSアプリ、早期公開のKiro CLIバージョン3で使われている。AWSはこれによって、ノートパソコンで始めたセッションをクラウドで続け、スマートフォンから確認するといった使い方を目指しているが、セッションを環境間で移す機能などは同時点で開発中としている。
プレビュー期間中は上限付きで無料だった。発表時点で計画されていた料金は、月50回のエージェント利用が可能な無料版、月19ドルのPro、月39ドルのPro+の3段階だったが、2025年8月に無料、Pro(月20ドル)、Pro+(月40ドル)、Power(月200ドル)の4段階に改められ、同月15日から有料プランの提供が始まった。当初は「スペック」と「バイブ」の要求回数を別々に数えていたが、同年9月15日に単一の「クレジット」への統一が発表され(10月1日までに順次移行)、プロンプトの複雑さに応じて0.01クレジット単位で消費する方式になった。月間クレジットは無料50、Pro 1,000、Pro+ 2,000、Power 10,000で、有料プランでは1クレジット0.04ドルの追加購入ができる。2026年6月には月100ドルで5,000クレジットのPro Maxが加わった。
組織向けには、一般提供と同時にAWS IAM Identity Centerによるログインと、AWSマネジメントコンソールから利用者へPro・Pro+・Powerのサブスクリプションを割り当てて請求を一元化する管理機能が提供された。Amazon Q Developer Proの契約者はその契約でKiroを利用できる。2026年2月には、OktaやMicrosoft Entra IDなど外部のIDプロバイダーによる認証と、米国政府機関向けのAWS GovCloud (US)リージョンでの提供が加わった。それ以前の提供リージョンは米国東部(バージニア北部)と欧州(フランクフルト)の2つだった。AWSは、IAM Identity Centerまたは外部IDプロバイダーを通じて利用する有料プラン利用者のコンテンツはサービス改善に使わない一方、無料プランと、ソーシャルログインやAWS Builder IDで利用する契約者のコンテンツは、設定で拒否しない限りサービス改善に利用し得るとしている。2026年9月には、KiroがAWSのISO/IEC 27001認証の範囲に含まれた。
このほか、大学生向けに1年間・月1,000クレジットを無料で提供する「Kiro Students」(2026年3月・アリゾナ州立大学、カーネギーメロン大学など11校から開始)がある。スタートアップ向けには、2025年11月の一般提供時に1年分のPro+クレジットを無償提供するプログラムが始まり、当初はプレシードからシリーズBまでの資金調達を済ませたスタートアップが最大100ユーザー分を申請できたが、応募多数のため受付を締め切った。2026年4月には、対象を初期段階からシリーズAまでのスタートアップ、規模を最大30ユーザーとして再開された。
AWSによれば、2025年7月のプレビュー公開から5日間で10万人を超える開発者がKiro IDEを試し、その後の90日間で数十万人がウェイトリストに登録した。需要が想定を上回ったため、2025年8月からウェイトリスト登録者へ招待コードを段階的に配布し、10月16日にウェイトリストを廃止して誰でも利用できるようにした。GeekWireは2025年11月の一般提供を、AWSの通常の製品発表とは異質な「思いがけないインディーヒット」と評した。
InfoQは2025年8月、Kiroの仕様駆動のワークフローをバイブコーディングの弱点である文書化の欠如や一貫性の不足を補うものとして紹介し、仕様駆動によって開発が遅くなった、単純な用途に対して過剰な量のコードが生成されたとする開発者の声と、問題を明確に考えることを促されたとする声の双方を取り上げた。同記事が引用した開発者のYehuda Cohenは、複雑さに圧倒されたエージェントが根本原因の解決より回避策を選ぶことがあり、開発者が進行を管理する必要がある点で「強力だが手放しではない」と評している。TechTargetは、Forrester Researchのアナリストが、AWS向けのチュートリアルのコードをMicrosoft Azureで動くように書き換えさせたところ問題なく動作したとしてAWS以外の利用者にも有用だと評価する一方、要件が曖昧なまま開発された既存システムに適用すると問題が複雑になる可能性を指摘したことを伝えている。TechCrunchは2025年12月、Cursor、Claude Code、GitHub Copilotなど多数のAIコーディングツールが競合する市場でKiroを広めるため、AWSがスタートアップへの無償提供という手法を採ったと報じた。