| LHS 1903 | ||
|---|---|---|
LHS 1903系の想像図 | ||
| 星座 | やまねこ座 | |
| 見かけの等級 (mv) | 12.21 | |
| 変光星型 | 惑星通過による変光星 | |
| 分類 | 主系列星 | |
| 位置 元期:J2000 | ||
| 赤経 (RA, α) | 07h 11m 27.9426554168s | |
| 赤緯 (Dec, δ) | +48° 19′ 49.399087929″ | |
| 視線速度 (Rv) | 30.65±0.40 km/s | |
| 固有運動 (μ) | 赤経: -92.924 ミリ秒/年 赤緯: -570.393 ミリ秒/年 | |
| 年周視差 (π) | 28.0525 ± 0.0242ミリ秒 (誤差0.1%) | |
| 距離 | 116.3 ± 0.1 光年 (35.65 ± 0.03 パーセク) | |
| 絶対等級 (MV) | 8.89 | |
| 軌道要素と性質 | ||
| 惑星の数 | 4 | |
| 物理的性質 | ||
| 半径 | 0.539±0.014 R☉ | |
| 質量 | 0.538+0.039 −0.030 M☉ | |
| 表面重力 (log g) | 4.75±0.12 | |
| 自転周期 | ≤40.8 日 | |
| スペクトル分類 | M0.5VまたはdM1.5 | |
| 光度 | 0.05 L☉ | |
| 表面温度 | 3664±70 K | |
| 金属量[Fe/H] | −0.11±0.09 | |
| 年齢 | 70.8+28.7 −19.8 億年 | |
| 他のカタログでの名称 | ||
| HIP 34730、G 107-55、LSPM J0711+4819、NLTT 17491、PLX 1671.01、PM J07114+4819、TOI-1730、TIC 318022259、TYC 3396-1862-1、2MASS J07112794+4819501 | ||
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LHS 1903とは、地球からやまねこ座の方向に約116光年離れた位置にある、やまねこ座21番星の近くに存在する赤色矮星である。銀河系の厚い円盤の中に位置していると考えられている。LHS 1903は4つの太陽系外惑星を持っていることが知られている。
「LHS 1903」という名称は、ウィレム・ヤコブ・ルイテンが1979年に作成した、年間固有運動が0.5秒角以上の恒星のリストであるLuyten Half-Second catalogueに由来する。LHS 1903の周囲を公転している4つの惑星は、太陽系外惑星の命名規則に従って、主星に近い惑星から順にb・c・d・eと表記されている。
| 太陽 | LHS 1903 |
|---|---|
LHS 1903の惑星系は、その特異な構造で注目に値する。この惑星系は、一見すると逆の配置になっている。密度の高い岩石惑星eは、密度が低く揮発性物質に富む惑星cとdの軌道の外側、つまり恒星から最も離れた位置を公転している。この配置は、天王星型惑星や木星型惑星が恒星から遠い位置で形成され、時間とともに内側へ移動していくという、複数惑星系で一般的に見られる配置とは正反対である。この惑星系のもう一つの特異な点は、惑星eがスーパー・アースであることであり、銀河系の厚い円盤の中に位置している恒星は通常同サイズのミニ・ネプチューンしか持たないというこれまでの観測結果に反している。
LHS 1903系の3つの内側の惑星b・c・dは、2019年から2023年にかけてTESSによる観測で初めて検出され、その後のフォローアップ観測によってCHEOPSの観測データから4つ目の惑星eが発見された。これらの惑星はいずれもトランジット法を用いて発見された。さらに、恒星の高解像度分光観測により、ドップラー分光法を用いてこれらの惑星の正確な質量が測定された。
この系における惑星の公転周期は、c:dのペアでは2:1、d:eのペアでは7:3と、ほぼ整数比に近い値を示している。数値的な軌道進化解析によると、惑星cとdは平均運動共鳴にはないが、惑星dとeは共鳴している可能性が高い。このことは、トランジットタイミング変化(TTV)を観測した結果によっても裏付けられている。惑星bとcにはTTVは見られなかったが、惑星dとeには、より高次の7:3の共鳴に起因する可能性のある弱いTTVが見られた。
惑星の半径と質量の決定により、各惑星の平均密度を計算することが可能になり、これは惑星の組成を示す指標となる。最も内側を公転する惑星bの密度は地球よりわずかに高く、1.24+0.21
−0.19 ρ🜨(6.82+1.15
−1.04 g/cm3)であり、これにより惑星bは岩石質の地球型惑星であることが判明している。惑星c・dの密度はそれぞれ0.53+0.11
−0.09 ρ🜨(2.91+0.60
−0.52 g/cm3)と0.38+0.09
−0.08 ρ🜨(2.09+0.47
−0.43 g/cm3)と低く、これは主な組成は岩石であるが、水または水素とヘリウムからなる低密度の外層を持つという組成と一致している。最も外側を公転する惑星eは地球と同じような密度1.11+0.33
−0.31 ρ🜨(6.10+1.83
−1.71 g/cm3)を持っており、これは広範囲の大気を持たない岩石惑星であることを意味している。
ドップラー分光法を用いた観測データは、公転周期が約53.9日の別の惑星が存在する可能性を示唆している。ガイア計画が記録したアストロメトリ法を用いた観測データにノイズがほとんど見られないことから、LHS 1903系に巨大ガス惑星や褐色矮星が存在する可能性は排除されている。
| 名称 (恒星に近い順) |
質量 | 軌道長半径 (天文単位) |
公転周期 (日) |
軌道離心率 | 軌道傾斜角 | 半径 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| b | 3.28±0.42 M⊕ | 0.02656+0.00055 −0.00058 |
2.1555098+0.0000026 −0.0000029 |
0.015+0.014 −0.010 |
— | 1.382±0.046 R⊕ |
| c | 4.55+0.73 −0.69 M⊕ |
0.05387+0.00112 −0.00117 |
6.226185+0.000028 −0.000026 |
0.089+0.036 −0.030 |
— | 2.046+0.078 −0.074 R⊕ |
| d | 5.96+1.15 −1.13 M⊕ |
0.08604+0.00178 −0.00186 |
12.566287+0.000032 −0.000028 |
0.112+0.055 −0.044 |
— | 2.500+0.078 −0.077 R⊕ |
| e | 5.79+1.60 −1.61 M⊕ |
0.15135+0.00314 −0.00338 |
29.31773+0.00028 −0.00025 |
0.014+0.015 −0.010 |
— | 1.732+0.059 −0.058 R⊕ |
発見チームは、LHS 1903系は特異な形成過程を経た可能性があり、原始惑星系円盤からガスが枯渇した後、外側の惑星が後期の集積過程によって形成された可能性があると示唆した。一方で、惑星形成後に惑星が再配置された動的な惑星移動過程や、元の大気を吹き飛ばした巨大衝突など、他の説明は軌道進化のシミュレーションによって否定された。
LHS 1903系は、惑星形成の理論モデルにとって重要なテストケースである。スーパー・アースとミニ・ネプチューンの間のRadius gap(半径ギャップ)は、さまざまな仮説によって説明することが可能である。熱駆動質量損失仮説は、惑星が最初にガスエンベロープを持って形成されると予測される。その後、恒星からの放射による光蒸発、または潮汐加熱や放射性崩壊による内部加熱により、大気が散逸する。この仮説では、惑星は原始惑星系円盤から固体物質と揮発性物質をほぼ同量で同時に集積するが、より小さい惑星や軌道が主星に近い惑星は、後に原始大気を失いやすいとされる。これとは対照的に、ガス枯渇形成仮説では、地球型惑星の形成が遅すぎたため、原始惑星系円盤内の揮発性物質がすでに散逸した後に質量を蓄積したと説明される。この仮説はinside-out planet formation(内側から外側への惑星形成)と呼ばれている。これら2つの仮説は互いに競合すると予想され、異なる恒星の周囲に存在するさまざまな惑星系の形成史を説明できる可能性がある。しかし、2つの仮説は半径ギャップの位置がほぼ同じであると予測されており、どちらの仮説がLHS 1903系に当てはまるのかを検証することは困難である。その中で、惑星eはガス枯渇形成仮説に従って形成されたことを支持する最初の強力な証拠となった。これは、地球および他の内惑星の形成を説明するために以前に提唱された仮説とも類似している。